働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGEグループアドレスの効果とは
ハイブリッドワークの普及に伴い、フリーアドレスやグループごとにエリアを決めて座るグループアドレスを検討する企業が増えてきています。フリーアドレスよりもグループとしてのまとまりを意識した運用であるグループアドレスにはどのような効果があるのか、調査しました。
POINT:
- グループアドレスは、部門を超えた業務に関する会話が増える。
- グループアドレスは、アイディアの提供など他の部署との連携が生まれやすい。
- グループアドレスは、仕事に対する安心や安定性につながっていく。
グループアドレスには
どんな効果がある?
ハイブリッドワークが普及して必ずしも全員が出社することが前提ではなくなり、フリーアドレスなどオフィスに固定席を設けない座席運用に注目が集まっています。また、部門ごとにあてがわれたエリアの中で座席を選択する「グループアドレス」の存在も議論されるようになりました。
フリーアドレスの効果については、以前から「オフィスの床面積を少なくできる」などコスト面でのメリットや、「コミュニケーションが活性化する」といった効果が明らかになっています。しかし、グループアドレスの効果については、あまり検証されてきませんでした。
そこで、固定席、フリーアドレス、グループアドレスで働いているワーカーを対象にアンケート調査を行い、グループアドレスの効果について検証しました。
グループアドレスの
メリットとは?
前述のように、フリーアドレスを導入すると「部門を超えたコミュニケーションが活性化する」と旧来から言われてきました。今回の調査では、フリーアドレスよりもグループアドレスの方がさらに、部門を超えたコミュニケーションが起こりやすくなることが確認できました。
特に活性化していたのが、業務に関するコミュニケーションでした。部門を超えた業務に関する会話の頻度が高まることから、アイディアの提供や業務上の相談をしやすくなるなど、具体的な支援が生まれやすいようです。
グループアドレスは
固定席の長所も併せ持つ?
「このオフィスは自分たちのエリアだ」というオーナーシップの感覚については、固定席と比較してグループアドレスでは低下はするものの、フリーアドレスほどの落ち込みにはなりませんでした。
では、どのような人がグループアドレスに向いているのでしょうか。仕事に関する価値観との関係を見てみると、グループアドレスで働いている集団は固定席で働く人たちと同様に、仕事に対して「自律性」よりも「安定性」を求めることがわかっています。
毎日同じ席に座らなければいけない固定席、毎日違う席に座らなければいけないフリーアドレスと比較して、自分たちの領域を確保したうえでその中で席が選べるのがグループアドレスです。他の2つの座席運用と比較した場合、ゆるやかなつながりを感じられることがグループアドレスの大きな特長とも言えます。こうした特長が集団としての安心や安定につながり、仕事に対する価値観を形成していくのではないかと考えられます。
また、このほかにも同じアンケートの結果から、固定席やグループアドレスなど座席運用方式が異なっても、生産性や生産的行為には影響が現れないこともわかっています。
グループアドレスを
選択肢に加えてみよう
フリーアドレスに比べて、グループアドレスは部門を超えた会話を増やし、協力の要請に良い影響を与えることが確認されました。また、自分のオフィスだという感覚も強く持つ効果もあるようです。今後はこうしたメリットや特⻑をふまえたうえで、「固定席」か「フリーアドレス」かという二択だけでなく、「グループアドレス」の導入も検討してみてはいかがでしょうか。
Research: 池田晃一
Edit: 吉田彩乃
Illustration: 井上元太
Production: Plus81