Real Voice 2

丁寧なプロセスでつないだもの

「心の通ったプロセス」を
つなぎながら、
みんなの進むベクトルを一つに

総務部総務課管理係長 西村涼太様 総務部総務課担当係長 宮本真之様
Introduction

横浜市消防局の新本部庁舎では、新しい働き方が展開されています。その職場環境づくりのためには、職員が主体的に新しい働き方を考えるさまざまな取組を行いました。2020年から「働き方勉強会」「働くイメージづくりワークショップ」「お片付け勉強会」「モデルオフィスによる検証」さらには「職員向けWEBページによる情報共有」などを次々に実施。職員自身が自分事として捉え、納得感を持ちながら新しい働き方を考え導くことで定着へとつなげていったのです。

第2回インタビューでは、このプロジェクトを推進した事務局の中心的メンバーである、総務部総務課の西村様と宮本様に、職場づくりのプロセスなどについて伺いました。

Support
Support

迷った時や悩んだ時に、
力強い後押しをもらった

今回の職場環境づくりのプロジェクトチームである、事務局のお二人に伺います。まずは全体的なご感想から。

空間に取り入れるカラーリングにしても、オカムラさんからのご提案を受けて、単一色にするのか、いろいろな色を入れるのかずいぶん考えました。そうした中で、総務部長に「消防本部がこれだと派手でしょうか?」と相談すると、「いや、そういうのがいいんだよ」という声。私たちが迷った時や悩んだ時に、「いいんだ!」「これで行こう!」とずいぶん後押ししてもらいました。ここまで進んで来られたのは、総務部長をはじめとした整備推進委員会の皆さんの力、そして職員の皆さんの理解があったからこそだと思います。従来の旧態依然とした島型対向式のレイアウトから、袖机もなく自分の収納はモバイルロッカー1つだけという大きな変化をよく受け入れてもらったと思います。3年かけて文書や物品をどんどん減らし、移転に備えました。そうした職員の協力が、今回の成功につながったと思います。

総務部総務課管理係長 西村涼太様
Process of creation

一つひとつのプロセスを
丁寧に進め、
みんなの機運を高めた

それでは、オフィスづくりのプロセスについて伺います。まずは2020年から、「働き方勉強会」によって情報をインプットしていったのですね。

そうですね。最初に、オカムラさんの横浜や東京・赤坂のオフィスなどを見学しました。指令室で使う椅子も、司令課のメンバーがさまざまな椅子の座り心地や機能を試して選定しました。緊張感を強いられる現場ですので、少しでも職員のストレス緩和につながるよう配慮した点でもあります。

私も見学しましたが、民間のオフィスはかなり進んでいる印象を受けました。ネズミ色の古い什器を見慣れている私にとっては驚くような光景で、そもそも考え方が違うのかなとも思いました。ですから、民間の良いところを少しでも新本部庁舎に取り入れられたらいいなという気持ちはありましたね。

それから、働くイメージづくりを行う「ワークショップ」を実施したのですね。

各課から選出されたメンバーにより、職場環境づくりのアイデアを出し合い、横浜市消防局が目指す働き方の基本的な3つの方向性を導き出しました。「業務の効率化」「知識・情報の共有化」「健やかなWork in Life」の3つです。その結果をそれぞれのメンバーが各課に持ち帰ってフィードバックを重ね、職員が自分事として取り組み、働く場づくりにつなげていきました。こうしたワークショップをはじめとして、レイアウトや運用ルールなど、職員の意見をたくさん吸い上げながら進めてきたという想いはあります。

ワークショップの様子 ワークショップの様子
「お片付け勉強会」による意識醸成も、大きな効果が得られたそうですね。

「お片付け勉強会」は講師を招いて2回実施し、自分の机の引き出し部分をみんなで持ち寄って、実際にお片付けをして私物のスリム化を行いました。整理の際は「使えるものではなく、使うものを取っておく」というアドバイスがありました。各課の移転担当者が参加し、それぞれの課に戻ってフィードバックしてもらったのですが、これがとても好評で、「片付けの際にとても参考になった」という声は多かったです。元々、金曜日は早く帰宅する「カエルデー」としていましたが、これを「お片付けしてカエルデー」として、身の回りのモノを少しでも整理して帰りましょうと呼びかけています。この実現には人事課などの協力もあり、みんなで取り組むことによって移転に向けた機運を醸成することができました。勉強会や研修会を通して、少しずつ同じベクトルに向かい歩むことができたと思います。ただ、こうした取組もすぐに結果が出ることではありませんから、数年かけて少しずつやったことが、成功につながったと感じています。

お片付け勉強会の様子 お片付け勉強会の様子
総務課の事務局では、モデルオフィスによる検証も行ったと聞いています。

以前のオフィスの一角に、デスクと椅子、モバイルロッカーを入れて、私たちが実際に使用しながら職員に見てもらいました。そのおかげで移転に向けたイメージを持ってもらうことができたと思います。

