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2016.01.04  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

紙芝居プロジェクト

あさいちで上演されている紙芝居

あさいちで上演されている紙芝居

この朝市では私たちが作った紙芝居も上演しています。2012年頃、朝市をやろうと思い始めた時に地元の漁師さんのことも知ってこの地域に残っている古い言い伝えみたいな話がきっとあるに違いない、それを紙芝居にして朝市で上演することでこの町の歴史や文化を子どもたちに伝えていきたいと思ったのね。

それを地元の名士の方に話したら、この話はどうかと提案されたのが、郷土史研究会が出している「郷土史 葉山 下山口編」。そこに書いてあったのは、朝市の開催場所である神明社が1704年にできたときの成り立ち。そのお話は単なる史実として書かれていて、そのまま紙芝居にしてもおもしろくないので、子どもたちがぐっと食いついてくるように脚色したの。

しもやま よもやま むかしばなし 神明社の巻

絵は実行委員の1人の知り合いで、紙芝居もたくさん作ってるプロの木版画家に頼みました。文章は私が担当して、木版画家と何回も打ち合わせしてお話を作ったの。紙芝居の最後は、今はこうやってお祭りも朝市もやっていて、神社が活性化していますよというシメにしています。その紙芝居は、私たちが上演する用と町への寄贈用と町民が誰でも借りられるように図書館への寄贈用の3つ作りました。


──それだけの規模だと制作費はけっこうかかったと思うのですが、どうしたのですか?

そうそう、この紙芝居を作るのにすごくお金がかかるから最初は企画書を作って地域のお家を一軒一軒回って寄付を募ろうと思っていたのね。でもそれってものすごくたいへんだから実行委員の1人の提案で助成金を申請しようということになったの。そのために、下山の漁村文化を保存するための紙芝居でもあるから急遽「漁村文化保存会」というのを立ち上げて助成金をいただいたんです。

それでやっと去年(2015年)の春に完成したんだけど、いろいろな事情で去年の10月4日の朝市で初上演したの。作るまではたいへんだったけど子どもたちもたくさん集まって紙芝居を喜んでくれてたのですごくうれしかったですね。今後も朝市のあるときには毎回紙芝居をやり続けていくつもり。本番までにちゃんと練習もしてるのよ(笑)。

紙芝居の打ち合わせの様子。写真左は木版画家の村田エミコさん
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紙芝居の打ち合わせの様子。写真左は木版画家の村田エミコさん

紙芝居は子どもたちにも大人気
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紙芝居は子どもたちにも大人気

──朝市は今年で3年目ということですが、朝市をやってよかったと思うことは?

子どもたちが楽しそうに遊んでるのを見たらやってよかったと思う。あとは私を含めて知り合いが増えたことがすごくよかったかな。それと、自分もいい大人なのに知らない日本の伝統を知ることができたこと。例えば秋の七草、全部言える? 私はあさいちで秋の七草をお供えするから覚えたよ。そういうこともメリットの1つね。

町政にも関わる

川崎直美-近影3

あとは、葉山町長選で現職町長 山梨崇仁の「TEAM山梨」のメンバーとして関わりました。4年前に私たちが応援して山梨さんが当選したのですが、当然二期目もやってもらいたいので選挙のお手伝いをしました。昨年(2015年)の秋から12月中旬まではこの応援活動にかなり時間と労力を使いました。


──具体的にはどんなことをしたのですか?

山梨さんの「町政報告」や公選チラシを作りました。それを駅で配ったり、各家にポスティングしたり、私はほとんど選挙事務所で来訪者の対応をしていました。普通に選対がやることですよ。あとは山梨さんの「意見交換会」「町政報告会」を開催して、広く呼びかけて多くの人に来てもらい、山梨さん自身の口から4年間の総括をし、次の4年間のマニフェストを語ってもらいました。応援したかいあってめでたく二期目も当選したのでよかったです。


──なぜ町長選で支援者活動を?

自分たちが住む町は自分たちでよりよくしていきたいからです。やはり政治家が集まって密室で決められたことだけが実行されるような政治じゃダメだよね。山梨さんも私たちのもっとこうしてほしいという要望、つまり民意を反映した政治、町民と一緒に町づくりをしたいと言っていて、一期目は特に今までの古い体質改善に尽力して、それなりの成果はあったので、二期目はこれからもっとステップアップする町政のために応援しようと。葉山町は町民が政治に関わることができるちょうどいいサイズの町なんですよ。

山梨の選挙は、本当に手作り感満載。寄付、献金は一切受け取らないし、事務所にさまざまな人が来ていろんな物を持って来るのですが、些細な物もすべてお断りしています。どんな団体や政党の支援も受けていない組織票0の政治家、全くの個人ベースです。そしてチーム山梨には選挙のプロや経験豊富な人は誰もいなくて、圧倒的なリーダーもいません。みんなそれぞれ個人の気持ちだけで参加しているんです。


──お話をうかがっていると、お店よりも地域活動系の仕事の方が多いようですね。

そうなのよ。毎日お金にならない地域活動関連の仕事をずっとやっているの(笑)。


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川崎直美(かわさき なおみ)

川崎直美(かわさき なおみ)
1951年神戸市生まれ。レパスマニス店主/地域活動家

神戸に暮らしていた10代は、ヒッピー文化の影響を受け自由な生き方にあこがれる。16歳で高校中退後、アルバイト生活。大阪万博のアルバイトで知り合ったスウェーデン人の女性に触発されて20歳のとき世界一周の旅へ。途中で立ち寄ったバリにハマり、バリを拠点に生活スタート。23歳のときタイで出会ったアメリカ人男性と恋に落ち、24歳で娘を出産。生活拠点をハワイに移し、バリとハワイを行き来する暮らし。28歳のときパートナーと離別、日本に帰国。様々なアルバイトを経験後、東京で外国人タレントのマネジメント事務所で働くようになる。計2社で約4年勤務した後に自ら外国人タレントのマネジメント事務所を起業。バブル景気に乗り、大成功を収めるも、12年経営した後に廃業。1994年単身、アメリカに渡り古い中古車を購入し、中西部のネイティブアメリカンの土地をめぐる。半年間で1万6000キロを走破。帰国後は逗子に移住。渋谷に自然生活雑貨店「キラ・テラ」を開店。2年後、大手自然食材企業に吸収、社員となり、横浜の店で勤務。12年勤めた後、退社。地域活動にのめり込む。2011年に葉山に移住、自然生活雑貨店「レパスマニス」開店。現在はレパスマニス店主を務めるかたわら、葉山町をみんなが暮らしやすくする町にするために様々な活動に尽力中。

初出日:2016.01.04 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの