働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGEレイアウトデータからみるオフィスの現在 2024
オカムラでは、オフィスづくりの指標となる優良オフィス
(日経ニューオフィス賞の応募資格に該当するオフィス)を対象とし、
レイアウトに関する基礎データを継続的に収集しています。
今回はその中から「1人当たりのオフィス面積」など、
オフィスづくりのベンチマークを設定するうえで参考となるデータをご紹介します。
POINT:
- ABWの普及に伴い執務席以外でも快適に個人作業できる席も座席に含めて分析したところ、1人当たり面積は直近5年ほど大きな変化は見られなかった。
- ABWに対応したオフィスは約3割が該当し、2021年から横ばいとなっている。
この記事では『KNOWLEDGE - WORK DESIGN REVIEW 2024 RESEACH #03 レイアウトデータからみるオフィスの現在』より一部内容を抜粋してご紹介します。
オフィスの構成比率と分類
オカムラの調査では、オフィス全体を分類するにあたって、壁で囲われたエリア単位の空間(①)でオフィスを分けています。さらにそのうち執務エリアについては、設置されている家具の種類・用途やレイアウトに応じて、スペース単位の空間(②)で分類しています。この分類は、FM推進連絡協議会編(2018)『公式ガイドファシリティマネジメント』を参考に作成しています。
本文中に記載されている各年の値は、その年のデータを含めた最新4年間の図面を計測し算出した平均値です。例えば2023年の数値は、2020年~2023年に収集した208物件の平均値を表しています。また、「1人当たり面積」を算出するための在籍者数は、デスクワークを行うために使用していると思われる執務エリア内のイスの数やミーティングスペースにあるイスなど、オフィスにある執務が可能な席をもとに算出しました。
ABWに対応したオフィスは約3割
ABW(Activity Based Working)とは、仕事の内容や目的に合わせてオフィス内外を問わず働く場所を選択する働き方のことです。今回の調査対象の中にどの程度ABWに対応したオフィスがあるかを調べると、約3割が該当しました。経年での変化を見ると、2017年以降に普及の勢いが増し、2021年以降から3割程度で横ばいになっています。
ABWに対応したオフィスとそうではないオフィスでは、席の考え方に大きな違いがあります。前者では、上の図の青丸で示したような執務席以外にも、快適に個人作業ができる席(緑丸)が多いという特徴があります。オカムラではそうした背景をふまえ、青丸と緑丸を合わせた席を「執務可能席」として分けて定義しています。
1人当たりの面積は近年大きな変化なし
オフィス全体や執務エリアの面積を執務可能席数(2017年以前は執務席数)で割った「1人当たり面積」の推移を表したのが上の図です。
2017年から計測方法を変えたため、1人当たり面積が減少しています。これは「ABWに対応したオフィスの例」で示したように、執務可能席で計測することで執務できる席が増えたためです。
オフィス全体、執務エリアともに2000年前後をピークに減少し続けていましたが、直近5年ほどは大きな変化は見られません。
長期的な減少傾向の要因の一つには、建築技術の進歩によりオフィスがメガフロア化し、効率よくデスクレイアウトできるようになってきたことが挙げられます。近年ではそうした潮流が一段落したことから、下げ止まっている可能性があります。
Research: 野々田幸恵、牧島満
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次(Beach)、堀内宏臣(Kanaalstraat Studio)
Production: Plus81