オフィスづくりのコラム
COLUMNフリーアドレス導入のポイントとは?
成功を左右する具体的施策を紹介
オフィスの中に社員の固定席を設けず、自由な席で仕事を行うフリーアドレス。面積の有効活用や社員の交流活性化など、さまざまなメリットがある座席の運用方法です。
しかし、固定席を廃止するだけでは社員間のコミュニケーションがかえって取りにくくなったり、社員にルールが浸透しないことで生産性が落ちてしまったりと、フリーアドレスのメリットを十分に享受できない可能性があります。スムーズに導入するためにはどうすればよいのでしょうか。
この記事では、フリーアドレス導入のメリットや向いている会社の特徴、成功させるための具体的な対策について解説します。
目次
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フリーアドレスとは?導入のメリットについて
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フリーアドレスに向いている会社、向いていない会社
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フリーアドレスを成功させるための具体的な対策
- まとめ
1. フリーアドレスとは?導入のメリットについて
フリーアドレスとは、オフィスの中に社員の固定席を設けず、自由な席で仕事を行えるようにする座席の運用方法のこと。リモートワーク化が進み、働く環境や働き方が変化していることなどから、導入企業は年々増加傾向にあります。
上記は、オカムラが手掛けた優良オフィス(日経ニューオフィス賞の応募資格に該当するオフィス)を対象にフリーアドレスの導入割合を調べた結果です。2014年~2023年の10年間で、一部フリーアドレスもしくは全面フリーアドレスを導入している企業は23.5%から75.0%へ増えていることが分かります。
また、「フリーアドレス」と一言で言っても、従来の対向型レイアウトだけでなく、最近はABW(※)の要素を加えた、多様な席タイプを用意したフリーアドレスを採用する企業が増えているということが予想されます。
※Activity Based Workingの略で、仕事の内容や目的に合わせてオフィス(オフィス外も含む)で「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方のこと
フリーアドレスを導入すると、以下のようなメリットが期待できます。
・面積の有効活用
社員の数に見合った席数を用意し、効率的に配置することで、オフィスのスペースに余白を生み出せます。
・人数の変動対応
将来的な組織・人数変更の際に、柔軟に対応しやすくなります。工事が不要なため、ランニングコスト削減にも効果的です。
・社員の交流活性化
座席の隣り合う人が変わることで社員同士のコミュニケーションのきっかけが生まれ、交流が活性化する可能性があります。
・働き方の自律促進
仕事の内容に合わせて場所を選んで行動するため、社員の自律性を促すことが期待できます。
2. フリーアドレスに向いている会社、向いていない会社
なにかとメリットの多いフリーアドレスですが、会社のスタイルや業種などによって向き・不向きがあります。自社の特性を見ながら、フリーアドレスがマッチするかどうかを判断しましょう。
・フリーアドレスに向いている会社
フリーアドレスを導入するうえでは、場所に関係なく仕事ができるモバイルワークの導入が必要不可欠です。そのうえで、部署をまたいだプロジェクトが多い会社であれば、部署の垣根を超えたコミュニケーションが活性化されるなどの恩恵を受けられる可能性があります。
・フリーアドレスに向いていない会社
フリーアドレスに向いていないのは、紙の書類や固定電話での対応が多い部署・企業など、座席の制約が大きい環境です。そのほか、経理部や管理部門などの機密性が高いデータを扱う部署は情報漏えいのリスクがあることから、フリーアドレスが適用しにくい場合があります。
3. フリーアドレスを成功させるコツ
フリーアドレスに向いている企業であっても、単に導入するだけではその恩恵を十分に受けられません。メリットを最大限に生かすためには、「運用ルールの作成」「ツールや設備の活用」「目的やルールの周知」をすることが大切です。
フリーアドレスを成功させるための具体的な施策について、以下で詳しく解説します。
(1)運用ルールの作成
社員同士の接点や会話のきっかけが生まれやすくなるような運用ルールを作成しましょう。
