WAVE+

2017.01.17  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

漁師の収入

──漁師としての収入はどの程度なのでしょうか。

畠山晶-近影3

季節によってかなり大きな波があり、少ない月は5万円程度しかないこともあります。葉山の場合はお金になる漁があまりないので、年間トータルでもそれほど多くはならず、ワカメ、ヒジキ、潜り漁である程度稼いで、あとは刺し網漁やバイトでなんとか生活しているという感じです。だから去年のように、ワカメが獲れなかったら大変なことになるわけです。漁獲高は年々下がる一方で、年によっても全然違うんです。月によってはバイト代の方が多いこともあります。


──自然相手ですし、つらいことや大変なことも多いでしょうね。

やっぱり物理的につらいのが真冬の寒い時期。刺し網を海中から引き上げる時は水が浸透しないゴム手袋をするのですが、刺し網から獲物を外す時は素手でやることも多いので、冬場は手がかじかんで動かなくなります。また、一番寒い時期に行うワカメ漁は、ワカメを切って湯がいた後、真水でじゃぶじゃぶ洗うんですが、それがものすごく冷たくて。さらにそのワカメを干す時、雪が降ってきて北風びゅうびゅう吹いてくると干してるそばから凍ってくるんですよ。干す時は素手なので冷たくて指の感覚がなくなります。一昨年は特に雪が多い年だったのでつらかったですね。

精神的には獲物がかからない日が続くのが一番つらいですね。潜り漁の後、9月の後半まで魚がかからなくて、いろんなポイントに行って探してもいなかった時は大変でした。冬場は海が荒れて船が出せない日も多いですしね。


──荒天で船を出す・出さないの判断とその基準は?

畠山晶-近影4

葉山の場合は漁師個人で判断しています。その基準は波の高さや風の強さですが、船の大きさでだいぶ違います。私の船は小さいので冬場は漁に出られない日がけっこうあります。出られなかったら収入がゼロですからね。刺し網は長く入れておくとゴミがかかるし獲物も死んでしまうので、仕掛けてから1泊2日以内で上げなければいけないという規則があるのですが、海が大きく荒れちゃうと引き上げに行けません。そこで大きい船をもってる漁師にお願いして乗せてもらって網を上げたことは何度かあります。

余談ですが漁師になりたての頃、海が荒れて船を出そうか出すまいか迷っていた時、他の漁師から「海が荒れた方がイセエビが穫れるのになんで海に出ないんだ」と言われたので出たら、「こんなに荒れてるのになんで出るんだ」と言われたことがあります(笑)。


──実際に海で怖い目にあったことは?

最初の頃はあまり深く考えないで漁をやっていたので恐い目にあいました。船が引っくり返りそうになって、やばいなと思ったことは何度もあります。

畠山 晶(はたけやま あきら)

畠山 晶(はたけやま あきら)
1985年神奈川県出身。漁師(葉山町漁業協同組合正組合員)

神奈川県立三崎水産高等学校(現・神奈川県立海洋科学高等学校)を卒業後、ダイビングショップのスタッフ、母校の教員、結婚式の司会業などを経て2011年、葉山のベテラン漁師・矢嶋四郎氏に弟子入りし見習い漁師に。2013年、 葉山町漁業協同組合の準会員、2015年、葉山町漁業協同組合の正会員として認められ、葉山漁協で初にして唯一の女性漁師に。年間を通して海に出て、刺し網漁、ワカメ漁、潜り漁などを行っている。2013年12月から漁師仲間に呼びかけて、自分たちで獲った魚介類を販売する朝市を真名瀬港で開始。好評を博している。

初出日:2017.01.17 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの