いぬねこ社員と一緒に働く! 徳島ペットランドが描く理想の生活
――店舗設計のノウハウを活かした新時代の"体験型"研究施設
いぬねこ社員と一緒に働く! 徳島ペットランドが描く理想の生活
――店舗設計のノウハウを活かした新時代の"体験型"研究施設
わたしたちは徳島オフィスの研究棟新設に伴い、ペットとの暮らしを体感できる体験型研究施設「徳島ペットランド」をつくりたいと考えています。 コンセプトは「見える・感じる・ふれあえる」。 そこに訪れる人々には、ペット用品の研究や製品開発のプロセスを見学するだけでなく、実際にペットたちと触れ合う体験から正しい生態や飼育実態についてより理解を深めてほしいと思っているのです。
そしてその場所で働く社員には、オープンな環境でコミュニケーションを取りながら研究開発への熱意をさらに高めてもらいたい。 個人見学者だけでなく、近隣小学校の社会科見学や高齢者施設の団体見学などを積極的に受け入れることで地域社会に貢献し、人とペットが自由に暮らせる社会の実現へと向かっていきたいと思っています。
今回は、研究者にとって働きやすい施設というだけでなく、お客様の事業や実現したい未来を体現できる場としての工夫が求められました。 実はわたしは、普段はオフィスの設計ではなく、スーパーマーケットやアパレルなどの店舗設計を担当しています。 そのため今回は、「商環境」分野のノウハウを活かして「どのように製品や事業コンセプトを魅せるか」というポイントを考えながら空間を設計していきました。
例えば、訪れた人が最初に目にするエントランス。 ここには天井の高さを活かしてアース・ペットの製品を陳列した壁を設け、訪れた人があっと驚くインパクトを詰め込んでいます。 また、通常はクローズな空間で行うノミやマダニ研究も、あえて飼育ボックスを通路側からも見えるようにすることでここでしか見られない展示の仕組みに。 話題となっている体験施設などにも実際に足を運び、施設内を歩く「お客様目線」を提案に活かしていきました。
一方で、研究者の方々からは普段の研究の様子や現状の課題、こだわりなどを徹底的にヒアリング。 研究者にとって働きやすい施設でありながら、訪れた人々を魅了する空間になるよう、細部にも妥協せずにとことんこだわった空間になっています。
建物内に入ると、開放的な吹き抜け空間のエントランスが広がります。 天井は全面鏡張りになっており、空間がどこまでも上に続いているような錯覚に陥るほどです。 さらに壁面には、アース・ペットの数々の製品が展示されたディスプレイウォールが作られています。 思わず写真を撮って誰かに共有してみたくなる、そんな仕掛けが施されています。
正面の大きなガラス壁の向こう側には、愛くるしいペットたち。 ここで暮らす動物は実験対象としてではなく、「いぬねこ社員」という一緒に働く仲間として扱われています。
ガラス壁の向こう側に入ってみると、駆け寄ってくる元気な犬たちと実際に触れ合うことができます。 中階段を上ると、小上がりには優雅に木登りをしたりおもちゃで遊んだりする猫たちが。 木の幹をイメージしたキャットウォークは、デザインだけでなく猫が登りやすいように角度まで工夫されています。
この施設には、ペットと触れ合える体験スペースがいくつもあります。 エントランスからすぐ近くのトリミング室は、ペットたちのシャンプーやトリミング、爪切りといった日常のケアをするためのお部屋。 トリマー資格を持つ社員によるトリミング教室では、実際にペットのトリミングを体験できます。 また、壁面グラフィックには、同社が将来的に構想している「ペットタウン」が表現されています。 ペットとその家族が共生できる理想の街をカラフルな色彩で描くことで、この先もペットとの明るい未来をつくっていきたいという同社の想いが伝わってきます。
生活体験室(別名:りびんぐるーむ)では、この施設で暮らすペットたちと一緒に、まるで自宅での生活の中にペットがいるかのような疑似体験が可能。 壁面にはキャットウォークもあり、飾り棚としても活用されています。
この施設では、生き物を身近に感じながら研究から製品開発のプロセスが見学できるようになっています。 同社は、蚊やノミ、マダニから愛犬・愛猫を守る虫ケア用品の研究開発のため、施設内でも実際にノミやマダニなどを飼育しています。 生物観察室では、通常はクローズな空間で管理する飼育ボックスを、敢えて通路側にも見えるようにすることで新しい展示の仕組みに。 マダニやネコノミなどの飼育ボックスのすぐ下には、それに対する同社の関連製品が展示されています。
強度試験室は別名「おさんぽあんしんるーむ」と名付けられ、お散歩時にペットの安全を守るリード(引き綱)などの強度を試験する様子が見学できます。 どんな風に製品開発が行われているかを知ることで、より一層同社の製品に対する理解を深められる場となっています。
暮らしの開発室には、和室での家族団らんをイメージさせるような掘りごたつがあります。 ここは社内で利用されるミーティングスペース。 ちょっとした打合せやリフレッシュにも使用されます。
施設内には、訪れた人が直感的にわかりやすく、遊び心の詰まったサインが散りばめられています。 エントランスのフロアマップやトイレのサインは、木をベースにした柔らかい雰囲気のデザイン。 トイレのサインは突き出し型なので、通路のどこから見てもわかりやすいです。
ガラスの衝突防止シールは犬や猫の手形マークになっていますが、実はその中のいくつかは同社の公式キャラクターのジョンくんとメリーちゃんマークになっています。 ランダムに配置されているので、社会科見学や家族で来訪した子供たちが探してみるのも楽しそう。
施設内3カ所の部屋には、アース・ペットのロゴマークをベースにしたオリジナルの掛け時計が。 それぞれ異なるデザインなので、どの部屋にどの時計が飾られているかぜひ見つけてみてください。
2階は空間をゆったりと活用した執務エリア。 初めてのフリーアドレス導入で運用開始前は抵抗感があったものの、今では快適に利用されています。 執務エリア全体にグリーンを多く用い、明るく気持ちの良い空間になっています。
窓側近くにはガラス張りの明るい社内会議室があります。 壁をガラス張りにすることで周囲との一体感を感じながら議論ができたり、狭い部屋でも圧迫感を与えない利点があります。 上下昇降デスクも設置されており、それぞれの働きやすさに応じて立ったり座ったり、デスクの高さを変化させることができます。 また、窓側のカウンター席付近には、コミュニケーションの起点となるゴミ箱も兼ね備えたマグネットスペースが。 壁面にはホワイトボードもあり、ちょっとした打合せや気兼ねない雑談ができるようになっています。
フリーアドレス導入効果も相まって、社員同士のコミュニケーションも増加傾向に。 この新しい空間とともにいぬねこ社員を含む社員全員で、新しい徳島ペットランドを盛り上げていくことでしょう。
今回は、空間とともに「来訪者の体験」を設計していた点が特徴的な事例でした。 実際に見学者を受け入れる体験施設をつくるケースはそれほど多くないかもしれません。 しかし、一般的なオフィスにおいても、その空間を利用する人にどんな体験をしてもらいたいか、どんな価値を感じてほしいかを徹底的に考えることが、その後の空間活用に大きく影響を及ぼします。 図面やCGだけでなく、その後の生活や「利用者目線」をイメージしながらオフィスづくりを行っていくことで、より一層いきいきと過ごせる空間が出来上がっていくことでしょう。
Project’s Data
- 業種
- ペット関連商品の製造・販売業
- 企業名
- アース・ペット株式会社
- プロジェクト名
- 「徳島ペットランド」新築プロジェクト
- WEBサイト
- https://www.earth-pet.co.jp/