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成長を促進するスムーズさの設計

2025.2.12
  • Research
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ワーカーが成長を実感する要因の一つに、
仕事を滞りなく進められるようになるということが挙げられます。
では、仕事を滞りなく進められるということは、何に起因しているのでしょうか。
また、ワーカーはオフィスのどんな場面でそれを感じているのかを探りました。

POINT:

  • 仕事がスムーズに進められるようになると「自分が成長した」と実感する人は、全体の8割以上。
  • 仕事がスムーズに進むためにオフィス環境の整備が役立ったと答えた人は約半数。
  • 一般職、管理職ともにオフィス環境で役立ったと感じているのは「集中環境」だった。

この記事では『KNOWLEDGE - WORK DESIGN REVIEW 2024 FEATURE #03 成長を促進するスムーズさの設計』より一部内容を抜粋してご紹介します。


仕事のスムーズさが成長実感を高める

まず、「仕事が滞ることなく、個人・職場として求められる成果をあげることができている状態」をスムーズさの定義とし、ワーカーの成長実感との関係を調べました。

仕事がスムーズに進められるようになると自分の成長が実感できるか尋ねたところ、8割以上が「そう思う」と答えました。仕事がスムーズに進められることは成長実感に大きな影響を与えていることがわかります。


オフィス環境の整備がスムーズさに影響

では、スムーズに仕事を進めるためにオフィス環境の整備は役立つのでしょうか。東京女子大学と行った調査では、オフィス環境の整備が仕事のスムーズさに役立ったと答えた人の割合は、全体で約半数、管理職で6割弱、一般職で4割強でした。特に管理職の方が、オフィス環境の整備が仕事をスムーズに進めるために役立つと感じている人の割合が高いことがわかります。


どんなオフィス環境が仕事をスムーズにするか

どんなオフィス環境が仕事をスムーズにするか明らかにするため、仕事のスムーズさに良い影響を与えた経験に関する自由記述の回答をテキストマイニングという手法で分析し、関連して多く使われていた単語を調べました。

はじめに管理職に対してオフィス環境の整備により仕事がスムーズに進んだ経験を尋ねたところ、回答で一番強く現れたのが、「集中できる環境」という塊でした。集中できる環境に対しての自由記述を見ると、個人で集中できるということに加え、プロジェクトルームなどチームで集中作業できる環境が備わっていることなども挙げられていました。

他にも「効率のよいレイアウトの工夫」といった塊や、「コミュニケーション空間の使い勝手」、「自由に使える空間」「健康によい環境」の塊が大きく現れています。

管理職の回答の特徴としては、先に触れたとおり、個人の環境だけでなく、チームとしての環境についても配慮する意見が多く出たことが挙げられます。管理職は、チームがスムーズに働けることに対する意識も併せ持っているようです。

同様に、一般職の人たちにも、オフィス環境の整備により仕事がスムーズに進んだ経験を聞きました。こちらも「集中できる環境」という塊が一番強く現れています。しかし、自由記述の内容を見ても、管理職と異なりチームでの集中についてはほとんど現れませんでした。集中と似た要素として「こもれる環境」が登場したこと、「オンライン会議の環境」を挙げる傾向も見られました。

このことから、一般職の人たちがスムーズに仕事を進めることに対しては適切な集中環境やこもれる環境を整えることが優先事項だといえます。オフィスの中にどのような設えを導入すると集中環境が整うのか、職務特性やワーカーの嗜好などに配慮して考える必要があるでしょう。


仕事がスムーズに進む環境を設計することで
自分の成長を実感できるように

仕事がスムーズに進められることで成長を実感している人は8割に上り、オフィス環境が仕事をスムーズに進めるために役立つと考えている人が多くいることがわかりました。

オフィスの要素として仕事のスムーズさに役立つのは、管理職、一般職ともに集中環境を整備することだとわかりました。両者ともにとても高い出現頻度だったことから、オフィスの中に集中環境が整っていない場合には、大きく状況を改善できるポイントが残されていると言えます。

なお、この研究ではコミュニケーションの工夫とスムーズさの関係についても調べています。PDF版(掲載ページP11〜)で詳細な内容を掲載していますので、下記バナーからダウンロードしてご活用ください。

Research: 池田晃一、森田舞
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次(Beach)、堀内宏臣(Kanaalstraat Studio)
Illustration (Top Banner): Hi there
Production: Plus81