■グループ内のコミュニケーション
フリーアドレスを導入していると、グループ内の接点が希薄になる可能性もあります。部門ごとに定期的な会話の機会を設けることで、コミュニケーションが促進されます。
・週1グループアドレス
部署やチームごとにエリアを決めたうえで自由な席に座るグループアドレスを週に1度導入することで、グループ内のコミュニケーションを促します。
・1on1 制度
全席フリーアドレスだと、上司と部下が顔を合わせることが少なくなります。1on1を定期的に導入することで会話の機会を増やし、コミュニケーション不足によるすれ違いを防ぎます。
■席を固定化させない工夫
フリーアドレスを導入しても、同じ席に座る習慣が抜けないうちは座席が固定化してしまいがちです。席を固定化させないための工夫には、以下のようなものがあります。
・くじびき制度
くじ引きによってランダムに席が決まる日を作ると、同じ人が同じ席に座り続けることを防げます。
・同じ席に連続で座らないルール
「前日と同じ席には座らない」「外出から帰ったら違う席に座る」などのルールを設定することで、座席の固定化を防ぎます。
・座席ごとのテーマや使用条件を設定する
座席ごとのテーマを不定期に設定することで、座席の固定化を防ぎます。たとえば、「趣味がアウトドアの人/インドアの人」といったパーソナリティにちなんだテーマを設定すれば、社員同士の会話のきっかけづくりにもなります。
(2)ツールや設備の活用
フリーアドレス化に際しての課題の一つは、私物保管。ツールや設備を用意することにより座席移動のハードルを下げ、社員が毎日違う席に座りたくなるような環境をつくります。
■座席の移動のハードルを下げるツール
座席移動のハードルを下げるためには、私物の持ち運びをスムーズにし、移動の負担を軽減する必要があります。以下では、座席の移動を促進するツールをご紹介します。
・モバイルロッカー
フリーアドレスを導入すると、各座席でものを保管できなくなるため、ロッカーがあると便利です。ロッカー内に充電やメールポストの機能を付けると、座席を移動することによる不便が軽減できます。
・モバイルバッグ
仕事に必要な道具が一気に持ち運べるモバイルバックを1人1つ支給することで、荷物がコンパクトになり、朝の支度や移動がスムーズになります。
■どこに誰が座っているかが分かるツール
フリーアドレス制を導入すると、誰がどこにいるのかわからず、探す手間がかかる可能性も。各社員の場所がひと目でわかるICTツールを導入すれば、フリーアドレスならではのデメリットも解消できます。
・座席予約システム
使用する座席をシステム上で予約しておくことで、誰がどこにいるかはもちろん、人の密集具合や空席を事前に把握できます。
・座席位置検知システム
座席位置検知システムを導入すると、社員のプレゼンス情報をリアルタイムで把握できるため、特定の社員を探し回る手間が省け、円滑なコミュニケーションが実現できます。
(3)目的・ルールの周知
運用ルールや設備を導入しただけではすぐに形骸化してしまう可能性があることから、共有・定着させるための仕組みが必要です。具体的な取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。
・ルールブック・運用マニュアルの配布
運用ルールや場所の使い方などをまとめたマニュアルを配布すると、ルールの周知につながります。
・全社員への説明会の開催
運用ルールの説明会を開催すると、目的の浸透や意識の統一に役立ちます。
・ワークショップによるルール決め
ルールを作成する際の過程をワークショップ化することで、ルールが社員にとって「自分ごと」となり、遵守されやすくなります。
(4)PDCAサイクルの実施
フリーアドレスを成功させるためには、導入後のフィードバックと適切な改善策の実施が重要です。運用ルールはマッチしているか、必要な家具や備品は揃っているかなどを定期的に検証し、自社にフィットするよう精度を上げていきましょう。
まとめ
フリーアドレスを成功させるポイントは、ただ単に導入するだけでなく、スムーズに運用できるような環境を整備することです。「運用ルールの作成」「ツールや設備の活用」「目的やルールの周知」を徹底し、仕組みを定着させることを意識しましょう。
フリーアドレスの運用が軌道に乗った後も、家具やツール・設備を見直すなどの改善活動を行うことも大切です。
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イラスト:Masaki