独立・起業に悔いはなし
細谷 それで玉井さんは独立・起業という道を選んだわけですが、やはりその選択をしてよかったと思いますか?
玉井 はい。少なくとも後悔は全然ないですよ。もともと後悔はしないタイプなので。やっとここ1年くらいで会社も少し大きくなりましたしね。でも同時に苦労も増えました。会社が成長するにしたがって経営のことなど、これまでやったことのない仕事もやらなければなりません。できないことがたくさんあって、毎日が試行錯誤で、戸惑いだらけですごくたいへんですが、でもそれらを1つずつクリアしないと前に進めないので、頑張るしかないですよね。
細谷 自分の専門外のことを一からやっていくのは大変なことですね。同時に、やりたいことに割ける時間も限られてきますし。
玉井 でも私は変わることが好きで、常に何かに挑戦してクリアしていくことが楽しいしやりがいを感じます。それを自分自身で主体的に選んでできるから、今はたいへんなことも含めてすごくいい状況だと思っています。
仕事のやりがい
玉井 ららさんは仕事のやりがいや喜びはどんなときに感じますか?
細谷 元々プロダクトデザインをやってきたので、デザインした製品が形として完成したとき、すごく喜びを感じますね。もちろん最初のデザインの段階から完成形をさんざんイメージしてきて、たくさんの案の中から考え抜いて作るわけですが、それが最終形になったときは感動しますよね。それは初めて担当した製品のときにも強く感じたのですが、CMFデザイナーに変わってもイメージしていたものに近い製品ができたときの感動は同じですね。
玉井 それはデザイナーとしてすごくよくわかります。私も自動車メーカーで働いていた頃はデザインした製品が工場のラインを流れてきた時、「うわー! 来た来た!」というような喜びと感動がありました。でも今は企業の外にいる立場で、その現場は見られないのですごく寂しいですね。
細谷 なるほど。では玉井さんの現在の仕事の喜びややりがいは何ですか?
玉井 私の仕事でお客様が喜んでくれたときですね。その中でも難易度が高い仕事をクリアしたときが一番うれしいし、やりがいを感じます。もっとも、難易度が高い仕事ばかりなんですけどね(笑)。私は自分で自分を極限まで追い込むのが好きなんですよ。自分で設定したハードルが高ければ高いほどクリアしたときにとてつもない達成感を得られるのでどんどんハードルが高くなって苦しくなってしまう。でもそれが楽しいんですよね。
クリエイターには海が有効
細谷 クリエイターにとってONとOFFの切り替えが非常に重要だと思うのですが、玉井さんは休みの日は何をしてますか?
玉井 私は海が大好きで、真冬の1月から3月以外は通年サーフィンをしによく海に行っています。最近気がついたんですが、海には治癒力があって、海に入ると心身ともにすごく癒されるんですよね。長年気のせいかなと思っていたんですが、タラソテラピーというのを知って、今まで知らず知らずにそれを毎週してたんだと(笑)。実際、仕事が忙しくてしばらく海に行けなくなると悪いものがたまってる感じになって具合が悪くなるんですよね。
細谷 その感じ、よくわかります。私も一時期ディンギーヨットをやっていたのですが、海に行くと心が一回リセットできますよね。癒やし効果があるからまた新たな気持ちでものづくりに取り組めるのでしょうか。私も海は大好きですね。最近は登山にもはまっていますが、サーフィンにも是非挑戦してみたいですね。
玉井美由紀(たまい みゆき)
1968年千葉県生まれ。株式会社FEEL GOOD CREATION代表取締役/CMFデザイナー/CMFクリエイティブディレクター
武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科卒業後、 株式会社本田技術研究所へ入社。四輪デザイン室でデザイナーとして数々の車のカラーマテリアル開発に携わる。2007年、表面材専門のデザイン事務所「FEEL GOOD CREATION」設立。さまざまな企業から依頼を受けての商品開発や、CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザイン・コンサルティングなどを通じて日本のモノづくりを活性化させるため奮闘中。
細谷らら(ほそや らら)
1985年神奈川県生まれ。株式会社岡村製作所 CMF推進室 デザイナー
筑波大学芸術専門学群デザイン専攻プロダクトデザイン領域卒業後、株式会社岡村製作所へ入社。プロダクトデザイナーとして商品開発に携わる。玉井さんとの出会いでCMFの重要性に気づき、2015年からCMF専門のデザイナーとして商品開発に取り組んでいる。
初出日:2015.11.16 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの