「半歩先のライフスタイル」を叶える新たな価値創造のフィールド
――中長期的な視座でオフィス空間を考える
「半歩先のライフスタイル」を叶える新たな価値創造のフィールド
――中長期的な視座でオフィス空間を考える
在宅勤務やテレワークの浸透により、わたしたちの働き方もこの数年で大きく変化しました。 しかし、オフィスのレイアウトや運用は以前のままで、けっして社員ひとりひとりのパフォーマンスを最大化できているとはいえません。 今回のプロジェクトでは、オフィスのフロア構成やレイアウトを見直すことで従来型オフィスの脱却を図り、働き方の変革を目指します。 パートナー企業には内装計画だけでなく、プロジェクト推進をスムーズにすすめていくための社内連携方法や、意向の集約・調整・反映の手法、フリーアドレス導入などのサポートも期待しています。 これからのサザビーリーグをともに考えられる「働き方改革のパートナー」を求めています。
今回は、働き方改革を「オフィス改装」という手段で実現するため、改装のその先も見据えながら、コンサルタントメンバーとチームを組んで丁寧に進めていきました。 具体的には、本格的な設計をはじめる前に2か月ほどかけて徹底的にお客様の企業文化や働き方を調査。 トップインタビューや社員アンケート、ワークショップなどを通して 「新しいことや変化に積極的に挑戦する環境づくり」というプロジェクトゴールを設定しました。 このゴールを実現するために「部門間、上下間でフランクに意見交換ができること」、「社員が自律的に働き方を選べること」、「サザビーリーグらしさが感じられること」という要素を空間に落とし込んでいます。
たとえば、座席の運用は業務内容やその日の気分によって自由に座席を選べるフリーアドレスを基本とし、部署内のコミュニケーションもとりやすいようにチームスポットを各所に配置しています。 内装やインテリアは、サザビーリーグのコーポレートカラーであるカフェオレグレーをベースに、ベージュや木目など落ち着きのあるカラーで統一しました。 リラックスして働きながら「サザビーリーグらしさ」を感じられる空間になっています。
今回改装を行ったのは、1階に自社が手掛けるブランド「Ron Herman(ロンハーマン)」のショップとカフェが入居するビルの6・7階。 元々3フロアに分かれていたホールディング部門の執務エリアを、グループアドレスの導入により2フロアに集約しました。
7階に出社すると、「It’s a beautiful day.」という言葉とともに一日が始まります。 これは「なんてことないふつうの生活の中に、かけがえのない “ささやかな幸せ” をお届けしたい。 」という同社のSpirit。 はたらく従業員同士も“今日もいい一日ですね”と微笑みかけあえる、そんな空間になるよう想いを込めています。
洞窟のように型抜きされた入口をくぐると、石畳のような通路とグリーンが印象的な明るい執務スペースが広がります。 このフロアは主に社長室やDX推進室、営業統括のメンバーなどが多くいるエリア。 サイズや高さの異なるテーブルをランダムに配置することで、個人が好きな座席で作業をしながら、通りがかった他部門のメンバーともその場でちょっとした打ち合わせができます。 役員も個室や自席をもたない運用なので、今日は隣に社長が座っていることも今では自然な光景になってきました。
フロアの奥には、用途によって使い分けられるさまざまなコミュニケーションエリアが設けられています。 チームスポットは、固定席をもたない運用で希薄になりがちな、チームコミュニケーションを補うための“拠りどころ”。 チーム内で共有するサンプルや資料を保管したり、プロジェクトに応じてさっと集まったり、仲間の顔を見ながら自由気ままに雑談したり、目的や温度感にあわせて柔軟に利用できます。
クリエイティブスペースは、部門を問わずに新しいアイデアを育てていくことのできる場。 通常時は少人数でのミーティングやアイデア出しなどに利用できますが、中央のカーテンを開ければ大きなひとつの空間へと変化します。 家具やモニターも可動式で自由に動かせるため、社内勉強会や部門全体会議など、用途に合わせて最適な環境を整えられます。 新しいアイデアが生まれ、育ち、浸透していく過程のすべてを、この場所がサポートしてくれるでしょう。
6階に降りて執務エリアに入ると、たのしそうな笑い声が聞こえてくる「LEAGUE LOUNGE」があります。 ここはいくつかのチームスポットやカフェ、ラウンジなどが集結した、オフィスの中でも賑やかなエリアです。 人が頻繁に行き来する出入口付近にコミュニケーションスペースを集結させることで、従業員同士の偶発的な出会いを誘導し、より多くの人に活用してもらえる効果があります。 エリア全体がオープンシェルフやグリーンで緩やかに囲まれているため、周囲からの視線も気になりません。 本物の木材の風合いを出すため、カウンターや造作棚にはシナの木をつかった仕上げ材を多く使用。 小さなお店が寄り集まっているようなレイアウトや、石畳調のカーペットがフランスの市場のような賑やかさを醸し出し、仲間との一体感を感じられる空間になっています。
「LEAGUE LOUNGE」を抜けると、フロアの左右にはざまざまな機能を持った執務空間が広がっています。 通路と収納を隔てて緩やかに仕切られているベンチデスク席は、各席にモニターが完備された日常業務に最適なセッティング。 一方で、通路沿いに配置されたチームテーブルは、数人のチームで作業をしたり、資料を広げてのびのび作業をしたりするシーンに適しています。 通路との距離感が調節されていることで、「今日は事務作業に専念したい」や「周囲の人とも自然にコミュニケーションが取りたい」などの心理に応じて、従業員が直感的に座席を選択できています。
個人の荷物や上着などは、廊下側に集約された個人ロッカーやワードローブに収納します。 無機質になりがちなスチール収納も、ヒノキでつくられた衣装をまとうことでやさしい風合いへと変化します。 人が多く行き来する通路面には、掲示板として活用できるボードを設置。 ボードは天然材料のリノリウムでできており、自然環境へも配慮しています。
窓際エリアを中心に、タイプの異なる集中空間も多く備えています。 改装前に行ったワークショップでは、リラックスできて開放的な執務空間にしたいという一方で、WEB会議や面談が行える場がほしいとの声も多く聞かれました。 完全個室のWEBミーティングルームのほかにも、造作壁で囲われた集中スペース、窓の柱間を利用した片面ソファ席や、パネル付きのカウンター席など、集中レベルに合わせて使い分けることができます。 背の低いパネルで囲われたソファタイプのWEBミーティングブースは、WEB会議以外の集中作業にも利用できる人気のスポットです。
集中と交流が最適に融合した空間で働くことで、従業員自身が自然なライフスタイルを実現できる。 だからこそビジネスでも「半歩先のライフスタイル」を提案し、新たな価値を創造しつづけられる――そんな土壌がここにはありました。
今回は、中長期的な自社の「働き方改革」を見据えたオフィス改装事例でした。 実は、お客様が漠然とこれからの時代に向けて働き方を変えていきたいと構想してから、その第一歩であるオフィスが完成するまで、約2年もの期間をかけています。 実際にオフィスのレイアウトや内装に着手する前に、中長期的な視座でどのような会社にしていきたいのか、どのような働き方を実現したいのかを深く考えることが、働き方全般を含めたブレない軸となります。 そうして完成したオフィスに訪れるたびに、構想時の想いや決意を思い出すことができる、この空間にはそんな効果もあるのかもしれません。
Project’s Data
- 業種
- 衣食住ブランドの企画、販売
- 企業名
- 株式会社サザビーリーグ
- プロジェクト名
- サザビーリーグ本社 オフィス改革プロジェクト
- WEBサイト
- https://www.sazaby-league.co.jp/