2022.12.05 2022.12.05

沖縄セルラー電話株式会社 様 働き方の変革を通して、顧客と社員の満足度を高めるネクストステージへ ――創業30周年を迎えた沖縄セルラーの新たな挑戦

沖縄セルラー電話株式会社 様

沖縄の総合通信会社として、「沖縄経済の発展に貢献すること」を第一に考え、地元沖縄へ愛と感謝を還元し続けている沖縄セルラー電話株式会社。創立30周年を迎えた2022年6月、ブランドメッセージを「Our Mind, Timeless Our Challenge, Timeless」に改め、これからもお客さまやパートナー企業とともに、沖縄から未来へ向かってチャレンジし続けることを宣言しました。その言葉通り都心型データセンター併設の「沖縄セルラーフォレストビル」では、コワーキングスペース「mangrove(マングローブ)」を開設し、自社での運営に挑戦しています。また、更なる成長と今後の30年を見据えて、「沖縄セルラー新働き方宣言~Challenge2.0~」を策定し、オフィスのリニューアルや人事制度の見直しを行うなど、沖縄を牽引するトップ企業であるべく進化し続けています。

沖縄県那覇市――国際通りから程近く、沖縄の主要幹線道路である国道58号線沿いに建つ白い格子状の建物、ここが沖縄セルラー電話株式会社の本社ビルです。同社は1990年に沖縄と本土の経済団体から発足した「沖縄懇話会」をきっかけに、地元に特化した総合通信会社として1991年に設立されました。以降、KDDIグループとして安定した通信インフラを提供し続けるだけでなく、近年では食や医療などの分野においても、沖縄の経済発展に貢献するためのサービスを提供しています。



Interview

本社移転から9年、沖縄セルラーの働き方は次のステージへ

本社ビルが建設されたのは2013年6月のこと。当時拠点が分散していたオフィス、コールセンター、オペレーションセンターなどの施設を集約し、「顧客満足度を高めるために、社員満足度を高めるオフィス」として、クリエイティブな働き方を推進するオフィスを構築しました。そんな本社移転から約9年。同社は創立30周年の創立記念日である2022年6月1日に、働き方を変革してもう一段上の次のステージを目指す「沖縄セルラー新働き方宣言~Challenge2.0~」を発表しました。宣言には、“社員一人ひとりがライフステージや価値観・あらゆる課題に応じて「働き方」を変革する”こと、そして沖縄を牽引するトップ企業を目指すために“新しい働き方を支援し、挑戦する風土・挑戦する人を評価する”ことが示されています。

発表に合わせて同社は新人事制度を策定し、新しい働き方を推進するためのオフィスリニューアルも行いました。今回はオフィスリニューアルに携わった沖縄セルラーご担当者様に、その背景や狙いをお伺いしました。

沖縄セルラー電話株式会社 様
オフィス中央に新設されたアジャイルエリア。集中環境とコラボレーション環境が同じ空間にありながら緩やかに区分されている。
新オフィスで目指したのは、フェイス・トゥ・フェイスによるコミュニケーションとテレワークなどの柔軟な働き方を組み合わせた、ハイブリッドな働き方を定着させること。コロナ禍において最大約9割の社員がテレワークを活用した一方で、テレワークの長期化によってコミュニケーションの不足や社員の自己成長・自己実現の低下など、潜在的な課題が見えてきました。その課題を解決するため、改めてオフィス(働く場)の定義を行い、全席フリーアドレス化や集中スペースの導入を実施しました。
沖縄セルラー電話株式会社 様
沖縄セルラー電話株式会社 様

目指したのは個人の集中環境と仲間同士のつながりの両立

新オフィスのコンセプトは「AGILE&CoNNEXT」。俊敏に(AGILE)、みんなと一緒に(Co)つながり(Connect)ながら、次の(Next)ステージを目指そうという想いが込められています。全席フリーアドレス化に伴い、執務フロアである6・7・8階のレイアウトを全面的に見直し、上下階をつなぐ中階段周辺はスピード感をもってすぐに集まれるアジャイルエリアに変更されました。また、出社したからこそ得られる体験価値を高めるため、長時間作業でも身体の負担を軽減できる上下昇降デスクを導入し、個人の集中をサポートしています。個人ロッカーはあえて6階にすべて集約することで、同じフロアだけで完結せずにフロアをまたいだ交流を生み出す狙いがあります。一方で、コロナ禍で定着したWEB会議についても、周囲の音環境に左右されることなくセキュアな環境が構築できるフルクローズ型のブースを導入し、新しい働き方に柔軟に対応しています。

