オフィスづくりのコラム
COLUMNオフィスに壁を建てるときは要注意!
「消防法」のチェックポイントをおさらい
消防法とは、主に火災の予防や火災が起きた際の被害を抑えることを目的とした法律です。建築基準法を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、建築基準法と消防法は規定の範囲が異なります。
オフィスのレイアウトを変えるとき、消防法について確認しなければならないケースがあります。内容によっては管轄の消防署への申請や届出が必要になります。とはいえオフィスのレイアウトは、使いやすさや居心地を考えると、いろいろとカスタマイズしたいもの。
そこで、今回は消防法令の一部の内容や注意点、そしてレイアウトの工夫についてご紹介します。
目次
- オフィスになぜ消防法がかかわるのか
- オフィスの使い方によっては、消防法に違反する可能性がある
- 法令を遵守するために
- まとめ
1. オフィスになぜ消防法がかかわるのか
消防法では火災を広げないための規定や、消火活動のための規定、避難動線確保の規定などが定められています。これらを守ることで避難・消火活動をスムーズなものにし、被害を抑えることができます。また、消防用の設備(消防設備)の設置についても定められており、それらは「消火設備」「警報設備」「避難設備」「消防活動用設備」の4つに分けて考えることができます。
消火設備:消火を行うためのもの(例:消火器、屋内消火栓、スプリンクラー)
警報設備:火災を感知したり、知らせたりするためのもの(例:火災報知器、非常放送)
避難設備:災害時、避難するためのもの(例:誘導灯、非常用照明)
消防活動用設備:消防隊が消火活動の際に使用するもの(例:排煙口、非常コンセント)
一般的なテナントビルでは、建設時にこれらの消防設備が関係法令に基づいて設置されています。テナントが入居して、個室やレイアウトを変更すると、変更に応じて消防設備の追加や移設を求められるケースがあります。
2.オフィスの使い方によっては、消防法に違反する可能性がある
レイアウト変更だけでなく、オフィスの使い方によって、気付かないうちに違反してしまう可能性があります。たとえば......
消火活動の阻害:スプリンクラーの散水をさえぎるように物を置く、消火栓の扉が開かないように物を置く
避難動線の阻害:避難通路を荷物などでふさぐ、または狭くする
こういったケースに該当しないよう、定期的にチェックを行いましょう。また、各市町村には消防法に係る条例がありますので、疑問や不安を持たれたら管轄の消防署に相談してください。テナントビルに入居されているのであれは、ビルを管理している会社(ビル管)などに相談しても良いと思います。
■壁を建てるときの注意点
オフィスに壁を建てるとき、管轄の消防署への届出が必要になることがあります。例えば、東京都で防火対象物開始届を出すときは、使用を始める7日前までに管轄の消防署に所定の書類などを届出なければなりません。レイアウト図や消防設備図の添付を求められることもあるので、早めに準備するのが良いでしょう。最近は電子手続きも進められており、内容が変わることもあります。詳細は管轄の消防署またはビル管などに相談してください。
スプリンクラーにも注意が必要です。壁がスプリンクラーの散水障害になってはいけません。スプリンクラーとは、火災発生時に熱や煙を感知して自動的に大量の撒水により消火を図る装置です。
設置する壁がスプリンクラーの散水を遮り、水が届かない箇所が生じないか、事前に検証しましょう。壁に限らず、背の高い物を設置するときには、散水障害とならないように注意が必要です。
■壁などの設置時に!壁を建てるときに注意すべき3つのCHECK POINT
上記以外にも、パーティションなどオフィスに壁を建てる際は下記のポイントをチェックしてみましょう。
ポイント | 解説 |
設置した壁がスプリンクラーの散水障害になっていないか? | 前項「壁を建てるときの注意点」のとおり。 |
非常用照明設備があるか? |
居室・無窓居室、避難路となる通路、通常照明の必要な部分には、非常用照明設備が必要です。また、間仕切りをして非常用照明がなくなった部屋には、増設する必要があります。 |
火災報知設備があるか? |
火災報知設備(感知器)は、居室で不要なことも、居室以外で必要なこともあります。間仕切りをして感知器がなくなった部屋には、増設する必要があります。 |
※上記のチェックポイントは一例です。
その他避難経路や避難距離、適切な照度の確保、不燃性能の必要可否など、個室をつくるにあたって確認が必要な事項があります。
また、各地区には条例がありますので、必ず管轄する消防署の指導に従うようにしてください。
3. 消防法令を遵守するために
ここまでは注意すべき点をお伝えしてきましたが、デザイン性や機能性、快適さ、予算など、オフィスレイアウトにおいて気になるポイントは他にもさまざまです。ここでは消防法令を遵守しつつ、理想のオフィスレイアウトを実現するためのヒントをご紹介します。
■設備に影響がない壁の建て方
天井までを塞ぐパーティションを設置する場合、空調や消防設備の追加によってコストが膨らんでしまうケースがあります。また、パーティションの上部と天井との間に隙間を空けても、下部では空気の流れを遮断してしまうので空調・温度の調節が難しくなったり、におい漏れ・音漏れが起こってしまったりするデメリットが考えられます。
では、現在の設備に影響を及ぼさない形で壁を建てるにはどうすればよいのでしょうか?
■スプリンクラーやファン内蔵型のワークブースを設置する
個室を作りたい場合は、置き型のフルクローズ型ワークブースを設置する方法もあります。TELECUBE by OKAMURAには、本体に簡易なスプリンクラーやファンが内蔵されています。設置するときは管轄の消防署に事前申請が必要ですが、パーティションを建てたり、ブース内に設備工事を引き込む必要がなく、会議室と変わらない快適空間を提供できます。
■ブロックパネルを活用したランマオープンのパーティションで個室をつくる
エリアの仕切りとしてどうしても壁を建てたい場合や、パーティションを空間デザインの一部として利用する場合は、ランマオープンのパーティションを活用することもおすすめです。開口面積など細かな条件はありますが、ランマがオープンであれば、消防設備の設置が免除される可能性があります。また、照明や空調設備の増移設も抑えられる可能性があり、工事費の削減が見込まれます。
■動線編:避難ルートを確保しよう
家具や備品の置き方も重要なチェックポイントです。廊下に避難の妨げになる障害物が置かれていたり、消防法によって設置が義務付けられている設備がなかったりした場合は、消防検査などで是正を求められます。
まとめ
消防法とは、火災の予防と被害の軽減のために消防設備の正しい設置などについて定めたもの。そんな消防法を知ることは、施設管理に係る者としては必要でしょう。しかし、そのせいで機能性が損なわれてしまっては、オフィスとしての意味が大きく失われます。自社の目指す働く環境を実現するためにも、管轄の消防署やビル管理会社に適切に相談したり、要件依頼できるように、基礎知識をおさえておくことが大切です。
イラスト:Masaki