2024.06.28 2024.06.28

株式会社東海理化 様 若手社員が描く、会社の「目指すべき未来の姿」 ――挑戦と理想を追求するためのパイロットオフィス東海理化「クロス_base」

株式会社東海理化 様

運転する人の意志をクルマに快適に伝えるヒューマン・インターフェイス部品をはじめ、クルマを守るセキュリティ部品などの車載製品を製造する株式会社東海理化。中期経営計画に向けて社員の働き方に変革が求められることから、若手・中堅社員によるワークショップを実施しました。その後、既存オフィスの一区画で、プロトタイプとしてのパイロットオフィス「クロス_base(ベース)」を立ち上げ、2023年4月から運用しています。

創立76年を迎える東海理化は、車載製品のサプライヤーとしての働き掛けに留まらず、自動車業界の変革期に新たな提案を仕掛ける企業として変化を続けています。働き方改革活動の発足にともない、旧態依然のオフィスではなく、よりクリエイティブな発想を生み出す社内環境を目指すことになりました。
「未来を感じる東海理化に」という二之夕社長の意向のもと、若手・中堅社員による約50人のメンバーでオカムラ主催のワークショップを実施。メンバーが主体的に考えて東海理化の「ありたい姿」を描きました。
その「ありたい姿」を具現化する第1段階として、オフィスの一部のレイアウトを試験的に変更したパイロットオフィス「クロス_base」を構築。社内の対象エリア約540㎡が島型対向式の固定席からフリーアドレスの動的空間へと生まれ変わりました。



部署の垣根を越えたコミュニケーション、新商品開発に生かすクリエイティビティの促進といった狙いを設けたクロス_baseは、どんな効果を生み出しているのか? また、パイロットオフィスで新しいはたらき方を推進するメリットとは? 今回は、プロジェクトの中心メンバーである総務部の早川博人さんとデザイン部の伊藤嘉苗さんにお話を伺いました。

早川博人さん(左)、伊藤嘉苗さん(右)

Interview

壁を越えたコミュニケーションが生まれるパイロットオフィスを構築

―東海理化でパイロットオフィスを立ち上げることになったきっかけを教えてください。

株式会社東海理化 様

早川さん:2021年末、社内で「働く場」を再考する活動が始まりました。 既存の延長線上ではなく、未来を感じる会社を目指すため、「未来を担う若手・中堅社員に技術棟の機能配置検討をを任せたい」という社長の意向から、技術系の若手・中堅社員から約50人が立候補し、集まりました。価値創造、業務のスピードアップを実現するオフィスを目指し、2022年6月から12月までオカムラさんのワークショップに参加。その中で、会社の「ありたい姿」を言語化しています。さらに、導き出した7つのキーワードのイメージを取り入れた理想的なオフィスのゾーニングを行いました。

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「ありたい姿」のキーワードの1つ「互いの知恵・ナレッジ・アイデアが活かされ、さらなる創造性発揮につながっている」が叶う大人数のミーティングエリア。カジュアルで可動性の高い什器が取り入れられ、柔軟な思考を掻き立てられる

―まずはパイロットオフィスの導入を決めたのはなぜですか?

株式会社東海理化 様

早川さん:ありたい姿や製品開発の流れ、技術棟のゾーニングといったオフィスの理想像を描いたところで、ワークショップは終了。私たちは、描いた理想像が正しいものなのかを検証したいと考えました。そこで「会社の一区画を使ったパイロットオフィスをつくり、試験的に運用しながら社員に少しずつ馴染んでもらうのが良いのではないか」という発想に至ったんです。このアイデアを上層部に直談判し、パイロットオフィス企画プロジェクトが立ち上がりました。それと同時にワークショップを取りまとめていたリーダーが「WX(Work Transformation)」という有志チームを結成し、本格的に動き出しました。

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パイロットオフィスの推進チーム「WX」のメンバー。右上から時計回りに、早川博人さん、伊藤嘉苗さん、小島えり子さん、土田健さん