沖縄セルラー電話株式会社 様
沖縄セルラー電話株式会社 様
6階に集約された個人ロッカースペース。あえて背の低いタイプの個人ロッカーを採用することで、この場所を訪れた人同士が顔を合わせ、偶発的なコミュニケーションが起こりやすい工夫が施されている。
沖縄セルラー電話株式会社 様
WEB会議や面談、集中作業などに対応するため、フルクローズ型ワークブース「TELECUBE by OKAMURA」を導入した。7階執務エリアには1人用ブースと2人用ブースを2台ずつ設置。6階会議室エリアには1人用ブースを4台、2人用ブースを6台設置し、会議室を補う役割も果たしている。

インタビュー

今回、どのような経緯でこのオフィスリニューアルを行うことになったのか、プロジェクトを担当した総務部総務グループの野尻様にお話を伺いました。

野尻 さん
野尻 哲 様 経営管理本部 総務部
秘書・広報グループリーダー 兼
総務グループ

「実は、いつかはフリーアドレスに挑戦してみたいという想いは2013年の本社ビル新築当時からありました。結果的に一部を除いて固定席運用になりましたが、いつでもフリーアドレスに切り替えられるように、ワゴンを廃止して個人ロッカーを導入していました。ただ、今日まで実施できていなかったのは必ずしもフリーアドレスにする必要もなかったからなんですよね。固定電話などの運用面もありましたし、固定席の方が効率の良い部分もあったので、特に変更するだけの外部要因もありませんでした。しかし、2020年春に新型コロナウイルスの影響でリモートワークを余儀なくされて…。当時はまだあまりテレワーク用のツールも整っていなかったので大変でした。ちょうど株主総会を控えていたので、わたしはほとんど出社していましたね。徐々にツールも充実してきて、リモートワークとオフィスワークを社員が使い分けるようになってきたころ、今度はオフィスの方が環境に追いついていないと感じるようになりました。全員出社を前提にレイアウトが作られていたので社員がいる場所に偏りが生じていましたし、そもそも各部門の人員増減を見越して少し多めに座席を用意していたので、全体的にオフィスが狭い印象がありました。」

沖縄セルラー電話株式会社 様
今回の改装前のオフィス風景
野尻 さん
野尻 哲 様

「ここ数年の間に紙ベースで管理していた書類もワークフロー化が進んでいましたし、これを機に思い切って全部署フリーアドレスに挑戦してみようということになりました。実際にやってみるとフリーアドレスに対する社員からのハレーションはあまりなく、特に営業部門や技術部門のメンバーは積極的に場所やフロアを移動してコミュニケーションを取っているように感じます。沖縄県内でもフリーアドレス制度を導入している企業は少ないので、他社から見学にきていただくこともあります。座席数を減らせたことによって、アジャイルエリアやWEB会議ブースなど、これからの働き方に必要な空間も新たに設けることができました。以前からチャレンジしていく文化が定着しているので、環境が変わったことによって社員のマインドが一段上に高まり、また新しい発想やビジネスが生まれてくれたらいいですね。」

沖縄セルラー電話株式会社 様
立っている人と座っている人の目線が合いやすいハイテーブルは、コミュニケーションのハードルを下げるだけでなく、スピーディーな打ち合わせを促す効果もある。

ニーズに合わせて提供価値を変え、沖縄のビジネスをさらに発展させる

沖縄セルラーの挑戦は社内だけにとどまりません。2021年11月には、都心型データセンターを併設した「沖縄セルラーフォレストビル」を竣工し、沖縄から本土や世界に情報を発信する最新鋭のICTスマートビルとして運用を開始しています。この建物の2階に2022年2月にオープンしたのが、同社が運営するコワーキングスペース「mangrove(マングローブ)」です。テレワークによって高まるワーケーション需要や、ITベンチャー企業などの多様な働き方を柔軟に受け入れる場として、時間単位で利用可能なワークスペースを開設しました。同社が誇る5G、Wi-Fi6など高速ネットワーク環境や、グループ会社の沖縄セルラーアグリ&マルシェ株式会社が運営する「沖縄CLIPマルシェ」で扱う沖縄限定食品の実売など、独自のサービスを融合してコワーキングスペースとしての価値を高めています。

沖縄セルラー電話株式会社 様
沖縄セルラーフォレストビル外観

インタビュー

この沖縄セルラーフォレストビルやmangrove新設にかけた想いを、本プロジェクトの推進と構築に携わった総務部長の大城様に伺いました。

大城 様
大城 武史 様 経営管理本部
総務部長 兼
秘書・広報グループリーダー 兼
社長付特命担当

「データセンターとは、お客様からサーバーやネットワーク機器をお預かりして管理・運用を行っていく施設のことですが、多くの場合は少し都心から離れた場所に作られるんですよね。しかし、それでは大事なサーバーに何かあった場合に保守担当者がすぐに駆けつけることができず、管理に不安が生じます。その点、沖縄セルラーフォレストビルは那覇市の中心地である「旭橋駅」から徒歩2分という好立地にあり、5階~12階はテナントフロアとして賃貸も行っているので、お客様は身近で安心してサーバーを預けることができます。さらに、沖縄唯一の本土向け東西海底線ルートを利用した災害に強い高品質なネットワーク環境を提供することで、沖縄企業の更なる発展に貢献できると思っています。」

