目指したのは「オフィスと家の中間」

――顔を合わせ、場を共有することで生まれる価値とは

目指したのは「オフィスと家の中間」

――顔を合わせ、場を共有することで生まれる価値とは

この記事は2023年10月17日に公開されたものです

楽天グループ株式会社 様

【品川】13,172㎡/2960ワークポイント/2022年10月竣工
【新宿】11,767㎡/2830ワークポイント/2022年8月竣工
お客様のファーストオーダー

「オフィスと家の中間」をコンセプトに、
社員の新しい働き方を実現するオフィスへ

わたしたち楽天グループは、「オフィスへ出社し、顔を合わせて働くことで生まれる価値」を大切にしています。 そのため、二子玉川にある楽天クリムゾンハウス(本社)では「従業員がオフィスにおいても家(ハウス)のように快適に過ごせ、一人ひとりが十分にパフォーマンスを発揮できるような環境を整えたい」という思いから、社員が顔を合わせることで生まれるコミュニケーションを大切にしながら、フレキシブルな働き方ができる空間を実現しています。 

しかし品川のオフィスでは、「コミュニケーションスペースが少ない」「個人デスク以外の働く場所が乏しい」という課題が生じていました。 今回のオフィスリニューアルでは、本社オフィスのコンセプトを継承しながら、より働きやすい環境を目指すことにしました。 

その上で新たなテーマ「共創空間」「場所に縛られない」「健康促進」を融合して、「オフィスに来る価値」を高めたい――。 Face to Faceの対話によってコミュニケーションを加速し、社員の新しい働き方を実現する空間に仕上げたいと考えています。 

オカムラのアンサー

「熱気」と「癒し」が調和する
遊び心溢れるオフィス

お客様の想いを叶えるためには、社員が「オフィスへ行きたい」と感じてもらうことが大切。 それが本プロジェクトの焦点だと捉えました。 導き出した答えは、オフィスだからこそ実現できる「共創と集中の場」と、社内にいても「リラックスできる場」をつくるアプローチです。 社員の回遊を促す動線設計や交流を叶えるスペースを確保しながら、同時にリフレッシュできる空間デザインをご提案しました。 

例えば、社員同士のミーティングで使える入り口付近の「ハドルスペース(Core Side)」は執務スペースとなめらかにつなげて、空間の一体感を演出。 一方でフリースペースである窓側の「ハドルスペース(Window Side)」は、天然の緑やリラックスできる家具を取り入れ、オフィス特有の無機質な雰囲気を抑えています。 

仕事の生産性を高める工夫とともに、随所に遊び心を取り入れて、社員が積極的に“行きたくなる環境”をご提供しました。 


執務エリア
写真左:カジュアルブース、
写真右:フルクローズ型ワークブース

自分のスタイルで、はたらく

エレベータホールからオフィスへ足を踏み入れると、広大なスペースに電動昇降デスクが規則正しく並ぶ圧巻の光景が広がります。 ここは個人が集中して日常業務を行えるフリーアドレスの執務エリア。 一人ひとりのデスクは十分なスペースが確保され、パソコンを使いながらたくさんの資料を広げられるゆとりがあります。 電動昇降デスクは、立ったり座ったりと自由に姿勢を変えることで集中力を維持しつつ、座りっぱなしによる身体への負担を軽減します。 生産性の向上を目指しながらも、社員の健康への気遣いが感じられます。 

執務エリアには遮音性の高いフルクローズ型ワークブースと、オープンなカジュアルブースも複数配置されています。 WEBミーティングや少人数での打ち合わせ、一人で没頭したい作業など、シーンに合わせて働く場所を選べます。 個人の集中力を高めながら、フレキシブルに社内外の人とつながりが持てる工夫――そこから、社員一人ひとりの多様な働き方を尊重したいという同社の想いが伝わってきます。 

