現場スタッフの声
人が集まる医局づくりにチャレンジ久留米大学病院
人が集まる医局づくりにチャレンジしたストーリー、医局改装のコンセプトについて話を伺いました。
医局改装のコンセプトは子育てとキャリアの両立ができる環境づくり
【 改装前の課題 】
インタビューお願い致します!
改装のきっかけを教えてください。
髙尾:
時間とともに、私たちのニーズに合わなくなってきたので、改善が必要だと感じていました。実際に使っていない部屋がいくつかありましたし、メンバーそれぞれに専用の部屋が足りない状況や、デスクが不足していることもありました。施設の老朽化も原因ですね。
医局は元々、どのような場所だったのでしょうか?
髙尾:
みんなが集まる中心的な場所としてのイメージがあったんです。ですが、実際にはそういうわけではなく、人が集まりにくい空間でした。
在席率が低いということですね。理由がありますか?
髙尾:
出勤したら一応医局には顔を出しますけど、実際に働くのは病棟や外来棟が主です。医局と外来棟との間の移動距離が長いこともありますし、外来棟に必要なデスクやロッカーが完備されているので、特に医局に戻る必要性を感じなかったんです。
【 改装前の要望 】
ニーズに合わなくなったこと、在席率が低かったことが改装時の課題だと理解しました。
当時どんな改装をしたいと考えたのでしょうか?
髙尾:
女性医師や共働きの家庭が増えている中で、働きやすい環境を整えることが重要だと考えました。当時の医局長が奥様も医師をしており、共働きの中で子供を預ける場所の問題などで、キャリア形成に際しての苦労があったという話をされていました。
キッズスペースを設けたのはそれが理由だったのですね。
髙尾:
はい、その通りです。実際、子供が急に休むことになったり、土日にでも学会準備や研究などで病院に来たい時、一時的に子供を預けられる場所が欲しいという声がありました。それがキッズスペースを設ける大きな動機となりました。
在席率の低さを解決するためにカフェ風のデザインに挑戦
【 改装の実施 】
子育てとキャリアの両立ができる環境づくり素晴らしいですね!
他にこだわりはありましたか?
髙尾:
今のニーズに合わせて部屋の構成を見直しました。例えば、教授には完全な個室を設け、准教授、講師、助教授にはプライバシーを保ちつつオープンな雰囲気も持たせる個室ブースを用意しました。これらの個室ブースでは、高さを調整することで特別感を出し、働く環境の質を高める工夫をしました。
在席率が低いという課題について、何か工夫はされたのでしょうか?
髙尾:
はい、どうしたらみんなが自然と集まりたくなるかを考えた結果、「スターバックスのような空間にしよう」という提案が出ました。カフェ風のスペースを作ることで、より集まりやすい環境を実現しようと考えました。
【 改装後の結果 】
その結果、実際に人が集まるようになったのでしょうか?
髙尾:
利用率は確実に上がりました。当初は単に集まりやすくすることを目的にしていましたが、予想以上に様々な用途で利用されています。
どのような用途で使われていますか?
髙尾:
キッズスペースの利用は予想通りですが、予想外だったのは、先生方が他の病院の先生を連れてきて、ここで会議や情報交換をするようになったことです。コーヒーを飲みながら研究テーマについて話し合う機会や、雑談から有益なアイデアが生まれています。また、個人的に自己研鑽で利用する人もいれば、モニターを活用してのディスカッションをチームで行うこともあります。
メンバーが集まるようになったことで、具体的にどのような効果を感じていますか?
髙尾:
集まることで、日々の小さな相談がしやすくなったのを強く感じています。たとえば、私の専門は乳腺外科ですが、患者さんがお腹の痛みを訴えた時には私の専門外です。そういう時にも、他の分野の専門家に気軽に相談できるようになりました。医局での挨拶や顔を合わせる機会が増えることで、よりスムーズにコミュニケーションが取れるようになったと感じています。
「おしゃれなカフェ空間」がコミュニケーションを活性化させるというのは興味深いですね。
髙尾:
実は、この挑戦的なデザインにしたことで、ポジティブな変化がありました。新しいデザインにした結果、医局が完成した際に多くの先生方が実際に見に来てくれたんです。その時に秘書さんが提供するコーヒーを楽しんだりしながら、精神的にもリラックスできる空間として受け入れられました。それが自然と人を引き寄せる効果を生み出し、自発的に人が集まる医局づくりのきっかけになりました。
在医師だけでなくスタッフの意見を取り入れて実用的なデザインへ
【 その他 】
人が集まるために他にどのような工夫をしていますか?
髙尾:
医局長室を移設し、内部が見えるようにしたことも大きな効果がありました。医局長や秘書に相談がある先生が多く、そのために医局を訪れることが増えました。また、秘書さんの役割も重要で、声を掛けてもらったり、会話の中心となってくれることで、常に温かみのある雰囲気を作っていただいてます。
今後医師の働き方改革が進む中で医局の役割や環境に変化はありますか?
髙尾:
当病院では、自己研鑽は医局で行うというルールがあり、そのためにカフェのようなスペースやZoomができる個室ブースを設けています。これらは、働き方改革の一環として、とても便利で効果的だと感じています。
最後にこのようなユニークなデザインに挑戦したいと考えている病院に向けて、
何かアドバイスはありますか?
髙尾:
当初、前例のないデザインに取り組む際には不安もありましたが、病院以外のさまざまな事例を参考にしたことが大いに役立ちました。また、レイアウトやデザインを素早い対応で具体的に形にしてわかりやすく伝えてもらえたので、改装に対する不安を減らすことができました。あと一点重要なのは、最初のコンセプトを決める際に多くの医師の意見を聞くことはもちろん、秘書さんをはじめとするスタッフの意見も取り入れることです。これにより、より実用的なデザインが実現できると思います。参考にしていただければ嬉しいです。
アドバイスありがとうございます!医局には新しい可能性があると感じました!
本日はありがとうございました。
施設紹介
久留米大学病院は、高度な先進医療を実践する特定機能病院として昭和3年(1928年)に創立。歴史ある伝統を重んじ、医療情勢の変化に応じて、さらなる質の高い医療実現へと変革と挑戦を続けています。高度で安全なチーム医療の実践が最も重要な点と考え、患者一人一人の状況に合わせて、各科や各部門の専門職が一体となって治療を実践しています。
施設データ
- 所在地
- 福岡県久留米市旭町67番地
- 病床数
- 1094床( 一般病床:1041床 精神病床:53床)
※大学内に保育所も完備