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伊藤さん:まずは社内で場所を探すところから始めました。各所に掛け合い、空いているスペースを拡張して5階の一部のエリアをパイロットオフィスとして展開することになりました。社員が集って交わる拠点として「クロス_base」と名付けました。

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クロス_baseのイメージパース
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執務用のビッグテーブルには、さまざまな種類のワーキングチェアを導入し、社員に好評な席を探る施策も。テーブル中央のグリーンは、癒やされるだけでなく、目隠しの役割も果たし正面に座った人の視線が気にならない

通りすがりの会話が生まれる動きのあるオフィス 新しい関係性を育む拠点に

―元々のオフィスではどんな課題を感じていましたか?

株式会社東海理化 様

伊藤さん:昔はサプライヤーとして依頼された製品を納めるのが主な仕事でしたが、近年ではメーカーに対する積極的な提案を求められています。業務の変革が起きている中で、クリエイティブな働きができるオフィス環境が不可欠となっていました。

近年、東海理化では、車載製品の技術を活かしたさまざまなプロダクトを提案している

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伊藤さん:しかし現状のオフィス環境はそういった雰囲気が生まれにくかったんです。机が整然と並ぶ画一的なスタイルで自由度が低く、さらに一人あたりの面積が狭いため心理的安全性が保たれにくいという声もあがっていました。

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before
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打合せの様子

―クロス_baseの空間デザインは、社員の声を集めて計画したのでしょうか?

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伊藤さん:そうです。社員のウェブアンケートを実施したところ「個人で集中したい」という意見が多く、集中エリアの必要性を感じました。

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二種類の広さがある半個室の執務ブースは、周りの視線を気にせず、業務に没頭できる。数時間単位の予約制だが、常に満席の人気ぶりだ

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早川さん:一方で、上層部からは、部門ごとにフロアが分かれ、管轄ごとの壁があるような現状は、部門間を越えたコミュニケーションが生まれにくいことが問題としてあがっていました。個人業務で心理的安全性を確保できるエリアを担保しつつ、他部署とのコミュニケーションを引き起こすことを中心に考え、クロス_baseの空間をつくり出しました。

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同じプロジェクトを担う社員が業務に当たる「PJルーム」。フリーアドレスの中に、チームの拠点を設けることで、メンバーが同じ目標に向かってワンチームで働くことができる

―2023年4月からパイロットオフィスが稼働して1年が経過しました。どんな変化を感じますか?

株式会社東海理化 様

伊藤さん:社員にはそれぞれ、従来からの固定席が割り当てられていますが、「仕事をする場所」のもう一つの選択肢として、クロス_baseを利用する人が増えてきました。気分や作業の内容に合わせて活用する人もいますし、カフェエリアに立ち寄ってざっくばらんな打ち合わせを行っているチームもあります。中央通路を挟む南側と北側で雰囲気の異なるワークスペースが広がっており、画一的でない空間が楽しい気分をつくりだし、会話が生まれやすくなりました。

通路は緩やかな曲線を描いており、クロス_base全体が動きをもたらす配置で構成されている

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伊藤さん:社員のニーズから拾いあげた多様な要素を詰め込んでいます。例えば、プロジェクトチームが1カ所に集まって活発に意見を出し合うエリア、集中して作業する個室ブース、リラックスして談笑できる打合せスペースなどです。フリーアドレスにすることで、業務内容やプロジェクトに合わせてアウトプットが高まり、クリエイティブの効果が生まれていると感じます。

ローチェアを取り入れた打ち合わせスペースでは、雑談のようにリラックスした雰囲気で意見を交わしやすくなっている

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早川さん:先日、クロス_baseでWXのメンバーと相談していたときに、話したことがない他部署の社員が通りがかりにアドバイスをくれたんです。これまでの東海理化ではあまりなかった光景で、意識の変化を実感できた瞬間でした。また、なかには自発的に清掃を行ってくれる社員もいます。運用から1年が経ち、この空間に愛着を持ってくれているようでうれしいですね。

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クロス_baseの中にはカフェライクなカウンター席も。コーヒーメーカーやウォーターサーバーも完備されている

―では、クロス_baseの利用方法や運用方法も教えてください。社員のフィードバックは、どのように集めて活用していますか?