沖縄セルラー電話株式会社 様
沖縄セルラーフォレストビルの1階エントランス
大城 様
大城 武史 様

「2階にコワーキングスペースを設けたのは、このビル自体の価値を高めたかったからです。高品質・大容量のネットワークを必要とする企業は、これから世に羽ばたいていくようなITベンチャー企業かもしれません。そのような企業にもこのビルやデータセンターの存在を知ってもらうには、現在の柔軟な働き方に対応できるコワーキングスペースのような場所が必要だと考えました。mangroveを利用していただいた企業がやがて大きく成長して、同じビルのデータセンターやテナントフロアを利用してくれる可能性もあります。世の中の変化やお客様の成長に合わせて、提供できる価値や空間が変化していくこと、それがこの施設のコンセプトになっています。」

沖縄セルラー電話株式会社 様
沖縄セルラー電話株式会社 様
沖縄セルラー電話株式会社 様
事前予約制の個室型ブース「Cube」には、「TELECUBE by OKAMURA」を採用。ガラス部分はマングローブの木をモチーフにしたデザインフィルムで装飾し、コンセプトを表現しながら周囲の目線も遮っている。
沖縄セルラー電話株式会社 様
グループ会社の沖縄セルラーアグリ&マルシェ株式会社が運営する「沖縄CLIPマルシェ」。沖縄限定の商品が数多く販売されている。

インタビュー

オカムラは空間だけでなく、コンセプト設計からお客様と一緒にこのmangroveをつくり上げていきました。全体のコンサルティングや企画設計を担当した庵原はこう話します。

庵原
庵原 悠 株式会社オカムラ
働き方コンサルティング事業部
ワークデザインストラテジー部
コンサルティングセンター
ユニットリーダー

「わたしは元々『共創』に関する研究をしていて、いくつかの共創空間やコワーキングスペースの立ち上げにも携わらせていただいていました。今回はその知見を基に、コンサルタントとしてこのプロジェクトに参画させてもらいました。お客様とは2013年の本社移転の時からお付き合いがありますが、その当時から沖縄をよくしたいという想いが強く、挑戦的な文化があると感じています。今回のコワーキングスペース構築も、最初の構想は社員のボトムアップで立ち上がったアイデアだと聞いています。

ちょうど初回の提案を行った直後から新型コロナウイルスの流行が本格化し、打ち合わせはほとんどオンラインで行いました。まずは他社のコワーキングスペースを調査するところから始まり、オンラインでの見学会も実施しました。海外の事例をご紹介したり社長の想いをお伺いしたりして、約半年間かけてコンセプトメイクを行い、最終的に『那覇から、日本と世界の“これから”を支援する』ことを目的に、テレワーク需要に即したブースメインのコワーキングスペースを構築することになりました。」

沖縄セルラー電話株式会社 様
沖縄セルラー電話株式会社 様
庵原
庵原 悠

「コワーキングスペース構築にあたっては、地方のサテライトオフィス構築事業などを国が支援する『地方創生テレワーク交付金』を活用しました。申請基準を満たすように空間設計を行ったり、必要な書類を作成したりと、オカムラとしても地方のサテライトオフィス構築に必要な経験を蓄積できたと思います。最終的にはファシリティだけでなく、当社のDXソリューションサービスである『Work x D(ワーク・バイ・ディー)』を活用し、ビルエントランスからmangrove入口までを一つのQRコードで入館できるシステムも納入させていただきました。」

最後に、これからのコワーキングスペースの在り方や、この事例から得られた学びについても伺いました。

庵原
庵原 悠

「今回のmangroveも決して広大なスペースではないので、この空間だけでできることには限界があります。しかし、そこを起点に他の施設や地域と連携することで、更なる価値を生み出すことはできると思っています。日本にはもともと共創からなにかを生み出す文化がありますが、今までも社会背景とともに共創のスタイルは変化してきました。テレワークが普及したことによって、これからはサテライトオフィスなどが単純な『働く場』としてだけでなく、新しい『共創空間』としての価値を求められてくるのではないでしょうか。都心などはさまざまなスタイルの共創空間が生まれつつありますが、今回この沖縄という土地からそのフィールドが形成され始めたことには、空間の広さ以上の価値があると感じました。」

Data

企業名
沖縄セルラー電話株式会社
所在地
本社/沖縄県那覇市松山1丁目2番1号 沖縄セルラービル
Mangrove/沖縄県那覇市東町4-1 沖縄セルラーフォレストビル
納入時期
2022年4月
オカムラのオフィスデザイン事例集

Design Stories掲載事例の中から規模別にピックアップした事例集です。ぜひダウンロードしてご覧ください。