働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGEはたらく距離感〈前編〉
このコロナ禍で、オフィスとの距離、
一緒に仕事をするメンバーとの距離、仕事との距離といった
働き方に関する距離の取り方はますます多様になってきました。
働き方の実態やこれからの要望についてワーカーの意識を探っていきます。
POINT:
・今後は、出社とリモートワークを組み合わせた働き方を望む人が7割以上
・オフィスで捗る仕事、リモートで捗る仕事は異なる傾向に
・「グループアドレス」「フリーアドレス」の運用を今後希望する人の割合は、現状よりも増加
これからのオフィスとの距離感:
理想の出社率
まずは、このコロナ禍を経験してこれから望む「オフィスとの距離感」を見ていきます。
今後の理想的な出社率を聞いたところ、出社率を1割~9割とする、出社とリモートワークを組み合わせた働き方を望む人が7割以上いることがわかりました。
さらに現状の在宅勤務の頻度別にみると、在宅勤務の頻度が高い人ほど、今後望む出社率は5割以下と回答する人が多い傾向にありました。しかし、現状在宅勤務を週5日以上している人でも、今後フルリモートを理想とする人は2割程度しかいませんでした(図1)。
長引くコロナ禍でオフィスのあり方が問われていますが、多くのワーカーは、これからも一定程度の頻度でオフィスに行きたいと考えているようです。
これからのオフィスとの距離感:
オフィスで捗る仕事、リモートで捗る仕事
多くの回答者が、オフィスとリモートワークを組み合わせた働き方を望んでいることがわかりましたが、作業の内容に応じてどのように働く場所をとらえているのでしょうか。仕事の内容ごとに、オフィスと在宅勤務を含むリモートワークのどちらの方がより作業効率が上がるかを聞きました。
「個人作業」については、約4割の人がリモートの方が捗ると回答していました。「ちょっとした相談」、「偶然発生する雑談」については5割弱の人がオフィスに出社したほうが捗ると回答しています(図2)。この結果から、一律に出社率を設定するのではなく、一人ひとりの仕事の内容に応じて、働く場所を上手に使い分けられるような配慮が必要であることがわかります。
これからのオフィスとの距離感:
座席の運用に望むこと
「個人作業」は、「リモートの方が捗る」というという回答が4割程ありましたが、そうした状況の中で、オフィスをどのように変えていけばよいのでしょうか。コロナ禍前と現状の座席の運用、今後望むオフィスの座席の運用を聞きました。
「固定席」で運用している人の割合はコロナ禍により減少し、今後固定席の運用を希望する人は半数以下となりました(図3)。一方で、今後「グループアドレス*」「フリーアドレス*」の運用を希望する人の割合は、コロナ禍前や現状運用している人の割合と比べて増えています。コロナ禍で働く場所がオフィス以外にも広がったことで、ワーカーはオフィス内であっても自由に席を選びたいと考えているのかもしれません。
*グループアドレス
チームやグループ、部署ごとに働くエリアが決まっており、社員は自分の所属チーム・グループに割りあてられた座席から1つを選ぶ。
*フリーアドレス
社員一人ひとりが固定した席を持たず、空いている席やオープンスペースを自由に使う。
これからのオフィスとの距離感:
オフィスの機能空間別の重要度
座席の運用以外でも、オフィスに対する意識としてコロナ禍後を想定したオフィスの「機能空間別の重要度」を聞いてみました。
「重要度は変化しない」との回答が多い結果となりましたが、その中でも特に重要度が高まると回答のあった空間として「オンライン会議のための空間」、「集中作業のための空間」、「社員同士の交流空間」が上位にあがりました(図4)。出社するからこそ、オンライン会議や集中作業を行いやすい環境が重要視されたり、ちょっとした相談や偶然発生する雑談がしやすい、対面ならではの交流ができる空間が求められているようです。
図3で紹介したように、今後は固定席での運用を希望する人の割合は減っており、同様に図4でも「個人執務席」については「重要ではなくなる」と回答した人の割合が他の項目と比べて多くなっています。
*オフィスに行く目的は何なのか、ワーカーが行きたいと思うオフィスの特徴について、「行きたくなるオフィス」に掲載しています。
後編では、「メンバーとの距離感」「組織との距離感」「仕事との距離感」に関するデータをご紹介しています。
この記事の掲載誌「KNOWLEDGE - WORK DESIGN REVIEW 2021」はこちらからダウンロードいただけます。(P4-9をご覧ください)
Research: 嶺野あゆみ、池田晃一、森田舞(オカムラ)
Edit: 大野菜々子
Illustration & Infographic: 浜名信次、藤井花(Beach)
Illustration (Top Banner): 米村知倫
Production: Plus81 inc.