オフィスに入居する直前には什器が入った現場を職員全員に見てもらい、実際の個人収納スペースを体感してもらいました。移転が差し迫った時期でしたが、職員一人ひとりが自分事として捉えることができるようになったと思います。

モデルオフィスの様子 モデルオフィスの様子
そして、新しい職場についての積極的な情報発信・情報共有も行ったのですね。職員向けWEBページ「新消防本部庁舎への道」について教えてください。

施設課と総務課で、野球に例えまして、1回の表は施設課、1回の裏は総務課といった具合に、本部庁舎の整備開始時から移転が終わるまで、順番に全職員に対して整備の進捗情報を発信していきました。実はこの後に別館の整備もあるので、延長戦に突入する予定です。
この中では、職員が疑問や不安に思うようなことを、Q&Aのページで大きなことから小さなことまで取り上げました。例えば、レイアウトプランの考え方、設備や会議室の使い方、文書や物品の整理の仕方などについてです。職員の不安を少しでも取り除き、新本部庁舎引っ越しへの機運醸成につながったと思います。

「新消防本部庁舎への道」 「新消防本部庁舎への道」
総務部総務課担当係長 宮本真之様
Expectation

職員には
新しいものに対する期待、
チャレンジ精神があった

消防本部のオフィスが、場所を選んで働くことのできるABWの考え方を取り入れたのは画期的でしたね。

それはやはり職員の皆さんがこのレイアウトを自分たちの意思で決定したことが大きいですね。3つのレイアウトプランがあって、私が勝手に「これは選ばれないだろう」と思っていた先進的なプランが選ばれたのは驚きでした。やはり職員の中にも、新しいものに対する期待や、チャレンジ精神があったのだと思います。また、今までは自分の机に縛られて仕事をしていましたが、有線から無線LANに変えて、ネットワークの縛りを解消できたことも大きかったです。もちろんオカムラさんから、ABWにふさわしい空間を提案してもらったことも、みんなのワクワク感につながったと思います。私の知る限りでは、他の消防本部でこのようなレイアウトを採用しているところはありませんし、「横浜消防らしさ」にあふれていると思います。

さまざまな点でパイオニアと言われる「横浜市消防局らしさ」なのかもしれませんね。

日本で初めて救急車が配置されたのも横浜市ですし、全国初の取組が多いことは確かだと思います。今回思い切ったレイアウトを採用しましたが、限られた予算の中でこのような整備を進めることができたのは、市全体に理解があってのことだとも感じます。

ところで、今回の庁舎整備に伴うレイアウト業務委託をプロポーザルで受託したオカムラに対するご感想はいかがですか?

オカムラさんにはいろいろな方面で助けてもらいました。オカムラさんじゃなかったら移転はできたとしても、みんなが喜んでくれるかたちにはなっていなかったと思います。一緒に仕事をしながら、本当に多くの提案やアドバイスをもらいました。
私個人的には、「ちゃんと引っ越しできるのかな?」という不安もずっとありました。ところが、オカムラのプロジェクトリーダーに「終わらない移転はありませんから大丈夫です」と声をかけてもらった瞬間に、心のモヤがスッと晴れて、気持ちが軽くなったことを今でも覚えています。

My favorite place

職員それぞれに、
お気に入りの場所がある

ご自身が気に入っている空間をぜひご紹介いただきたいです。

カラーリングはオカムラさんと一緒に考えてやってきましたけれど、特に3階の打ち合わせスペースの色は最高だと感じています。警防部のエリアですが、消防の一つの象徴でもある救助隊のオレンジ服のイメージもあり、とてもよかったと思います。

私は、中央に植栽のあるビッグテーブル、その横にバランスボールのあるコミュニケーションエリアが好きですね。私は積極的にそこで打ち合わせをしたくて「あっち行こうよ」と言うのですが、他のメンバーがなかなか同意してくれません(笑)。私は昼休みなどによく利用していますが、一番落ち着く空間です。

Mind connection

お互いに心を向けながら、
本音で付き合える
関係を築きたい

最後に、こうしたプロジェクトの推進において重要だと感じられることを、ぜひ教えてください。

一番大事なのは、「人」ですね。今回に限らず仕事全般において、人とのつながりがとても重要で、今まで多くの人に助けられてきています。同じ仕事でも「心の通った仕事」ができると、物事が上手く進んだりします。また、このプロジェクトを進める上では、みんなの意識を一つの方向にすることが大切だと感じました。それは「右向け右!」という命令で、身体だけが向くということではありません。みんなが「心を向けていく」ために、一つひとつ丁寧に時間をかけて取り組んでいくべきだと思います。また、人に伝える上では、まず自ら実践した上での良かった点、悪かった点などを踏まえて説明することが大切だと感じています。

このプロジェクトには長期にわたっていろんな人が関わり、バトンをつないできました。そのバトンが上手くつながって良かったと思います。考え方を引き継いでいくことがこれからも大切だと思いますし、職員の皆さん一人ひとりの考え方も尊重しながら、本音で付き合えるような関係を築いていきたいと思います。