働き方・働く場の研究と視点

KNOWLEDGE

柔軟に働ける時代のチームの拠り所

2020.1.15
  • Collaboration
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個々のワーカーにとっての働きやすさや柔軟な働き方を追求していくと、
テレワークなどのリモートワークで、
いつでもどこでも働くことができるようになります。
離れて働くメンバーを顔の見える「仲間」と感じられるようにするにはどうしたらいいか。
オカムラでは、活気を生み出し、居心地の良さも感じさせてくれる
チームの拠り所となるスペースをつくることを提案しています。


チームの一体感を高める
スペースの考え方

チームの拠り所となる「BUSHITSU(部室)」は、チーム力の強化に効果的です。

オフィス内外の場所を自由に選択して働くことができるようになると、個人のパフォーマンスは向上すると考えられています。一方で気になるのは個人では完結しない仕事のパフォーマンスも上がるかどうか。近年、社内SNS のようなチームコミュニケーションツールも登場し、情報共有やお互いの状態を知ることができるようになってきました。そのような中でも、微妙なニュアンスを伝えたり、インフォーマルなコミュニケーションをとったりするためには、チームメンバーが気軽に立ち寄り、交流できるような空間があると効果的です。オカムラは、チームの拠り所となる空間を「BUSHITSU(部室)」と名づけ、チームの特性、組織のルールと設えについての知見を蓄積してきました。ここではそうした取り組みの成果をご紹介します。

チームのパフォーマンスについて、ワーカーはどのような意識を持っているのでしょうか。調査の結果(図2)、働き方改革を進めていく中で、時間の有効活用と合わせてチーム力の強化が必要だと考えている人が多いことがわかりました。それをサポートするため一つのアイデアとして提案しているのが、「BUSHITSU」です。


部室の運用と検証

さまざまな部室を自分たちのオフィスにつくり、それぞれの部門が自ら運用しています。

オカムラでは実際に部室を自分たちのオフィスの中につくり、運用しています。使用する部門の要望に合わせて、間仕切りで仕切られた個室や、ベンチテーブルなど、さまざまな設えの部室を設けました。また、室内のレイアウトや運用方法の決定は各部門に委ね、それぞれの部門が自ら運用しています。例えば、納入事例や調査結果など部門の成果物を壁面に掲示したり、チーム間のコミュニケーションを図るため、係単位で曜日・時間を決めて作業をしたりしています。

さらに、実際に個室タイプの部室を使っている部門に属している社員に使い方や環境の評価について問う調査を行いました(図3)。まず、部室を使用する目的ですが、「部下、上司への報告作業」や「部門内の打ち合わせ」「個人の集中作業」などを目的として使用されていることがわかりました。また、部室がオフィスにあるメリットとして、「打ち合わせが効率的に行える」「チームの一体感が高まる」と評価する入居者が7割以上いることがわかりました。部室の活用は、仕事の効率化やチームの一体感の醸成にもつながると言えるのではないでしょうか。
アンケートでは具体的に、部室に必要な要素についても調査をしました。部室の大きさについては「同時に入れる人数が5~9人」、設えについては「温かみがあるリビングのような雰囲気」で、「PC 接続ができるモニター」「情報を共有するホワイトボード」「ミーティングテーブル」などがあると良い、との意見があがりました。利用ルールについては、「部門ごとに利用ルールを決められる」と良い、との意見があがりました。

部室のつくり方

チームの拠り所には6つの基本となるタイプがあり、「環境の開閉度合い」が重要になります。

このような実験・研究から、オカムラでは6種類のチームの拠り所を導き出しました。
重要となるのは「環境の開閉度合い」です。開閉度は仕切りのないオープン、個室ではないが適度に仕切りのあるセミクローズ、壁があり個室となるクローズの3種類に分けることができます。また、部室の使い方・目的がインフォーマルなコミュニケーションを中心とするか、個人でもチームでも作業・ディスカッションを集中して行うことを中心とするかでスペースのつくり方が変わってきます。
チームによってありたい姿はさまざまですので、部室もこれらの6つのタイプだけにとどまりません。基本になるこれらのタイプを参考にしつつ、自分たちのチームに最適な部室を見つけていただきたいと思います。

領域の仕切りがもっともゆるく、周囲から気軽にアプローチできる部室です。ラグを敷いたり、大きなテーブルや、象徴的なキャビネットを置いたりと気軽に設置することが可能です。ピクニック気分でワイワイとコミュニケーションをとることができます。

人の出入りが多く、周囲からも意見をもらったり、議論をしたりすることが多いチームは会議室を周囲に対してひらいたような部室が最適です。ホワイトボードや大型モニターで領域感を出すと、仕事の雰囲気が高まります。

プロジェクトというよりは部門ごとに設けられることが多いタイプの部室です。部門ごとの書類、機材をしまう収納がおかれたり、壁面にメンバーのスケジュールやプロフィールがはられたりと、個性がにじみ出てくる雰囲気です。

クイックに手を動かして意見をやり取りするために最適化された部室です。必要に応じてホワイトボードやモニターを増やし、チームがもっている情報を一覧できるようにします。プロトタイピングや検証のための文具類を収めたツールワゴンも有効です。

大学のサークル、中高の部活動の部室に近い、部門占有スペースとして設けられます。自分たちのセンスを磨くために、メンバー各々が興味があるものをもち込んで飾り付けるなど、オフィスの中に家をつくるように、安心と愛着を生み出すための強力な仕掛けになります。

全員の力をフル投入して効率良く課題を解決していくためのプロジェクトルームのような部室です。個人作業とチーム作業の往復が素早くでき、自分たちが置かれている最新の状況を共有するために多くの情報機器やホワイトボードで構成されています。


「部室」のまとめ

部室は、目指すチームのあり方によって「オープン/セミクローズ/クローズ」、「コミュニケーション重視/ 作業効率重視」で特徴づけられる6つのタイプに分類できます。一人ひとりの働き方が柔軟になる中にあってこそ、チーム力を高めるうえで、部室のようにメンバーが直接顔をつき合わせて働く場に大きな価値があると考えられます。

Research: 森田舞、池田晃一(オカムラ)
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次(Beach)
Production: Plus81 inc.