働き方・働く場の研究と視点

KNOWLEDGE

時代の転換点を跳躍のきっかけに

2022.10. 7
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オカムラは東北大学と「働き方」について共同研究を続けてきました。
直近では、テレワークに代表される柔軟な働き方が普及する中、
居住地に対する価値観の変化や
生活を支える自治体のサービスの変化に着目した研究を行っています。
今回発行した『Alternative Office Book 05 "JUMP"』*は、
そうした変化を自らの力に変えるために新しい時代に思い切って飛び込もう
というコンセプトで制作したものになります。
*『Alternative Office Book』は、研究した成果をインタビューやケーススタディも交えてまとめた冊子です。


リモートが普及することで
居住地は変わるか?

まず、研究グループが着目したのが、私たちの暮らしの中心である居住地に関する価値観の変化です。
産業革命以後、職場に出勤する職住分離が進みました。また、通勤圏内だけでなく、通学圏内に住むということも一般的でした。しかし、リモートで働けるようになり、学べるようになると、職場や学校の近くに住む必要はなくなります。
コロナ禍により、リモートで様々な活動ができるようになった影響は居住地を選択する際の価値観に変化を与えているのでしょうか。経済地理学者の加藤和暢氏が生み出した「空間組織化」の理論をベースにして、その分析を行いました。
空間組織化論では、人は生活圏を「所得機会」「消費機会」「共同生活機会」の3つのバランスから決定します。研究グループでは、よりミクロに解釈し、個人が居住地を決定する際にも仕事や所得が得られる「所得機会」、買い物やレジャーを楽しむ「消費機会」、土地が持つ歴史や景観、そして交通や治安などの「共同生活機会」の影響を受けると考え、その点に注目しながら調査をしました。


公共サービスが変わるための
原動力になる空間とは?

次に、着目したのが自治体庁舎における市民交流空間です。近年、自治体庁舎におけるサービスの大きな転換が起こっています。行政の電子化が進み、申請や手続きなどを庁舎まで行かずにオンラインで完結できるシステムが導入されつつあります。窓口業務が減る中で、住民に対してどのようなサービスを提供していくのか、その課題は行政側だけでなく、住民とも一緒に考えていく必要があるのではないでしょうか。
また、研究グループは「サービスが変わる=サービスのための空間も変わる」と仮定し、住民との交流を庁舎計画の中心に据えた自治体を対象に、プロポーザル資料の分析、現地調査、ヒアリングを行い、実際に市民交流が起こっているのかを明らかにしました。


本書の構成

本書は、「暮らしに浸透するテレワーク」と「開かれた庁舎を考える」の2つのテーマから構成しています。実際にリモートワークを実践している方へのインタビューやコラムなども収録し、足掛かりとなるような内容となっています。

【目次】
序論 令和OS に向けて跳べ
第1部 暮らしに浸透するテレワーク
1 人生の年表を楽しくする
漫画家 靴下ぬぎ子先生インタビュー
2 テレワークによる価値観変化への議論と分析
暮らしの組み立て方 - 住まいと仕事、そして -
価値観変化の分析
3 働く場所と生業
鳴子温泉もりたびの会
加賀道さん・加賀浩嗣さん・齋藤理さんインタビュー
第2部 開かれた庁舎を考える
1 自治体庁舎の市民交流空間
導入:自治体庁舎が開かれつつある
市民交流空間に求められている特徴とは - 技術提案書の分析を通して -
7つの自治体庁舎に関するフィールドワーク
自治体庁舎における市民交流空間に関する分析
総括:市民交流空間を作った先の世界にジャンプする
2 人が集まる場としての庁舎建築の歴史的再考
総論 跳んだその先へ
Alternative Office Book 05 "JUMP"
著者:東北大学大学院 都市・建築学専攻 本江正茂研究室、オカムラ ワークデザイン研究所
発行日:2022年7月31日
電子書籍:160ページ

本書は下記リンクからダウンロードいただけます。


【バックナンバー紹介】

Alternative Office Book 01 "SESSION"
議論を起こす、活性化させるための工夫、事例を集めた一冊
Alternative Office Book 02 "SWITCH"
場所、時間、仕事を切り替えて働くための工夫、事例を集めた一冊
Alternative Office Book 03 "PAUSE"
無理をせずに休む、「働く」の合間についての工夫、事例を集めた一冊
Alternative Office Book 04 "TOUCH"
接触することが難しい状況においてつながりながら働くヒント、事例を集めた一冊
1冊目〜3冊目は、冊子のみの発行となり現在在庫切れとなっております。
4冊目の『TOUCH』につきましては、こちらからダウンロード可能です。

Research: 池田晃一、秋永凌(オカムラ)、東北大学大学院 工学研究科都市建築学専攻 本江正茂研究室
Illustration & Infographic: 佐々木央(図1)、伊藤雄飛(図2)
Edit & Production: Plus81 inc.