オフィスづくりのコラム
COLUMN従業員の心身の健康を高める「WELL認証」とは? メリットと実践例も解説
昨今の世界的な健康意識の高まりから、WELL認証について検討を始めた企業が増えてきています。WELL認証とは、心身の良好な状態を指すウェルビーイングを基準として設計された、空間評価システムのこと。WELL認証の取得を目指したオフィスづくりを通じて、従業員の幸福度および生産性を上げられる可能性があることから、日本でも注目が集まりつつある認証制度です。
この記事では、WELL認証の概要や、取得に向けて取り組むメリット、オフィスでの実践例についてご紹介していきます。
目次
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WELL認証取得に取り組むメリット
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WELL認証とは?
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渋谷オフィスでの実践例
- まとめ
1. WELL認証取得に取り組むメリット
世界中から注目を集めているWELL認証。世界のWELL認証件数は、2024年1月時点で1269件にのぼり、中国が最も多く388件、次いでアメリカが264件の認証数となっています。日本では45件の物件がWELL認証を取得しており、建物の種別は8割がオフィスです。コロナ禍であった2020年から急速に件数が増加しており、認証取得を目指す企業は今後も増えていくと予想されます。
WELL認証がこれほどまでに注目を集めている背景には、世界的な健康意識の高まりがあります。WELL認証の指標には、心身の良好な状態を指す「ウェルビーイング」の概念が採用されていることから、WELL認証は、働く人の健康や幸福を実現するためのサポートツールとしても機能するのです。
企業がWELL認証取得に向けて動くメリットには、以下のようなものがあります。
■健康経営の推進
WELL認証は、健康経営を目指す企業にとっても、追い風となります。健康経営とは、従業員の健康に配慮した環境づくりを通じて、生産性の向上を目指す経営戦略の一つです。従業員が健康に働くことにより、仕事の効率や従業員のモチベーションが上がり、結果的に業績や企業価値の向上につながると考えられています。
日本でも、経済産業省が2014年から「健康経営銘柄」の選定や「健康経営優良法人認定制度」を導入したこともあり、健康経営を意識する企業が増えてきています。
WELL認証の指標であるウェルビーイングの考え方には、心身の健康が含まれています。そのため、WELL認証の取得を目指すことで、結果的に健康経営の推進にもつながります。
■人が定着する環境づくり
WELL認証取得を目指すと、従業員が働きやすい職場づくりにつながることから、従業員のワークエンゲージメントが高まり、離職率が低下する可能性があります。これにより、人材確保や採用コストを抑えることができ、労働力不足の解消が期待できます。
■企業ブランディング
WELL認証を取得すると、「従業員の幸福や健康を考えている企業」というイメージが広まり、社会的な評価が高まる可能性があります。消費者はもちろん、株主や就活生などのステークホルダーに向けたアピール材料にもなり、結果的に企業ブランディングにもつながります。
2. WELL認証とは?
WELL認証制度とは、ウェルビーイングを基準としたオフィスの空間評価システムです。オフィスの空間を評価するシステムはほかにもありますが、WELL認証は従業員の身体的・精神的・社会的な健康を評価するところに特徴があります。
■WELL認証の評価項目
では、WELL認証の評価項目には、どのようなものがあるのでしょうか。
WELL認証では、「空気」「水」「栄養」「光」「運動」「温熱快適性」「音」「材料」「心」「コミュニティ」の10のコンセプトと、カーボンニュートラルへの姿勢などを評価する「イノベーション」が評価項目とされています。10のコンセプトはさらに、117の評価項目と225のパート(※1)に細分化され、各項目の合計得点で認証が取得できるか否かが決まります。
※1 2024年3月時点
ただし、評価項目には必須項目と加点項目があり、認証を取得するためには、必須項目のすべての基準を満たさなければなりません。
評価項目には、ビルの性能や管理体制、オフィスの設え・運用、人事規則や会社方針といった項目がバランスよく含まれています。そのため、WELL認証取得を目指せば、自ずと従業員が健やかに働ける環境をつくることにつながるでしょう。
またWELL認証には、「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」の4つのランクがあります。ランクは、WELL認証の必須項目をクリアした企業を対象に評価され、加点項目の合計点によって決定します。
3. 渋谷オフィスでの実践例
WELL認証の必須・加点項目にどのような取り組みが該当するのか、なかなかイメージがつきにくいと思います。WELL認証の魅力を知り、取得を前向きに検討し始めたとき、具体的にどのようなことを意識してオフィスづくりをしていけば良いのでしょうか。
以下では、WELL認証を取得したオカムラの渋谷オフィスをもとに、コンセプト別の実践例と評価ポイントについて解説していきます。
■運動
●アクティブな家具(加点項目)
「アクティブな家具」の加点項目では、オフィス内のデスクの25%以上を上下昇降式にすることを定めています。オカムラの渋谷オフィスでは、50%以上のデスクに、上下昇降式を採用しました。
オフィス内のワークステーション40席中21席に、上下昇降式のデスクを採用
■温熱快適性
●個別の温度コントロールへの配慮(加点項目)
誰でも使用できる卓上扇風機を設置
「個別の温度コントロールへの配慮」とは、オフィスを利用する全従業員が、それぞれにとって最適な温熱環境を保てるようにするためのものです。オカムラの渋谷オフィスでは、誰でも使用できる扇風機を設置したほか、体温調節をしやすいよう、柔軟なドレスコードとしてオフィスカジュアルを導入しています。
■心
●回復のためのスペース(加点項目)
プライバシーに配慮された仮眠スペースの提供
「回復のためのスペース」という加点項目を満たすために、オカムラの渋谷オフィスでは、仮眠・休息スペースを提供しています。仮眠スペースでは勤務時間中に1回、30分以上の仮眠・休息をとれるようになっています。
■コミュニティ
●アクセシビリティとユニバーサルデザイン(加点項目)
床材の貼り分けによる動線の表示
筆談でのコミュニケーション支援を目的としたホワイトボードの設置
コミュニティの加点項目である「ユニバーサルデザイン」は、すべての人が使いやすいようオフィスがデザインされているかを評価する項目です。
オカムラの渋谷オフィスでは、壁を取り払った見通しの良い設計や、筆談でコミュニケーションがとれるようにミーティングスペースにホワイトボードを設置するなどの工夫を取り入れています。
まとめ
従業員の心身の健康を意識した空間づくりを評価するWELL認証システム。WELL認証の評価項目に基づいてオフィスづくりをすれば、従業員がイキイキと働きやすくなり、生産性向上も期待できるかもしれません。
WELL認証プラチナを獲得した渋谷オフィスについては、こちらの記事でもご紹介しています。
オカムラ 『CO-EN LABO(こうえんらぼ)』の事例 | Design Stories / デザインストーリーズ|株式会社オカムラ (okamura.co.jp)
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イラスト:Masaki