固定席とABWの"いいとこどり"オフィス
――自分たちの働き方に合った空間と運用の見つけ方
固定席とABWの"いいとこどり"オフィス
――自分たちの働き方に合った空間と運用の見つけ方
わたしたちは、再生可能エネルギーを含めた様々なエネルギー関係の事業に取り組んでいます。 近年、世間の注目を集めるわたしたちの事業は、その規模を拡大するとともに社員数も増加しており、今までのオフィスでは手狭になったため新しいオフィスへの移転を決めました。
わたしたちのオフィスでは、管理系の部署が多く紙資料を扱う場面も多いため、固定席の運用を採用しています。 今回の移転では、現状の固定席運用を引き続き採用しつつ、「整然と机が並ぶオフィス」ではない「新しい働き方ができるオフィス」にしたいと思っています。 従来の固定席をベースにしたオフィスの枠にとらわれない、以前より一歩先に進んだオフィスを目指しています。
最初にお客様から新しいオフィスにかける想いを伺ったときから、「いままでにない」や「型にはまらない」といったキーワードが強く印象に残っていました。 同社のスローガン「向かい風に帆を掲げよう」から、荒波にも果敢に挑んでいく精神を感じ取り、新しいオフィスにもその要素を落とし込んでいます。
執務エリアには、固定席スペースのところどころにABWスペースをちりばめています。 ワークシーンに合わせて働く席を選べるABWスペースをそれぞれの部署の間に配置することで、それ自体が部署間の仕切りの役割をしてくれるのです。 壁やパーティションを使わずとも、チームが結束できる場所をきちんと確保し、業務に応じた柔軟な働き方も実現できる――そんな空間を目指しました。
また、オフィスの全体に渡って様々なグリーンを使用しており、山林事業も手掛けるエフオン様の特色を空間に取り入れつつ、オフィス全体での一体感やまとまりを感じられるように工夫しています。
高級ホテルのロビーのようなエントランスは、来訪者に「安心感」と「信頼感」を感じさせる落ち着きのある佇まい。 モノトーンの天井と床、そして大きな曲線の壁に包み込まれるような空間が、エネルギー業でわたしたちの生活を支える同社の風格を象徴しています。
左官で仕上げられた正面の黒い壁は、「エネルギーの黒子であろう」という企業理念が表現されています。 柔らかい壁面の表情と、それを囲むように光るライトが空間全体にやさしく反射し、お客様の事業同様、見えないところでもわたしたちにそっと寄り添ってくれているかのようです。
ガラス張りの会議室は、入居前からもともと残っていた壁を木で仕上げ直し、エントランス全体との調和を図っています。 会社の想いだけではなく、社員たちの和気あいあいとした様子まで来訪者に伝わっていきます。
執務エリアは、縦横ジグザグに配置された固定席と、部署間を隔てるABWスペースが特徴的です。 ABWスペースで部署と部署を隔てることで、部署間の距離がある程度確保でき、チームメンバーと仕事の話はもちろん、カジュアルな話も気兼ねなく話すことができます。 また、ABWスペースが自席の近くにあれば、ちょっとした打ち合わせなど他部署との情報共有もスピーディーに行えます。 以前は簡単な打ち合わせでも会議室で行っていましたが、今ではABWスペースで打ち合わせをしている姿も頻繫に見かけるようになりました。
縦横の島配置によって生まれるくねくねとした動線は、直線的な動線よりも偶発的な会話を生み出しやすく、通りすがりに他部署の同僚から声をかけられることもしばしば。 チーム内の結束を深めるだけではなく、周りとのコミュニケーションもとりやすい執務エリアになっています。
オフィスの各所にあるABWスペースには、多様なワークシーンに対応できる様々な席が用意されています。 ハイテーブルを使って立って作業することで、健康に配慮できるだけでなく大きな資料を広げるときにも便利です。 自席周りで電話をしている人がいると作業に集中できないので、周りから離れたところにあるパーソナルソファ席を利用するという声も。 また、ちょっとした打ち合わせをしたい場合はハイテーブル席やソファ席を。 アイデア出しなどで活発に議論したり、人数に応じて設えを変えたいときはフレキシブル席を利用するなど、同じ打ち合わせでもシーンによって環境を変えることができます。
グリーンの張地を使った家具が多く用いられているABWスペースは、植栽も多く近所の公園を訪れたときのように自然と肩の力が抜けてリラックスできる場所でもあります。 目的と気分に応じて働く場所を変える――柔軟な働き方の大事な要素ではないでしょうか。
オフィスの中央には、コピー機や事務備品等を一か所に集約したユーティリティスペースがあります。 コピーをして作業台で資料を整えていると、備品を取りに来た他部署の人や通りすがりの人と会話が弾むことも。
ホワイトボード付きの棚は、会社の連絡事項やその月のイベントごとなどを共有できる社内掲示板として活用されています。 ほかのメンバーが出張から戻ってきたあとは、天板付きの収納の上に美味しそうなお土産が置いてあることも。 それをきっかけに仕事の合間にみんなでひと息つくのも、良いリフレッシュになります。 業務に必要な機能を揃えながら、自分たちで工夫できる余地を残すことで情報やものが集まります。 それが人を引き寄せるマグネットスペースになるのです。
執務エリアを抜けて見晴らしの良い窓側に進むと、まるで植物園の一角を切り取ったかのような立派な植栽に囲まれたリフレッシュエリアが姿を現します。 周りの視線を気にせずゆっくり休める空間でありながら、天井近くまで伸びる大きな植栽が、執務エリアともゆるやかに繋がれる仕切りの役割を果たしています。 手前のスペースは明るくオープンなので賑やかな雰囲気なのに対して、植栽に囲まれた奥のスペースはムーディーで落ち着いた雰囲気を醸し出しています。 その落ち着いた雰囲気ゆえ、おしゃれなカフェに訪れたような気分を味わえるのはもちろん、自社事業とも関わりが深い生木をダイナミックに感じられる「エフオンらしい」リフレッシュエリアです。
今まで培ってきた働き方を継承し、新しい環境とともにそれを進化させる――そんな実直ながらも洗練された空間になっています。
今回は、固定席で運用しながらABWスペースを上手に活用して、部署内の結束と柔軟な働き方の両方を実現した事例でした。 近年、固定席からフリーアドレスへ移行するオフィスは増加の一途を辿っていますが、すべての企業にフリーアドレスが合うわけではありません。 なかには固定席の方が企業特性に合う場合もあるのです。 空間と運用を大幅に変更しなくとも、固定席とABWを組み合わせるなどの工夫次第で、それぞれの企業が目指す最適なオフィスを構築できるのではないでしょうか。
Project’s Data
- 業種
- エネルギーサービス業
- 企業名
- 株式会社エフオン
- プロジェクト名
- エフオン本社 移転プロジェクト
- WEBサイト
- https://www.ef-on.co.jp/