「働き方改革」の効果をAIで可視化する実証実験を開始
株式会社電通国際情報サービス(本社:東京都港区、代表取締役社長:釜井 節生、以下ISID)、株式会社オカムラ(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:中村 雅行)、公益財団法人明治安田厚生事業団(本部:東京都新宿区、理事長:中熊 一仁)の3社は、オフィスリノベーションによる働き方改革が、社員の健康や行動に与える影響を明らかにする共同実証実験を開始しました。現在、計測・記録データをもとに分析・プロトタイピングに着手しています。本実証実験では、人工知能(AI)を用いて社員の行動を可視化するシステムを構築し、生産性と健康を向上させるオフィスの実現を目指します。
実証実験のねらい
近年、「働き方改革」や「健康経営」は喫緊の経営課題となっており、その一環として様々な施策をオフィスに導入する企業が増加しています。効果としては、生産性向上、コミュニケーション活性化に加え、「座りすぎ※1」解消をはじめとする、ワーカーの健康改善効果が期待されています。しかし、オフィス環境と従業員の行動の相関を定量的に計測する手法は確立されておらず、オフィス施策の効果が見えにくいことが課題となっています。 本実証実験では、オフィスリノベーション前後の定点カメラの映像を最新のディープラーニング※2を活用した画像解析技術で分析・可視化し、これを活動量計や質問紙調査等の個人データと組み合わせて検討することで、リノベーション前後での行動変化が心身の健康度や労働関連指標の改善につながるかを検証します。
※1 座りすぎ:オフィスワーカーの新たな健康リスク。長時間継続して座り続けていると、生活習慣病を発症しやすく、死亡リスクが増加する。 https://www.okamura.co.jp/ergonomics/standing/
※2 ディープラーニング:音声の認識、画像の特定、予測など人間が行うようなタスクをコンピューターに学習させる機械学習の手法の一つ。人工知能の急速な発展を支える技術として、様々な分野への応用が進んでいる。
実証実験の概要とポイント
本実証実験は、①リノベーション実施および計測・記録 ②分析・プロトタイピング ③効果検証 の3つのステップで実施します。現在は分析・プロトタイピングを進行中です。概要と主なポイントは次のとおりです。
概要
実施期間:①2017年11月~2018年8月、②2018年1~11月、③2018年11~12月
実施場所:オカムラ「KEN-CO LABO(健考ラボ)」(東京都新宿区)
対象者:対象拠点に勤務するオカムラの従業員 約30人(営業職、業務職、空間設計職)
実験の流れと主なポイント
①リノベーション実施および計測・記録
- リノベーションは、オカムラが推進する働き方改革プロジェクトのコンセプトに基づき、「心と体の健康」「社員ひとりひとりが生き生きと働く」を試行錯誤できる「ラボ(実験場)」での実証実験として実施。リノベーション後は、従業員がその時の仕事内容に適した場所を選択して働くABW(Activity Based Working)の考え方を取り入れた、様々な広さのオープンスペース設置やグループ単位で使える執務机配置などが特徴。
- 対象執務エリアの複数箇所に定点カメラを設置し撮影。撮影期間はリノベーション前後の各3日間(計6日間)、各日とも9時から17時まで。
- 同エリアで勤務する従業員に活動量計を装着してもらい、座りすぎを中心とした身体活動の記録データを取得。計測期間はリノベーション前後の各2週間(計4週間)、各日とも睡眠・入浴時等を除き終日。
- 対象者の基本属性や心身の健康度、仕事への姿勢などを評価するために自記式の質問紙調査をリノベーション前後に実施。
②分析・プロトタイピング
- 定点カメラで撮影した映像データに、ディープラーニング・アルゴリズムを活用した画像解析技術を適用し、オフィスのいつ、どこに、何人の従業員がいたかを認識・検出する。
- 検出したデータをもとに、経過時間ごとの従業員の位置を、オフィスの見取り図に重ね合わせて表示するシステムのプロトタイプを開発。リノベーション前後のオフィス内の人の流れが一目で分かる仕組みを実現する。
③効果検証
- 従業員の身体活動の記録データと、②で得られたオフィス内の人の流れのデータを組み合わせて評価。ワーカーのアクティビティが高いエリアと低いエリアが、リノベーション前と比較してどのように変化したか、職種や業務内容ごとに特徴や違いがあるか、社員交流を目的としたオープンスペースがねらいどおり活用されたかなどを検証する。さらに、それらの行動の変化が心身の健康度や労働関連指標の改善につながるかを検証する。 AIにより人を検知している様子と通路の区分け→通路上の人の動きを平面図に表した図(赤:活動量大、青:活動量小) AIにより人を検知している様子と通路の区分け通路上の人の動きを平面図に表した図(赤:活動量大、青:活動量小)
各社の役割と今後の展望
本実証実験における各社の役割と展望は次のとおりです。
【ISID】 https://www.isid.co.jp/
- ディープラーニングによる画像解析技術を様々な産業領域で社会実装する取り組みを進めています。
- 本実証実験では、室内空間の画像解析に適したディープラーニング・アルゴリズムの適用と、解析結果を可視化するプロトタイプシステムの開発を担当します。
- 本実証実験で得られるデータを起点に、画像解析精度の向上と様々な産業領域への社会実装を目指します。
【オカムラ】 https://www.okamura.co.jp
- 組織の個性を最大限に引き出すワークプレイスづくりを提案しています。
- 本実証実験では、都内4拠点に設けた「ラボオフィス」のひとつを実験場とし、効果検証の分析視点を提供します。
- 上記成果は、働き方改革に取り組む顧客企業を支援するオフィスソリューションサービスに還元します。
【明治安田厚生事業団 体力医学研究所】 https://www.my-zaidan.or.jp/
- 国民の健康増進を目的とした学術研究を行っており、現在は座りすぎの健康影響とその解決策について研究しています。
- 本実証実験では、活動量計、画像解析、質問紙調査のデータを組み合わせた分析と効果検証を担当します。
- 本結果をもとに、勤労者の身体活発度やコミュニケーションを高めるオフィス環境のあり方を学術成果としてまとめ、公表していく予定です。
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