ハドルスペース(Core Side)
ユーティリティースペース
ロッカーのそばに設置されたホワイトボード

ぐるりの“余白”が出会いをつなぐ

執務エリアの周りには多彩な才能が偶発的に出会うための動線がつくられ、顔を合わせて話し合える“余白”がぐるりと配置されています。 

“余白“のひとつであるハドルスペース(Core Side)は、思い立ってすぐ打ち合わせができる場所。 執務エリアの近くに配置されているので、自席の延長という感覚でスムーズに移動することができます。 スペース内にはソファと観葉植物が配置され、まるで家のリビングのような居心地です。 程よいリラックス感は自由な発想を引き出します。 

通路で出会った仲間との立ち話では、壁面のホワイトボードが役立ちます。 ハドルスペース(Core Side)やロッカー付近に設置されていて、何気ない会話から生まれたアイデアをすぐさま書き出すことができます。 また、ユーティリティースペースには、作業台を兼ねたゴミ捨て場とコピー機を集約。 印刷しにきた人と作業台で資料を整える人が笑顔で挨拶を交わすことをきっかけに、カジュアルな会話が始まります。 

社員が集まる空間が意識的に配置され、偶発的な出会いや会話を生みだす工夫が随所に施されているのです。 

ハドルスペース(Window Side) Vivid×Casual
ハドルスペース(Window Side) Iron×botanical
ハドルスペース(Window Side) Urban×modern
卓球台

上質な設えと遊び心のある工夫で、弾む会話

執務エリアからガラスパーテーションで区切られたスペースへ一歩足を踏み入れると、空間の印象ががらりと変わります。 ここは、リラックスした雰囲気の中でさまざまなコミュニケーションを促すハドルスペース(Window Side)。 

共通するデザインコンセプトの要素が保たれつつ、フロアごとに内装が変化しています。 木目の中に鮮やかなチェアが配置されてカジュアルな「Vivid×Casual」、インダストリアルテイストと観葉植物の組み合わせで、落ち着いた雰囲気の「Iron×Botanical」。 そして、デザインタイルが用いられたモダンで都会的な空気感を醸しだす「Urban×Modern」の3種類のハドルスペース。 あえてテイストを変えているのは、社員の階層回遊を促すため。 「今日はあのフロアに行ってみよう」と、気分や目的によって移動するわくわく感を味わうことができます。 こうした仕掛けが偶発的な出会いを呼び、思いもよらないアイデアが生まれるかもしれません。 

執務エリアやハドルスペース(Window Side)の傍らには、卓球台に早変わりするテーブルやダーツの的が隠されたモニター台が設置されています。 仲間との適度な運動は気分転換になり、楽しげな笑い声はオフィスの雰囲気を明るくします。 「オフィスと家の中間」を体現する仕掛けで、固定観念にとらわれない「楽天らしさ」が垣間見えてきます。 

アトリウム&ラウンジ
カフェテリア

カフェテリアへの小旅行で、
心と体をリフレッシュ

アトリウム&ラウンジは、オフィスエリアとカフェテリアをつなぐ空間です。 日本の美意識と北欧の心地よい暮らしを調和させた「Japandi」をテーマに、東屋や縁側など日本の建築様式から着想を得たデザインと、ナチュラルでありながらモダンな北欧インテリアのテイストが混じり合います。 

窓際のスペースは2フロアにまたがる吹き抜けエリア。 天井からはちょうちんを模した大ぶりのペンダントライトが吊り下げられ、柔らかな光が全体を照らしています。 まるでリゾートホテルのような、明るく解放的な空間にいると、ここがオフィスであることを忘れてしまいそうです。 

アトリウム&ラウンジのひとつ上のフロアにあるカフェテリアは、またがらりと様相が変わります。 ステンレスやパンチングメッシュなどの工業的な素材が用いられ、シックでインダストリアルな空間に仕上がっています。 品川はかつて海運の拠点として発展した倉庫街を擁する街。 品川オフィスならではの地域性が感じられるデザインです。 

フロアを移動するだけで変化する景色と空気感。 オフィス内を移動するだけで、まるで小さな旅に出たかのような感覚に陥ります。 これも、同社が表現する「オフィスに足を運ぶ価値」のひとつです。 

家形やぐら(新宿オフィス)
ハドルストリート(新宿オフィス)
執務エリア(新宿オフィス)
写真左:フルクローズ型ワークブース、
写真右:個人で使えるワークスペース(新宿オフィス)
コミュニケーションエリア(新宿オフィス)

社員が集い、行き交う“ストリート”

今回のプロジェクトでは、新宿オフィスの増床も同時期に行いました。 自由な姿勢で集中力を持続できる電動昇降デスク、仲間とのスピーディーなコミュニケーションを叶えるスペース、個人で集中できるワークスペース、心身のリラックスとカジュアルな交流を叶えるカフェテリアの導入は、品川オフィスと共通したものです。 

一方、オフィスのかたちに合わせた独自の設計もあります。 新宿オフィスはサッカーコート一面分におよぶワンフロア。 広大な空間の解放感を保ちながら、コミュニケーションを活性化し、一体感をつくりだす工夫が施されています。 

南北2つの入り口からのアクセスをつなぐ「ハドルストリート」が交流の核に据えられています。 フロアの中心を貫くハドルストリートは、電動昇降デスクが並ぶ執務エリアとシームレスにつながり、社員が行き交いながら集う導線になっています。 

オフィスに入ると目の前に現れる「家形やぐら」は、オープンなミーティングスペース。 適度な囲いが設けられていることで話し合いへの集中力を高めるとともに、そばを通る社員が議論の熱を自然に感じ取れます。 

執務ゾーンの周囲をぐるりと取り囲むのは、ミーティングブースやパーソナルブース、コミュニケーションエリアです。 「集中」と「交流」の場を分散して配置することで空間にリズムが生まれ、刺激とリラックスをもたらしています。 

品川オフィスと新宿オフィスに通底するのは、社員同士が顔を合わせることで共創を加速し、かつ家のようにリラックスできるというコンセプト。 オフィスに来るからこそ叶う体験が散りばめられた空間になっています。 

【編集後記】

今回は社員が「あえて会社へ行く価値」を感じられる仕掛けを盛り込んだオフィスづくりの事例でした。 「オフィスと家の中間」のような「熱気」と「癒し」が調和するオフィス。 そこには、社員同士が顔を合わせて同じ場を共有しはたらくことから生まれる、オフィスならではの価値がありました。 オフィスの広さや形に関わらず、オフィスの中に共創・集中・遊びの要素を工夫して取り入れることで、出社してはたらくことの価値を高めることができます。 会社に行くことが「当たり前」ではなく「選択肢の一つ」となった昨今、作業場としてのオフィスづくりではなく、オフィスがもたらす体験も合わせてデザインすることが、「会社に行って同僚とコミュニケーションを取りたい!」という社員の気持ちの醸成に結びつくのではないでしょうか。 

Project’s Data

業種
サービス業
企業名
楽天グループ株式会社
プロジェクト名
楽天グループ品川・新宿オフィス増床プロジェクト
WEBサイト
https://corp.rakuten.co.jp/
設計
株式会社オカムラ
設計&
コンセプトデザイン協力
楽天グループ株式会社 ファシリティマネジメント部 コンストラクションマネジメント課
編集
モリヤワオン(ノオト)・オカムラ編集部
執筆
合戸 奈央

Relative Projects

キリンホールディングス株式会社 グループ本社オフィス 様
アステラス製薬株式会社 本社オフィス 様
三井住友DSアセットマネジメント株式会社 本社オフィス 様
株式会社ぐるなび 本社分室オフィス 様
末松九機株式会社(現 安川メカトレック末松九機) 様
NRIネットコム株式会社 様
特殊電極株式会社 様
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株式会社エスユーエス 様
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株式会社朝日新聞社 名古屋本社 様
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ステラケミファ株式会社 様
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オカムラ 『MENNOLU LABO(みのるらぼ)』
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