働き方・働く場の研究と視点

KNOWLEDGE

オフィスにチームの拠点をつくる

2023.2.20
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コロナ禍を契機にハイブリッドワークが浸透し、チームメンバーの状況が共有しにくくなりました。そんな中で、チームで集まることができる場所が必要だとするならば、オフィスにはどんな設えが求められているのか調査を行いました。



POINT:

  •  多くのワーカーがチームの拠点としたい場所に「にぎやかな雰囲気の中で議論できること」を求めている
  • ワーカーがチームの拠点にしたい場所は、議論か相談かの「コミュニケーションの種類」と、にぎやかか静かかといった「雰囲気」によって分類できる


働き方の違いとワーカーへの影響

ハイブリッドワークが普及し、出社とリモートそれぞれの良さを感じるワーカーも多いでしょう。リモートで働いたことのあるワーカーを対象に、働き方の違いによって生産性やモチベーションに、どのような影響があると思うかを聞きました(下図)。その結果、多くの項目で「対面とリモートのハイブリッドで働く方が良い」と回答する人が半数以上いましたが、「チームのメンバーとのコミュニケーション」は4割以上のワーカーが「全員がオフィスに出社して働く方が良い」と回答していて、この結果からチームで行う仕事をサポートする空間がオフィスには必要だと考えられます。


ワーカーがチームの拠点に求めるものとは?チームの拠点の4つの特徴

ワーカーはチームで働くとき、どのような場所を拠点にしたいと思うのでしょうか。チームで1年間程度一緒に仕事をするという想定で、チームの拠点にしたいと思う場所について、写真を用いたインタビュー調査によって、ワーカーがチームの拠点に求めている要素を導き出しました。

調査の結果から得た「チームの拠点に求めている要素」をマッピングして整理したものが下図です。意見をぶつけ合う議論か相手の話を傾聴する相談かといったコミュニケーションの種類と、にぎやかか静かかといった雰囲気を示す2軸で、要素を1~4群に分けて説明できることがわかりました。また、1~4群に分類していく過程で、その6割近くが1群に属する結果になりました。


このことから、多くのワーカーがチームの拠点にしたいと思う場所は、「にぎやかな雰囲気の中で議論できる感じ」であると考えられます。そのほかにも、「静かな雰囲気の中で議論できる感じ」「静かな雰囲気の中でじっくり相談できる感じ」「にぎやかな雰囲気の中でじっくり相談できる感じ」という3つの群も現れました。それでは、各群の拠点をオフィスにつくる上で必要な要素を見ていきましょう。


チームの拠点にしたい場所の4つのモデル

1群/ にぎやかな雰囲気の中で議論できる感じ

1群の特徴は、チームの一体感や、チームに誇りをもてそうな設えを重視していることです。その背景には、チーム内でコミュニケーションをとりながらプロジェクトを前に進められそう、という期待があるようです。例として、「棚があると囲われ感があって、背中が守られている感じがして、チームの拠点という感じがするので仕事が進めやすくなる」「半個室だと、チームだという感がし、色々な話がしやすく、一緒に仕事をする気持ちが持て、プロジェクトを進めやすい」という意見があり、「半個室」「遮蔽物が無い」「棚」「個人・チームの作業スペース」といった物理的な要素により実現できると考えられます。回答者があげた要素の半数以上が1群に含まれており、多くの人が求めるチームの拠点の特徴といえそうです。


2
群/ 静かな雰囲気の中で議論できる感じ

2群の特徴は、開放的で、気分転換をしながら考えを整理できる居心地の良い空間を重視していることです。その背景には、物事に柔軟に対応でき、円滑で効率的に作業がはかどるという期待があるようです。動かせる家具や、モニターや間仕切りにもなるホワイトボードといった共有・多機能ツール、座りやすいイス、といった物理的な要素により、その期待に応える環境を実現できると考えられます。


3
群/ 静かな雰囲気の中でじっくり相談できる感じ

3群の特徴は、リラックスした感じや厳かな雰囲気を重視していることです。他者を理解し冷静な判断ができること、チームのメンバーと本音で話をし、意見をまとめることへの期待があるようです。自然を取り入れ、屋外の雰囲気を感じられることで、リラックスができる環境になると考えられます。このような環境は、執務とは異なる姿勢・相手との距離になる、ソファや畳といった物理的な要素により実現できると考えられます。


4
群/ にぎやかな雰囲気の中でじっくり相談できる感じ

4群の特徴は、チームのメンバーと温かい雰囲気で過ごすことができ、落ち着いた気持ちで雑談や傾聴ができることを重視していることです。そこには、メンバー同士がよい関係になれることへの期待があるようです。料理や食事が一緒にできる設えや、屋外で焚火をするなど非日常的でワクワクできる体験を共有したり、集うことによって生まれる温かい雰囲気で、メンバーとよい関係を築いていけると考えられます。


考察
チームの特徴にあった拠り所が
ハイブリッドで働く時代に求められる

今回の調査では、チームの拠点になる場所について、その特徴と具体的な空間の要件を明らかにしました。

チームの拠点にしたい場所は、議論か相談かの「コミュニケーションの種類」と、にぎやかか静かかといった「雰囲気」によって特徴づけられることがわかりました。半数以上のワーカーがチームの拠点としたい場所に「にぎやかな雰囲気の中で議論できること」を求めているようです。これよりチームで集まる拠点を設計する際の重要なヒントが得られたと考えられます。

一方で、「静かな雰囲気でじっくり相談できる」場所をチームの拠点に求める人も一定数いることが示されました。この場合、議論・意見交換とはコミュニケーションの取り方が異なります。ワーカーから「傾聴できる」「本音で話ができる」というキーワードが出てきたように、積極性や活発的とは対照的な活動を行う場として考えているようです。「落ち着いていられる」「リラックスした感じ」「居心地のよい感じ」というキーワードも得られ、オフィスに対して「静かな雰囲気」を求めるチームもあることがわかりました。

もしあなたのチーム内でコミュニケーションがとりにくい状況にある場合は、この結果を参考にチームの拠点をつくってみてはいかがでしょう。取り組むプロジェクトの性質やメンバー構成によって、チームが求める拠点の姿は異なってくるはずです「にぎやかな雰囲気で議論できる」場所をメインにしながらチームの多様性に対応し、チームを活かす空間づくりをしていく必要があるのではないでしょうか。

Research: 花田愛、秋永凌、浅田晴之(オカムラ)
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次、藤井花(Beach)
Illustration (Top Banner): 藤田翔
Production: Plus81 inc.