100年の歴史を超え、次世代へのイノベーションが始まる新オフィス
――研究者同士の活発なコミュニケーションを職場環境からつくりだす
100年の歴史を超え、次世代へのイノベーションが始まる新オフィス
――研究者同士の活発なコミュニケーションを職場環境からつくりだす
わたしたちは1916年に大阪府堺市を拠点に創業し、2016年に創業100周年を迎えました。 今回、研究開発から製品化に至る工程の更なるスピードアップを目指して、三宝工場(堺市)と泉工場(泉大津市)の2か所に分散していた研究開発拠点を、三宝工場内に新設する「次世代材料研究棟」へ集約します。 この新棟では、最新の研究設備を設置するだけでなく、オープンなオフィス空間を用意することで研究者同士のコミュニケーションを活発にし、イノベーションの促進を図りたいと考えています。
「歴史ある企業の新たな挑戦」――そのためにわたしたちができることは、「これからの100年」を見据えたオフィスを一緒につくることでした。 ステラケミファ様には100年以上積み重ねてきた歴史と実績があります。 それらを大切にしながら社内外に発信し続けることで、新しい挑戦が生まれ心身ともに健やかに生きられる、真に「サステナブル」な環境が生まれると考えたのです。
そのため、空間デザインはわたしたちのアイデアだけではなく、些細なことでもお客様の声からイメージを膨らませてデザインに反映させるようにしました。 そうすることでお客様がイメージされている理想の働く環境を具体的に引き出し、一緒につくり上げていくことができます。 一方で、お客様の誇るべき歴史を発信する仕掛けはこちらから積極的にご提案しました。 過去・現在・未来が融合することで新たな化学反応が生まれ、「これからの100年」が出来上がっていく、そんな起点の場になることを願いながら設計しています。
「次世代材料研究棟」が建設されたのは、大阪府堺市堺区にある三宝工場の敷地内。 ここは大阪湾を臨む交通利便性の良さから多くの企業が製造拠点を構える地域です。 金属製の配管設備が複雑に入り組む敷地内で、その無骨なイメージとは対照的に新棟の建物外観は太陽の光を集め、明るく洗練された印象を与えています。
建物内に入ると床や天井には木が多く用いられ、開放的な空間が訪れた人々をあたたかく迎え入れてくれます。 ここは会社の顔であり「現在のステラケミファ」を感じられるエントランス。 化学メーカーならではのクリーンな印象と、木やグリーンなど自然素材の質感からサステナブル貢献への同社の想いが同時に伝わる空間です。 この場所ではちょっとした打ち合わせや来客対応も可能。 ミーティングスペースは、細い棒状のグラスファイバーで作られたパーティションで仕切られており、ほどよいプライベート感と空間全体の抜け感の両方が確保されています。
エントランスの傍らには、「これまでの100年」を振り返ることができるヒストリーウォールがあります。 ピクチャーレールから吊り下げられたアクリルプレートには、1916年の創業から現在に至るまで同社に起こった数々の出来事や、生み出された多くの製品が記されています。 このヒストリーウォールをきっかけに訪れたクライアントとの会話も弾み、これまで積み上げてきた同社の実績と信頼を感じてもらえます。 アクリルプレートは位置を入れ替えたり追加したりすることも可能で、これからまた新しい出来事がひとつずつ増えていく様子も、企業の歩みを実感できる楽しみのひとつです。
建物内には外部見学者を案内するための見学ルートが設けられています。 一般的には閉鎖的なイメージのある研究開発エリアも、廊下の窓ガラス越しに見学が可能。 この場所から今まさに「これからの100年」が生まれている――そんな期待感がクライアントとの信頼関係をさらに深めてくれるでしょう。
建物内には目的に応じて利用できるさまざまな会議室があります。 1階には、エントランスから訪れたお客様をスムーズに誘導できる応接会議室。 落ち着いたトーンで統一された家具や内装が来訪者の緊張をほぐし、より親密な関係に導いてくれます。
3階には8人用のミーティングルームが3部屋と、大人数で利用できる大会議室が1部屋あります。 ミーティングルームの家具はすべて同じ設えですが、部屋によって気分を変えられるように床の色がそれぞれ異なるアクセントカラーになっています。 窓のない部屋には暗闇での投影に向いているプロジェクターを設置し、光の入らない環境を有効活用しています。 大会議室は中央のスライディングウォールで仕切れば2部屋に分割可能。 研究発表や拠点会議、リクルートシーンやインターン活動などにも利用され、未来につながる情報の交差点となっています。
4階は壁を設けず、空間をダイナミックに使用した執務エリア。 昔からの研究スタイルにとらわれず、これからは研究者もコミュニケーションを取りながら効率的に働いてほしいとの想いから、固定席とフリーアドレス席のハイブリッド運用が採用されています。
フリーアドレスエリアは、フレキシブルにレイアウト変更ができるキャスター付きテーブルを多く配置。 チームで集まって働くような場面にも対応できるようになっています。 窓際や壁沿いには、集中して作業したり議論したりできるカウンター席やファミレスブース席を設置。 フリーアドレスと合わせて、多様な働き方に合わせて場所を選択できるABWの考え方を取り入れることで、より個人の主体性を尊重しています。
壁がなくても固定席エリアとフリーアドレスエリアが区分されているのは、柱を基点にして床の素材が切り替わっているおかげ。 フロア中央にある一見邪魔な柱も、左右に配置されたソファと一体になって、緩やかに空間を仕切る名脇役となっています。
5階には、周辺の眺望を見渡しながらゆったりとくつろげるリフレッシュエリアがあります。 普段は活発にコミュニケーションを取りながら働いていても、たまには1人でちょっと一息つきたいもの。 そんな時にはこの空間を訪れて、コーヒーを片手に頭の中を整理します。 ビッグテーブルの中央に配置されたグリーンが適度に周囲の視線を遮り、自然とひとりの世界へと誘ってくれます。
もちろん、仲間とカジュアルなコミュニケーションを取るのもよし。 対面で座れるファミレスブースは、背面のパネルが半個室のようなプライベート空間をつくりだしてくれるので、仲間と落ち着いて会話ができます。
木目を基調とした柔らかなデザインが、老若男女問わず誰にとっても親しみのある空間を演出し、安心して心を解放させられる社員のオアシスとなっています。
今回は会社の歴史や未来をオフィスで見事に表現した事例でした。 入社したばかりの新入社員から勤続数十年のベテラン社員までが一緒に働く場所だからこそ、オフィスに会社の歴史を表現することで、自社に愛着や誇りを持って働いてもらうことができます。
また、窓がなくて閉鎖的な会議室をプロジェクターが使いやすい部屋にしたり、執務エリアを分断する柱を利用してソファと床の貼替で緩やかに空間を分けたりと、一見オフィスづくりを阻害するような要因もうまく有効活用していた点も見どころでした。 ちょっとした欠点も価値に変える工夫にぜひ着目してみてください。
Project’s Data
- 業種
- 化学メーカー
- 企業名
- ステラケミファ株式会社
- プロジェクト名
- ステラケミファ株式会社 次世代材料研究棟新築プロジェクト
- WEBサイト
- https://www.stella-chemifa.co.jp/