WAVE+

2017.02.15  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也 イラスト/フクダカヨ

行政とコラボした木育イベント

川崎市高津区とコラボした木育イベント

川崎市高津区とコラボした木育イベント

──前編では様々な木育関連の活動について皆さんに語っていただきましたが、他に印象に残っているイベントやワークショップはありますか?

佐藤政満(以下、佐藤) 昨年(2016年)の8月27、28日の2日間で神奈川県川崎市高津区で開催された「高津区こども未来事業『区民木育体験』」です。高津区役所が木育をテーマに、住民同士の絆を深めることを最大の目的として、過去にこのWAVE+に登場していただいた須藤シンジさんが代表を務めるピープルデザイン研究所とコラボしたイベントです。ピープルデザインは長年、住民同士のコミュニケーションの活性化に尽力しており、この木育プロジェクトはその一環だったんです。当社も森田さんが担当している環境出前授業や角田さんが所属しているきづくりラボで、子どもたちへの環境教育や、国内木材を積極的に家具に使っていくことなど、社会への木育PRを行っているので、可能な限りお手伝いさせていただこうということになったわけです。

──具体的にどのようなお手伝いをしたのですか?

佐藤 イベントは、座学と実際に椅子を製作してもらうという内容で、我々はそのサポートを行いました。役割としては、僕は高津区との調整役というか、イベントをコントロールするプロデューサーのような立場で、角田さんや森田さんには先生役として全面に出てもらいました。

座学の様子

座学の様子

森田舞(以下、森田) 座学ではいつも環境出前授業でやっているような話をしました。まず日本の森林の状況から話して、間伐したものを使うことが大事だということや、切った木がどうやって家具の材料に加工されていくのかという話をしました。

角田知一(以下、角田) その後、その木材を組み合わせたり加工をすることでどのように椅子が作られるかという構造やデザインの話をしました。我々家具メーカーの人間が講師を務めるからには子どもたちにただ自由に作ってもらうだけではだめだと思い、最初にきちんと椅子の構造や木の組み方、デザインの仕方についてしっかり教えました。そして素材となる丸太や端材に触れイメージを膨らませてもらった後、子どもたちにアイデアスケッチや簡単な図面を描いてもらった上で実際に椅子を製作してもらいました。主に小学生が対象でしたので、積み木感覚でもある程度椅子らしいものが組み立てられるような素材を用意しました。製作例として事前に佐藤さんたちと端材で各自椅子を作って、本番に3脚持っていったんですね。それを子どもたちに見せると、この木材でここまでのちゃんとした椅子ができるんだなとみんな感激してそれを真似たり、そこからアレンジして椅子を作ってましたね。我々は安全管理や工具の使い方やわからないところを教えたりと、そのサポートを行いました。

椅子製作の模様。親子で楽しく作っていた

佐藤政満(さとう まさみつ)

佐藤政満(さとう まさみつ)
1956年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 企画部長

大学でプロダクトデザインを専攻後、岡村製作所に入社。オフィス製品やホームインテリア製品のデザイン、パブリック製品やオフィス製品の企画開発などを経て、現在はマーケティング本部にてプロジェクト単位の製品開発支援、また個別営業物件の製作調整、支援などに従事している。


角田知一(かくた ともかず)

角田知一(かくた ともかず)
1964年神奈川県出身。株式会社岡村製作所 きづくりラボ チーフデザイナー

大学でインダストリアルデザインを専攻後、岡村製作所に入社。ホームインテリア家具やオフィス家具のプロダクトデザインを担当。現在は木に関する研究や木製家具の開発と地域創生に繋がる産学官研究などに従事している。


浅野裕一(あさの ゆういち)

浅野裕一(あさの ゆういち)
1968年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 パブリック製品部

大学で機械工学を専攻後、岡村製作所に入社。製品設計や特注製品のデザイン業務を経て、現在は教育施設向け家具の企画開発を担当している。


森田舞(もりた まい)

森田舞(もりた まい)
1978年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 オフィス研究所 主任研究員

大学、大学院で建築学を専攻後、岡村製作所に入社。オフィス製品の企画開発を経て、現在は教育施設を中心として、よりよい空間・環境のあり方に関する調査・研究に従事。専門は建築計画。博士(工学)、一級建築士。

初出日:2017.02.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの