座席数40%減で実現する働き方の変革
── オフィスを縮小しながら効率性・快適性・コミュニケーションを向上
座席数40%減で実現する働き方の変革
── オフィスを縮小しながら効率性・快適性・コミュニケーションを向上
かつて高層ビル日本一の高さを誇った世界貿易センタービル。 浜松町のシンボルとして長年愛されてきましたが、老朽化により2021年に本館が閉館し、新たに南館が新築されることが決定しました。
それに伴いKYB本社は、南館の竣工にあわせて本館から南館へ移転します。 本館では数フロア飛び地で約300席のスペースを有していましたが、南館の新オフィスでは1フロア180席に集約します。 面積上の制約は生じますが、他拠点も含めた入居部門の整理と働き方の変革により、効率的で快適な環境を実現したいと考えています。
また、入居部門に限らず他拠点の従業員も気軽に利用できるよう、タッチダウン機能を充実させ、部門を超えた社内コミュニケーションを活性化させたいと思います。
最初にご相談をいただいたのは移転の約2年前のことでした。 新築ビルへの入居では、ビルの建築と同時にテナントエリアのパーティション工事や設備工事を進めていくため、1~2年ほど前に希望レイアウトの提出を求められるケースが少なくありません。 今回は新築されるビルの竣工とほぼ同時に移転入居予定だったため、お客様のレイアウト希望、特に天井までの壁位置を入居の1年半程前にはビル側へ提出する必要がありました。 提出したレイアウトは途中で大きく変更することはできないため、今回は確定した基本ゾーニングの中でいかに機能性を持たせるかを重視し、内装デザインや家具を設計していきました。
なかでも、会社の顔となるエントランスと、全従業員が気軽に利用できるセッションエリアはお客様が非常に重要視されていた空間です。 全体として明るい木目や自然素材を多く取り入れることで、誰もがリラックスして働くことができ、自然とコミュニケーションをとりたくなるような環境を実現しました。
お客様を迎え入れるエントランスは、柔らかくも明るく洗練された空間。 無人ながら、まるで誰かが優しく誘ってくれているような温かみが感じられます。 コーポレートカラーの赤と白に調和する明るい木目を基調とし、素材感の異なるグレーのタイルが空間全体を引き締めることで、落ち着いた雰囲気を演出しました。
対面の壁面にはKYBの技術力や歴史を感じ取れるディスプレイを設置。 商業店舗でも多く採用されている陳列システムのVisplayをタイルに埋め込むことで、レールを目立たせず展示品をより際立たせています。 飾り棚やパーツははめ込み式なので、配置や個数は自由に変更が可能です。
エントランスからは、カンファレンスルームと4部屋あるビジタールームへ直接アクセスが可能です。
カンファレンスルームは中央のスライディングウォールで2部屋にセパレートすることができます。 開放して使用すれば最大40名ほどを収容でき、大規模な役員会議などでも利用が可能です。
ビジタールームの家具や内装は同じ設えですが、異なる4色のアクセントウォールが各部屋に個性を持たせています。 会議の内容や気分によって部屋を使い分けたり、「ブルーの部屋で」と愛称で呼んだりするのも、空間に愛着がわく理由の一つです。
エントランスから自動扉を抜けると、開放的で様々な機能を備えたセッションエリアが広がります。 こちらはコミュニケーションを中心とした多目的空間だけでなく、他拠点から訪れた従業員が気軽に利用できるタッチダウンスペースとしての機能を合わせ持っています。
ファミレスブース形式のセッションシートでは、少人数の打ち合わせや個人でWEBミーティングを行う人も。 完全な個室ではありませんが、執務エリアからは少し距離があるので周囲を気にせず打ち合わせに集中できます。
セッションシートの対面にある、片面ソファとカフェテーブルで構成されたチャットスペースは、よりカジュアルに会話やランチを楽しめる場所。 ソファの台座には電源が完備されているので、出張で訪れた社員も安心して仕事に取り組むことができます。
セッションシートとチャットスペースの間にはフレキシブルにレイアウトを変えられるキャスター付きのチェアを配置。 壁面は全面ガラスのホワイトボードになっているので、思いついたことをその場で書き込めます。 ブレストや企画会議など、自由に想いを伝え合うシーンにぴったりです。
エントランス同様、セッションエリアにも風合いの異なる様々な天然木が使用されています。
中央のパントリースペースは木製のフレーム「LODGE」で囲まれた山小屋のような雰囲気。 電化製品も黒で統一され、まるでお洒落なポップアップストアが出現したかのようです。
通路に面したコーナーには、大規模な会議が実施される際に事務局メンバーが待機できるウェイティングゾーンが設けられ、急な呼び出しにも対応できるよう出入りのしやすいハイカウンターが設置されています。 天井から吊るされたペンダントライトはブナの木で作られたこだわりの逸品。 やわらかな光が空間に安らぎを与えています。
セッションエリアと執務エリアはメイン通路によって緩やかに空間が仕切られています。 目線を遮る障害物がなく動線も整理されているため、広く開放的な印象を与えます。 こちらはベンチデスクを用いたグループアドレスの運用です。
移転にあたり働き方を変革しようと、移転前からフリーアドレスやグループアドレスなど、様々な働き方をトライアルしました。 その中でも、管理部門の多い本社はチームでの連携が取りやすいグループアドレスが最適と判断。 レイアウトもタテヨコプランやグリッドプランなど、様々な案を図面上で検討した結果、スペース効率を最大化できるユニバーサルプランが採用されました。 チェアは移転前から愛用されているオカムラの「スラート」。 ちなみに、スラートチェアの脚支柱部分には、KYB社製のガススプリングが使用されています。
窓際にはチームのリーダーとなる役職席が配置されていますが、クイックな打ち合わせが可能なスタンディングテーブルも設置。 ハイスツールに腰掛け、議論が盛り上がるとつい立ち上がって熱い想いを語り合う、そんなシーンが印象的です。
フロア奥には、当初から希望のあったフルクローズ型のワークブースを設置。 働き方の変革に伴い自席以外でも仕事ができるようになったからこそ、業務や目的に合わせて最適に活用されています。
用途に応じて使い分けられるよう、異なるサイズの テレキューブ by OKAMURA を配置。 執務室付近には、打ち合わせや面談にも利用可能な2人用を2台、社員通用口付近にはWEB会議や集中ブースとして使える1人用を1台設置しています。
通用口付近はワードローブスペースも兼ねていますが、飾り棚にも使用されるシェルフをハンガーラックとして利用することで、シンプルで清潔感のある印象を与えています。
今回は移転の1年半前に基本計画を確定したという、近年の大型新築ビル入居でみられる象徴的な事例でした。 レイアウトを大きく変えられない中でも、個室の代わりとなるワークブースを設置したり、声を出すコミュニケーションエリアを執務室から少し距離をとって配置したりと、ゾーニングと家具の工夫次第で希望する機能の実現は可能です。 また、入居後もフレキシブルに機能を変更できるよう、あらかじめ出来るだけ壁を立てないオープンオフィスを設計するケースも増えてきています。 レイアウトや個室に左右されない設計の工夫は、居抜きでの入居や改装工事にも応用できますので、是非参考にしてみてください。
Project’s Data
- 業種
- 油圧機器メーカー
- 企業名
- KYB株式会社
- プロジェクト名
- KYB本社 移転プロジェクト
- WEBサイト
- https://www.kyb.co.jp/