「道心の中に衣食有り」
──仕事人として目指している理想像はありますか?
僕はまだ保険金のお支払いを経験していないのですが、そのときが訪れたら契約者のお葬式に出てお経を上げて、遺族の方に「ご主人は亡くなったけれど今後のご家族の生活には何の心配もいりません」と言えるライフプランナーになりたいなと本気で思っています。そうしたら亡くなった契約者も経済的に家族が困らないから往生できると思うんです。
また、基本的に僕らは報酬を会社からいただいているという認識はなくて、お客様がお支払いくださる保険料の一部をいただいているという認識なんですね。ですからライフプランナーは皆様に生かされている存在だと思っています。同時に報酬額が大きいということはそれだけたくさんのお客様に信頼されているという証拠なのでもっと頑張らないといけないとも思います。
僕の好きな言葉で「道心の中に衣食有り」というのがあります。天台宗の開祖、最澄が言ったとされる言葉で、「一所懸命修行をしていれば、着るものや食べるものは自然とついてくる」という意味です。修行=生活=仕事だと考えたときに、ただ生きているだけじゃなくて一所懸命修行に励んでいれば生活の心配はないだろうという、能動的な点が好きですね。
とにかく一歩踏み出す
──東さんは大学・大学院進学時や、得度をして山伏になるとき、転職するときなどけっこう大きな人生の岐路でそれほど悩んだりしなかったようですがそういう主義なのですか?
確かに人生の節目に立った時、あまり深刻に考えず、勢いとか「何となく」で決めることが多いですね。その道に入ってやっていくうちに段々いろいろなことに気づいていくというパターンが多かったなと。「何となく」で決めたら後で必ず痛い目にあうことが多いです。でも助けてくれる人も必ずいて何とかなるもんなんですよ。僕もある意味勢いで保険業に飛び込みましたが、保険や人の大切さなどこの仕事をして初めて気づけたことがたくさんあります。だから世の中にはあれこれ考えて一歩踏み出すことができない人も多いのですが、そのままだと何も変わらないので、あまり深く考えず、取りあえずやってみた方がいいんじゃないかと思いますね。よく山伏になるにはどうすればいいんですかと聞かれるんですが、山伏になると決めることと答えています。
東龍治(ひがし りゅうじ)(法名:瑞龍)
1976年長野県生まれ。
大正大学文学部史学科・同大学院博士前期課程修了。大学院在学中に得度し、山伏に。大学卒業後は東京都、国際マイクロ写真工業社を経て、2013年からソニー生命保険株式会社のライフプランナーとして勤務。平日は会社員として働き、休みの日には山で山伏として修行を行う。妻である漫画家・イラストレーターのはじめさん、小学1年生の娘の3人暮らし。はじめさんのコミックエッセイ『ウチのダンナはサラリーマン山伏』(実業之日本社)でサラリーマン山伏の実情がコミカルに描かれている。
初出日:2015.10.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの