働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGE優秀なワーカーが好むオフィス環境
自分が好む環境で働くことができるとワーカーは成長することができるはずです。
では、実際に成長し、優秀とされるワーカーはどのような環境を好むのでしょうか。
優秀なワーカーを選定し、調査しました。
POINT:
- 優秀な人が好む自席周りの特徴は「余裕がある」「開放感がある」「一緒の仕事をする人のそばにいる」「整頓されている」など。
- 優秀な人が好む家具の特徴は「多用途」で「移動可能」であること。
- 優秀な人は仕事をする時間や手順を自分で決められることを好み、さらに意思決定を自分で行えることを望んでいる。
この記事では『KNOWLEDGE - WORK DESIGN REVIEW 2024 FEATURE #04 優秀なワーカーが好むオフィス環境』より一部内容を抜粋してご紹介します。
優秀なワーカーの基準とは?
まず、優秀なワーカーの基準について検討しました。従業員100名以上の企業に勤める正社員を対象にアンケート調査を実施し、仕事のパフォーマンスにつながるとされる特徴の相関関係を分析しました。
その結果を踏まえ、今回は優秀さの基準として特に「ジョブクラフティング(※1)」に注目し、そうした行動を取るワーカーは、オフィス環境に何を求めているのかを分析しました。この記事では対象となったワーカーのうち管理職を除いた一般職の結果をご紹介します。
※1 ジョブクラフティング:仕事のやりがいや満足度を高めるために、ワーカーが自ら工夫しながら働く行動
優秀なワーカーが好むオフィス空間の特徴
一般職1201人を「優秀さ高群」と「優秀さ低群」に分け、自分が好む自席周りの環境を尋ねました。差が現れたのは空間の「余裕」「開放感」「周囲の人」「整頓」「素材」の各項目です。空間については高群、低群どちらも余裕があることを好む傾向がありましたが、高群の方がその傾向が強く現れています。開放感についても双方ともに開放感があることを好みますが、高群の方がその傾向が強くなっています。他にも高群は自然素材が多く使われていること、周囲に一緒に働く人がいること、奇麗に片付いていることをより好む傾向が現れています。
優秀なワーカーが好む家具や運用
同様に、優秀な一般職が好む座席運用や家具についても調べました。優秀さの高群と低群で差が現れたのは「チームの場所」「家具の用途」「家具の可動性」「チームで集まって働く」の各項目です。「チームで集まって働く」「チームの場所」についての項目の傾向から高群の方がよりチームで集まって働くことを好む傾向があると考えられます。
家具の用途や可動性については高群の方が用途が多様であることを好む傾向があり、さらに家具が動かせることを好むことがわかりました。自分(たち)の効率や働きやすさに応じ、いろいろなことに使えたり、移動してさまざまな場所で使えるという機能を家具に求めていると考えられます。
優秀なワーカーほど裁量や権限を求める?
最後に物理的な環境ではなく、働く際に自分に与えられる裁量や権限についても尋ねました。その結果、「裁量」「決定権」のどちらについても高群と低群の間に有意な差が現れました。高群の方が時間や仕事の手順を自ら決定できる裁量があることを望み、意思決定権についても自分が持つことを好むことがわかります。
前述のように空間については余裕があり、開放感があることを好むことから自由度が高いことを良しとする傾向があり、家具についても、多機能で動かせるものを好んでいました。同様に裁量や権限についても自分で掌握し、判断したいという自由度を求める傾向にあるのではないかと思われます。
優秀なワーカーが好む環境は
空間・裁量共に自由度の高さがポイント
今回の研究ではワーカーを優秀さ高群と低群に分け、空間の特徴や座席運用、権限の有無などについて、優秀な人がより好む傾向をつかむことができました。
本研究の結果はあっと驚くような新発見があるものではありませんでしたが、余裕や開放感、整理整頓、多機能で可動性の高い家具、そして自分に与えられる裁量や権限といった項目を総合的に考えると、「自由度が高く、その人目線で判断することが許されている」ということが重視されるのではないでしょうか。オフィス空間やツール、制度を通してそうした環境を整えていくことで優秀なワーカーがより「いい会社だ」「いいオフィスだ」と感じられるようになるはずです。
Research: 池田晃一、森田舞
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次(Beach)、堀内宏臣(Kanaalstraat Studio)
Illustration (Top Banner): Hi there
Production: Plus81