現場スタッフの声
病院新築移転社会医療法人財団 仁医会 牧田総合病院
「病院らしくない病院」へ生まれ変わる!
牧田総合病院は、昔から地元大森の方たちに「牧田さん」と親しみを込めて呼ばれてきた、地域に根差した病院でした。大学病院とも公的病院とも違うスタンスで、一人ひとりの患者さんを大切にしながら、スタッフは働いてきました。しかし、ここにきてハード面が古くなってきたのです。見た目が悪いといい医療が提供できているのかと疑問も持たれます。ということで、新築できる移転先を探し、蒲田へ移転することになったのです。これを機会に、「すべての人に安心を」というビジョンを掲げました。
最初のヒアリングで「どんな病院にしたいか」と聞かれて、「病院らしくない病院」にしたいと答えました。敷居を低くして、誰でも気軽に来てもらえるように。もちろん、待っている間も快適に過ごせる病院にしたいことも伝えました。
このビジョンのもとで実現させていくのが、「病院を変える、地域を変える」というミッション。病院って、地域での存在感が大きいじゃないですか。
だから、その病院が変わることで、自然とその地域が変わっていくのが理想。病院は病気を診るだけじゃダメ、病院を自分たちで変えていく。自分たちの病院が変わることで、世の中の病院も変わっていくのです。
患者さんが来やすくて、ほっとやすらぐ病院に
患者さんの目にまず飛び込んでくるサイン(表示板)には、特にこだわって何度も会議を重ねました。まず、「○○科」という表示は基本的に入れないことにしました。「○○科」と書いてあると、それはすなわち病院ということなんです。番号だけ表示して、グラフィックを入れると、病院らしさが消えるでしょう。「何だかホテルみたい」と言われ、思わず「その言葉を待っていたんだよ」と言ってしまいました(笑)。
病院外にも、蒲田駅の方向を指し示すサインを設置しました。これも、病院は町と一体化したひとつの建物だという視点で考えているからです。待っている間に一息つけるソファーも、時間をかけて選びました。
総合受付は、みんなで考えて「ホテルだったらフロントだよね、それじゃフロントと呼ぼう」と決めました。バックには山のイラストを配し、さらに大理石風のカウンターで高級感を漂わせています。どうです、病院らしくないでしょう。
病棟から富士山が見えるのもうちの病院の特徴の一つ。各階の柱にも階ごとに異なる富士山のビジュアルを入れています。窓の向こうに本物が見えるので、これはベストマッチですよね。
とにかく、デザイナーさんに入ってもらって、全然変わりました。家具や什器、張地の選定も大切です。私たちの意志に賛同して加わってもらった竹内デザインさんとオカムラさんと一緒に選定しました。
壁などに色を入れた病室は、寝ていて安心感があり、せん妄予防にもなります。HCU(高度治療室)・SCU(脳卒中集中治療室)は一般的に白いイメージですが、天井や壁をウッド調に仕上げました。術後、全身麻酔が覚めた時に、心安らぐ木目が目に入れば安心感が増すと考えたからです。オカムラさんの間仕切りパネルも使い勝手が良いですね。
救急医療の充実と救急センターの拡張
救急センターは、ヨーロッパのエマージェンシーセンターをお手本にしました。ワンフロアでワンストップ、つまりここに来れば患者さんは、検査から小手術や入院まで、すべて完結できます。もともとわたしたちは「来た人は診る」というのが基本。今は年間6千件台ですが、目標は1万件。機能評価係数Ⅱでは東京でトップです。100%の応需率を目指しています。だから、救急隊には「困ったら牧田」と言われています。
ここ蒲田地区は病院が少ないんです。だから、「断らない救急医療」で地域に貢献するのが、うちの病院の使命であり、存在価値になります。それが「すべての人に安心を」というビジョンにつながるのです。
マタニティビクスや地域の健診も積極的に
妊婦さんのマタニティビクスも、インストラクターに来てもらい、くすのきホールで週1回実施しています。産後の祝い膳もご主人を呼んで特別に職員専用レストランで、美味しい食事を召し上がっていただいています。
健診センターも、力を入れている事業の一つです。大田区でも今後増やしたいというニーズがあるので、ぜひうちの健診センターを利用していただければと思います。
「病院らしくない病院」は働く人にもやさしく
働きやすい環境づくりということは常に考えています。CS(顧客満足度)を上げるにはまずES(従業員満足度)からです。アンケートをとってみると、これまでは残念ながら帰属意識が低かったんです。
今では、診療科を増やしたりしたこともあり、医師だけでなく、看護師も牧田総合病院で「働きたい」と来る人が多くなりました。やはり見方が変わってきています。これまでと全然違いますよ。
事務関係もペーパーレスなど、じっくり効率化に取り組んでいます。これについては、まだ始まったばかり。これからの課題です。フリーアドレスも、みんなのつながりを作っていくために、これから進めていけたらと思います。
事務室の真ん中に設置した共有スペースはオカムラさんの提案でした。病院という既成概念にとらわれず、オフィス感覚もどんどん採り入れるべきです。会議室もガラス張りにして開放感を出しました。お洒落なオフィスってこうなっているじゃないですか(笑)。
診察室もなるべく広くして、デスクはオカムラさんの木目調のものを選び、落ち着いた感じに仕上がりました。
こうした現場の労働環境を一つひとつ見直して、職員たちの働きやすさを追求していくことによって、「愛情、親切、丁寧の実践」が実現できるのだと思います。
地域の人たちが集ってくれる場所でありたい
地元の方たちに自由に使っていただける「くすのきホール」も病院内に設けました。約200人が着座でき、3つの区画に仕切って使える、音響もしっかりした施設です。名前の「くすのき」は大田区の木から。病院内の施設というよりも、広く大田区のためという意味を持たせて名付けました。
患者さんでなくても申し込んでいただければ誰でも自由に使えるようにしていきます。これまで地域のために開いていた公開講座をここでやったり、周辺の学校の生徒に使ってもらってもいいし。コロナが落ち着いたら、自由な用途で使ってほしいと思います。あえて入口を別に作っているので、まったく病院とは切り離して使うことができます。
「ぱんとえすぷれっそと」というパン屋さんも病院内にあります。大きな病院にはチェーン店のカフェが入っていることが多いですが、それでは面白くない。そこで表参道の人気店に入ってもらいました。店内、つまり病院内にパン窯があるので、焼きたてのパンをすぐに食べられます。表参道に行かなくても、人気のパンが病院で楽しめるなんていいでしょう。
ホールだけ使うもよし、パン屋さんで買うもよし、ちょっと気軽に立ち寄れる病院、そこが大切なんです。大事なのは、病院とはこういうものじゃなきゃいけないという既成概念を打ち破ること。だから「こんな病院は見たことがない」という声がとてもうれしかったですね。
行っている医療の内容は同じでも、新築移転して、みんなイキイキしていますよ。働いている人や外来で待っている患者さんを見ていてもよくわかります。
医師や看護師など牧田総合病院の関係者たちは、それぞれ様々な業務に携わっています。私たちは、病院に来てよかった、ほっとしたという一言のために懸命に働いています。「病院らしくない病院」が目指しているのは、患者さんがほっとできる場所なのです。
施設紹介
昭和17年に初代 牧田中(まきた あたる)院長が牧田医院として大森に開院。昭和44年の総合病院の認定を経て、これまで約80年にわたって大田区南部の地域医療を担当してきました。蒲田に新築移転した病院は、地上5階建ての主に外来棟と、10階建ての救急・健診・入院棟の2棟が上空通路で接続。中核病院として、地域の安全と安心に貢献し、心のよりどころとなる開かれた病院を目指しています。