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2013.04.15  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

──この3つの他に最近手がけられている仕事はありますか?

最近は小さな会社や組織、または地域の相談役的な仕事が増えてきました。

東日本大震災の2ヶ月後、陸前高田の3人の若い社長たちと東京のある会社の代表・副代表が、震災後の地域の"仕事づくり"を目的とする、民間の復興まちづくり会社「なつかしい未来創造」を立ち上げました。

その仕事で去年(2012年)の3月から、現地に通っています。

最初はWebサイトを作るだけだったのですが、関わってるうちにロゴマークの制作などいろいろリクエストをいただくようになりました。それらを一つひとつやっていくと膨大な金額になるし、こういう復興のための活動は何年にも渡って継続的に関わらないと意味がないと思ったので、「もう雇ってしまってください」と申し出たんです。

それで久々にサラリーをいただいていて、月に多い時で3回、少ないときで1回ほど陸前高田に通っているんです。


──現在、具体的にはどんなプロジェクトが進行しているのですか?

建築プロジェクトをひとつ進行中です。

現在、陸前高田にIターン、Uターンを希望している人たちが現地へ行って仕事探しや住まい探しをしようとしても、宿泊するところがないんです。

それで彼らが活動の拠点にできるような、シェアハウスとワーキングスペース、カフェもある一種のコレクティブハウスのようなものを山林の中に建てようとしているんです。


──このプロジェクトでの西村さんの役割は?

僕はコーディネーターですね。プロジェクトファシリテーターというか、全体の仕切り的存在です。

会議には進行役が必要ですよね。でもいろんな職能を持っている人が集まっているので、誰かが進行役をやると、その人が話せなくなります。

だから僕がやった方がいいと思い、手を挙げて会議の進行役を務めるようになったんです。これによりメンバーのみんながより自由にいろいろなことを話せるようになったと思います。

その中で何が必要なのかということをいろいろ議論してきて、役に立ちそうな人の話を一緒に聞く機会を作ったり、都内のコレクティブハウスを何カ所か一緒に視察に行ったりということをしてきました。

その中で彼らのプランニングワークを手伝いつつ、今度はチーム作りをサポートしました。ランドスケープデザイナー、プランナー、建築家、大工さんなどそれぞれのメンバーとの相性を考慮に入れつつ、適材適所で能力を発揮しそうな人、このプロジェクトに貢献してくれそうな人を探してマッチング。教える仕事でも触れましたが、まさに冷蔵庫にあるものでなんとかするみたいな感じで揃えることができたんです(笑)。

僕は各分野にそれほど詳しくはないですがある程度の見通しは効くので、人選して声をかけてチーム編成をして、実際につくってみるワークショップを企画。その準備のために東京にいるメンバーとも議論の場を作ったりと細々としたこともやっています。

かいつまんで言うと、プロジェクトのスキームを設計しつつ、プロジェクトを動かして、必要に応じて調整する、よく言えばクリエイティブな用務員さん的な役割ですね。

西村佳哲(にしむら よしあき)
1964年東京都生まれ。リビングワールド代表/プランニング・ディレクター/働き方研究家。

武蔵野美術大学卒業後大手建設会社の設計部を経て30歳のときに独立。以降、ウェブサイトやミュージアム展示物づくり、各種デザインプロジェクトの企画・制作ディレクション、働き方・生き方に関する書籍の執筆、多摩美術大学、京都工芸繊維大学非常勤講師、ワークショップのファシリテーターなど、幅広く活動。近年は地方の行政や団体とのコラボレーションも増えている。『自分の仕事をつくる』(2003 晶文社/ちくま文庫)、『自分の仕事を考える3日間』『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』(2009,10 弘文堂)、『いま、地方で生きるということ』(2011 ミシマ社)、『なんのための仕事?』(2012 河出書房新社)など著書多数。

初出日:2013.04.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの