固定席&コミュニケーションエリアが高める従業員エンゲージメント
――働く人の気持ちに寄り添う、「私たちが」働きやすいオフィス
固定席&コミュニケーションエリアが高める従業員エンゲージメント
――働く人の気持ちに寄り添う、「私たちが」働きやすいオフィス
わたしたちの自社ビルは老朽化が進んでおり、オフィス内も快適とは言い難い環境が続いています。 そこで、現状の問題点を整理するための職場環境アンケートを実施したところ、社員が不満に感じている点は、大きく2つあることがわかりました。 一つ目は、コミュニケーションをとったりリラックスできるエリアがない点。 二つ目は、一人で集中作業をしたり少人数の打合せ等で利用できるスペースが不足している点です。
今回の改装ではそれらの課題を解決し社員がいきいきと働くことで、従業員エンゲージメントを高められるオフィスにしたいと思っています。 さらに、他フロアに入居するグループ会社とも闊達なコミュニケーションがとれ、グループの結束を強めるような場が生まれれば嬉しいです。
当初お客様からのご要望は、2フロアにわかれた執務フロアの改装でした。 しかし、お話を伺うにつれて、現状の執務フロアをそのまま改装するよりも将来を見据えてビル全体で働き方を設計した方がいいと考えました。 具体的には執務エリアを1フロアに集約し、もう1フロアはコミュニケーションエリアにすることをご提案。 それによって、執務フロアは固定席運用で部門内の連携強化と生産性向上を、コミュニケーションエリアは他部署・グループ会社との交流や個々人の癒しを、とそれぞれの機能を明確にします。 そして、一人ひとりがいきいきと働き、従業員エンゲージメントが高まるオフィスを目指しました。
プロジェクトを推進するコンセプトは、創業者の小泉太兵衛氏が、1716年に麻布の行商から商いを始めた歴史から着想を得て、「パッチワーク」としました。 パッチワークは、異なる色や形、素材の布が寄せ集まって、ひとつの個性的な“柄”が生まれます。 それぞれの個性や価値観が集まり、組織として新たな“柄”が生まれるオフィスになるように想いを込めています。
明るい木目と親しみある白のトーンを基調とした解放的な空間――ここは「重なり」をキーワードにつくられた、3階の執務フロアです。 元々2フロアに分かれていたエリアを、1フロアに集約しても窮屈な印象がないのは、部署間に壁を設けずにカーペットでエリアを区分しているから。 壁を建てないことで圧迫感を与えず、空間を最大限有効活用しています。 さらに、他部署と物理的な距離が近づいたことは、リアルタイムで情報を共有したりスピード感のある議論ができる利点をもたらしました。 心理的に緩やかな境界線をつくりつつも、アクセントとなるデザインが空間に心地よく調和し、部署を超えたコミュニケーションを促進させています。
また、この床は50センチ四方のタイルカーペットをランダムに貼り分けることで、コンセプトであるパッチワークを表現。 人数の増減やレイアウト変更があっても、色のついたカーペットの位置を張り替えることでフレキシブルに対応ができます。 環境の変化に合わせて最適なオフィスになるよう、自分たちの手で新しい“柄”をつくるのも楽しみの一つになりそうです。
このオフィスで働く部門は、人事や財務、情報システムなどで特性上、機密情報を扱う業務があります。 そのため一人ひとりが自席を持ち、パーソナルスペースを確保しながら機能的に働けるよう、固定席運用を採用しています。
一方で、固定席だとなかなか生まれにくい交流の場も新たに設けられました。 それが執務エリアの中央につくられたミーティングスペースです。 執務席からすぐに集まれるこのスペースは、短時間の打ち合わせや簡易的な報告会などで毎日活用されています。 複合機や文具などの共有物もこちらに配置し、書類整理のついでに自然と人が集まる仕掛けになっています。
同僚の何気ない会話が聞こえてくる、この場に来ればいつも誰かに会える――仕事の合間でのそんなほっとする瞬間が、ここで働く人々にとって心地よい息抜きとなることでしょう。
フロアを1つ上がると、執務室から生まれ変わった開放的なコミュニケーションエリアが広がります。 カフェカウンターの間接照明が空間にやさしい輪郭を描き出し、そのやわらかな光がここに訪れる人々を迎え入れてくれます。
4階は「紡ぎ」がキーワード。 中央のカフェが各所を紡ぐ結び目となり、リラックスやフレキシブルなど異なる機能を持つ複数のエリアで構成されています。 テーブルを並べ替えて大人数での打合せ、ソファ席で同僚とランチ、カフェでのコーヒーブレイク。 ここは、ひとりでも、仲間とでも、そのときどきに合わせていつも寄り添ってくれる場所です。 さまざまなシーンが絶妙なハーモニーを奏で、この場で過ごす人々に熱気と癒しを与えてくれるでしょう。
交流拠点として再構築されたこの場所は、改装前のアンケートで挙がった「交流や休息の場がない」という課題を一挙に解決しました。 さらに、季節ごとに飾りつけを行ったりイベントを開催したりと、社員自らがつくり上げていく場でもあります。 改装して終わりではなく、改装後の積極的な活動が場を活性化させる――それが結果として会社全体のエンゲージメントを高めているのです。
コミュニケーションエリアには、ソロワーク席や多様な打合せ空間も完備。 要望の高かった「個人やチームでの集中空間が足りない」というニーズに応えています。
適度に囲われ感のあるソロワーク席は、外部からの刺激を減らし集中力を高めてくれるとっておきの場所。 アイデアに磨きをかけたり深い思考が求められる作業にぴったりです。 ファミレスブースではチームが集まり、テーブルに広げられた資料やディスプレイを見ながら、プロジェクトの進捗状況や課題について報告し合うシーンも。 プライバシーを保つ必要がある1on1や、静かな環境が求められるようなお客様とのオンライン打合せでは、3つ並んだ個室が活用されています。 人数やシチュエーションによって適切な集中空間を使い分けできるようになっています。
長時間同じ環境で作業をしていると、だんだんと新しいアイデアが浮かばなくなってくることもあるでしょう。 しかし、自席からあえて別フロアへ移動することで意識を切り替え、リフレッシュされた状態で業務に打ち込むことができるのです。
コミュニケーションエリアの照明は、時間帯によって自動的に明るさが変わるようにプログラミングされています。 実はこの照明プランは、グループ会社「コイズミ照明」との協業によって実現されたもの。 今まであまり交流のなかったグループ間の事業理解を深めることで、組織全体の一体感を強めインナーブランディングの役割を果たしました。
照明制御システム(Tree)によってセッティングされた明かりが、空間に自然な光を再現。 日光が届きにくい席でも、体内時計に合わせ健康的に働けるような環境が整えられています。
グループ会社全体に開放されているこのエリアは、照明器具のショールームや商談の場としても活用されています。 さまざまな人々が訪れることによって生まれる出会いが、新たなアイデアや可能性を創出するきっかけとなっています。 社員同士の絆や過去から未来へのつながり、新しい知見やパートナーシップなど、これまでにない価値観が交わる――この場所は、そんな想いや未来、人を“紡ぐ”空間です。
今回は、従業員エンゲージメントを高めるため、老朽化した自社ビル内のオフィスを改装した事例でした。 通常業務に支障をきたさない時間帯やスケジュールを工夫し工程を進めることで、オフィスに居ながらも十分に納得がいくオフィスづくりが実現できました。 また、固定席だと広がりにくい他部署との交流も、心理的境界線をなくしたり自然と人が集まる仕掛けがあったりと新たなつながりを創出しています。 一見すると両立が難しそうなことでも、工夫次第で実現が可能です。 オフィスで叶えたいことは遠慮なくオフィスづくりのプロに伝えましょう。 きっと良い解決策を見出してくれるはずです。
Project’s Data
- 業種
- 持株会社
- 企業名
- 小泉産業株式会社
- プロジェクト名
- 小泉産業株式会社 (大阪)本社 改装プロジェクト
- WEBサイト
- https://www.koizumi.co.jp/