働き方・働く場の研究と視点

KNOWLEDGE

情報共有を進めるための場づくり

2020.12.16
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リモートワークが広がり、一層注目されるオフィスでの「情報共有」。
組織全体のパフォーマンスを高めるために欠くことのできない活動ですが、
どのような方法で行われているのでしょうか。
チーム内外での関係性、交わされる情報の内容、共有が行われる場所など、
いくつかの視点からその方法と効果を測り、
オフィスでの情報共有の今とこれからを探っていきます。


情報共有はなぜ大切?

ワーカーにとって「情報共有」はどれほど重要視されているのでしょう?名古屋市立大学、早稲田大学と共同でWEB アンケート調査をしたところ、図1-1のように半数以上のワーカーが「それぞれの仕事内容をメンバーと自分双方で知っておくべき」と回答していました。その理由として多く見られたのが、「自分の仕事をうまく進められる」「まわりの人を助ける機会が増える」でした(図1-2)。
一方で、実際のオフィスでの情報共有の実態は、図1-3のような結果になりました。情報の見逃しなどが発生した経験がある人が半数以上おり、情報共有がオフィスに求められていても、円滑にできていない状況にあることが確認できました。
しかし、仕事に必要な情報が共有できていると思うと回答した人もいました。ここで注目されるのが、気軽な相談や雑談をすることができるメンバーの人数です。その人数が「10-15人くらい」と回答したグループは、仕事に必要な情報が共有できていると思う人の割合が比較的高くなっています。情報共有が求められる環境下では「気軽に話せるメンバーが一定程度いる」ことがポイントといえます。


情報共有を促進するために、
大切なこと

気軽に話せる状況にある関係では、どのようなコミュニケーションが行われているのでしょうか。今回の調査では、オカムラのオフィスをフィールドに、「コミュニケーションの達成度」に着目しました。
ここでは、同僚との情報共有の状態を「相手との関係性の深さ」×「情報の種類」で6つに分類しました。これらの情報共有の状態が相互にどの程度関係しているのか、「自部門」「他部門」の相手に対して何割ぐらいの人と情報共有ができているかをもとに分析を進めました。


円滑なコミュニケーションをつくる、
ふたつの関係性

その結果を示したのは上図ですが、相手が自部門でも他部門でも「私的な雑談ができる」「仕事の情報を知っている」関係にあると、仕事にかかわる雑談や相談がしやすくなっていることは共通しています。
情報共有の促進に大切なことは、まずこの2つの情報共有の状態を達成していくことであるといえるでしょう。
さらに、他部門相手の場合は、相手の「私的な情報を知っている」ことが、欠かせないことも明らかになっています。

情報共有を促進するために、
わたしたちが取り組んでいること

相手の仕事についての情報のやりとりは、「私的な情報を知っている」「私的な雑談ができる」「仕事に関する情報を知っている」ことと関係が深いことがわかりました。では、情報共有をスムーズに進めるためにオフィスではどんな工夫ができるのでしょうか。ここではオカムラのオフィスで、実際に行われている、情報共有を促進するための運用の工夫や、オフィスの空間に紐づいた会話などのさまざまな取り組みを対象に、その有効性を4つのパターンに分けて調べてみました。
図4は運用の工夫や会話が情報共有の相手別・関係性の深さ別に役立ったと感じる度合いを調査した結果です。
部門を問わず私的な情報を知ることに有効なのは、朝礼など全員の前で自己紹介をすることや昼食時の会話ですが、他部門の人との私的な情報を知ったり雑談や相談ができるようになるには、業務外イベントや部活動が役立っていることがわかります。

また、関係性の深さに関わらず、自部門内の情報共有にきわめて有効なのは「部室」の存在でした。これは調査対象としたオフィス特有の空間で、部門ごとに与えられた専門スペース「チームの拠り所」のことです。その中では部門のメンバーが、仕事、私的両方の話を気兼ねなくできるので、高い評価を得たと考えられます。
また、自部門・他部門、どの情報共有においても評価されている、オフィスの運用・環境改善のための「自治会」や、各部門で取り組んでいる仕事の内容を共有する「勉強会」の有効性は確かなものだといえます。


オフィスにおける、
情報共有のきっかけ

ここまでに紹介した運用の工夫やオフィス空間での会話について従業員からは、情報共有に役立ったとの声が届いています。


「情報共有」のまとめ

自分の仕事をうまく進めるためにも、仲間をフォローするためにも、職場の中での情報共有は欠かせないもの。そしてそれを実現するには日頃から良好な人間関係を築いておく必要があります。そうしたことがしにくくなったコロナ禍による在宅勤務中、仲間との雑談やちょっとした仕事の話をすることの重要性に気づいた方が数多くいたようです。オカムラではオンラインで部室をつなぐという取り組みなどもはじめました。気軽に情報交換できる環境、そしてそれらの場をより有効的に機能させる運用方法や仕掛け、雰囲気づくりがニューノーマルのオフィスそして働き方には求められます。

Research: 鯨井康志、上西基弘(オカムラ)
Edit: 大野菜々子
Illustration & Infographic: 浜名信次(Beach)
Production: Plus81 inc.