株式会社東海理化 様

早川さん:クロス_baseのホームページを作り、マップやガイドラインを掲載しました。マップで在席状況が確認できるシステムを取り入れ、センシングによって使用状況のデータを蓄積しています。また、ホームページにアンケートを設置して積極的にフィードバックが集まる仕組みもつくりました。アンケートの内容はQ&Aのアンサーとして月に一度は更新しています。

株式会社東海理化 様

クロス_baseのあちこちにセンサーが設置してあり、マップで在席状況を確認できる

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伊藤さん:「一人でこもって集中したい」というニーズが高かったので個室エリアは人気があります。誰かが専有することがないよう、「半個室の使用は半日まで」といったルールを設けました。姿勢や体格差に合わせて調整できる上下昇降デスクも人気ですね。利用状況から社員のニーズは把握できていると感じます。

体格や好む姿勢に合わせて調整でき、集中力を保てる上下昇降デスク

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―クロス_baseによって働き方の変化も生まれていますか?

株式会社東海理化 様

伊藤さん:クロス_baseが導入された棟から離れたところに「ものづくりセンター」という別の建屋があります。そこに在籍している社員がクロス_baseに出張所のような窓口を作って週に一度は常駐してくれています。今までは、試作部に対して電話やメールなど声の掛け方が限られていましたが、アイデアの相談など気軽に話せる関係性が生まれていますね。

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可動式のミニテーブルを使って、軽い打ち合わせも可能に。余白のあるレイアウトならではの使い方だ
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通りがかりで気軽に使えるように、通路に面したファミレス席が配置されている

クロス_baseから未来へ 他社との共創、イノベーションに向けたつながり

―クロス_baseを試験的に運用し、生じた課題や改善点は今後の新しいオフィスづくりに反映されます。利用者の前向きな声が多い印象ですが改善点は見えていますか?

株式会社東海理化 様

伊藤さん:オープンなスペースで打ち合わせをすることで、周りにいる社員にも業務内容や熱量を共有でき、一体感が高まるという狙いを持っていましたが、オープンすぎて機密情報の話がしづらいという懸念点が上がっています。また、クロス_baseでは物を作りながら行う打ち合わせ、手を動かす作業スペースが配置できなかったので、ものづくりを行うエリアで実証しなくてはいけないと感じます。

―性質が異なるエリアで新たなクロス_baseが生まれるかもしれませんね。最後に、今後の目標を聞かせてください。

株式会社東海理化 様

早川さん:働き方改革プロジェクトを発端とするこの活動は、はじめは一部の人たちの、小さなものにすぎませんでした。それが少しずつ周りの方に影響し、次の活動へと繋がり、幹部職も巻き込んで全社活動へと進化しています。WXメンバーの半数は、在籍していた技術系の部門から総務部へと異動して専任で取り組む決意をしました。今後は東海理化が掲げている人的資本投資の流れにも乗って、会社全体の変革や活性化に繋がるような活動にしたいです。それが他社にも影響を与えて、より良い相乗効果が生まれたらいいですね。

編集後記

若手社員が主導するパイロットオフィスの構築は、会社の未来を描く前向きな取り組みだと感じました。社員が自らの手で実現した空間は、会社への愛着と信頼を増幅させる場になっているはず。
パイロットオフィスを導入することで、多様な家具や用途の異なるワークスペースを試験的に取り入れることができ、それぞれの効果測定が可能となります。社員から使用感などのフィードバックを受けることで、よりリアルな「働きやすいオフィス」を目指していけます。新しい取り組みを行う1つの選択肢として、パイロットオフィスを検討してみるのも良いのかもしれません。

Data

企業名
株式会社東海理化
所在地
愛知県丹羽郡大口町豊田三丁目260番地
納入時期
2023年3月
オカムラのオフィスデザイン事例集

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