重要なのは大人の木育
──そういう意味では子どもよりも大人の意識を変えることが重要なのかもしれないですね。
森田 そうですね。大人に「木育というキーワードを知ってますか?」と聞いても知らない人の方が多いですからね。あんまり普及しているキーワードじゃないような気がします。
佐藤 一般的には知らない人の方が多いでしょうね。
浅野 子どもを教育するのが木育というイメージもありますよね。それを大人に対しても呼びかけられる仕組みがあるといいですよね。
森田 木育を普及させるためにはきっと大人に呼びかけたほうが効果的だとは思います。
浅野 それはさっき角田さんが言ってたように、子どものうちから木育をやると将来の日本が変わるという話に繋がりますよね。
角田 業界の中で大人の木育って話題にはしてるんですね。大人こそ木育が必要だと。これから数年で大人となり自ら家具を買ったり家を建てたりする人が木を好きになってくれて正しい木の知識が身につけば木材需要も飛躍的に伸びるのではないかと思います。
浅野 今後のキーワードは大人の木育ですか。
角田 真面目にそう思いますね。
森田 大人に「木っていいですよね」と言うと「何となくいいとは思うけど、結局何がいいの?」と聞かれることが多いんですよね。その時はっきりと「こういうところがいいんです」と断言できないんですよ。「何となく癒されますよね」くらいしか答えられない。
浅野 ちょっと温かみがあるとかね。今後は、温かみがあると何がいいんだ、というところまで突っ込んで調べたいと思っています。
森田 大人の木育に関してはそれが今後の課題ですね。
様々な活動を通して木育を社会に広めたい
佐藤 ここ数年、建築の方では木材が人体にどういう効果を及ぼすかという研究がハウスメーカーや大学などで行われています。時々メディアで報道されていますが、鉄筋コンクリート造の校舎よりも、木造の校舎や鉄筋コンクリート造でも内装を木質化した校舎ではインフルエンザによる学級閉鎖率が下がっているというデータがあります。でもなぜ下がったのか、その因果関係がはっきりしないから研究しよう、データ化しようという動きです。様々な要因の中で湿度が大きく関係してると考えられているので、調湿が開発のキーテーマになるかもしれませんね。
そうすると浅野さんが開発に取り組んでいる木育用の家具は、その家具に使われているいろんな材料で子どもたちが知識を得るというのがテーマですよね。だから木育ができる家具を1つの新しいコンセプトとして開発したいということなんでしょう?
浅野 それがエコプロで展示していた物ですね(前編参照)。
佐藤 浅野さんが木育家具を開発していることや、森田さんが木育家具を題材に子どもたちに授業していることや、角田さんが大学や地域のいろいろな方々とコラボして木育をテーマに地域創生活動をしていることなど、オカムラが取り組んでいる木育にはさまざまな切り口があります。それらをうまく繋げて、もっと社会に木育を広めていきたいですね。
佐藤政満(さとう まさみつ)
1956年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 企画部長
大学でプロダクトデザインを専攻後、岡村製作所に入社。オフィス製品やホームインテリア製品のデザイン、パブリック製品やオフィス製品の企画開発などを経て、現在はマーケティング本部にてプロジェクト単位の製品開発支援、また個別営業物件の製作調整、支援などに従事している。
角田知一(かくた ともかず)
1964年神奈川県出身。株式会社岡村製作所 きづくりラボ チーフデザイナー
大学でインダストリアルデザインを専攻後、岡村製作所に入社。ホームインテリア家具やオフィス家具のプロダクトデザインを担当。現在は木に関する研究や木製家具の開発と地域創生に繋がる産学官研究などに従事している。
浅野裕一(あさの ゆういち)
1968年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 パブリック製品部
大学で機械工学を専攻後、岡村製作所に入社。製品設計や特注製品のデザイン業務を経て、現在は教育施設向け家具の企画開発を担当している。
森田舞(もりた まい)
1978年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 オフィス研究所 主任研究員
大学、大学院で建築学を専攻後、岡村製作所に入社。オフィス製品の企画開発を経て、現在は教育施設を中心として、よりよい空間・環境のあり方に関する調査・研究に従事。専門は建築計画。博士(工学)、一級建築士。
初出日:2017.02.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの