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2017.03.15  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

おいしいものを、安く、全力で

──料理を作る上で大事にしてること、こだわっている点は?

村田明彦-近影5

根本には「おいしいものを安く提供したい」というのがあります。お客さんに出すからには常に全力でやってます。

あとは日本料理なので季節感は出すようにしてます。"走り"、"旬"、"名残り"は全部コースの中に組み込むようにしてますね。あとはなんだろな......日々当たり前のことをやってるだけなのでそんなに意識してないんですよね。温かいものは温かく出すとか、冷たいものは冷たく出すとか。自分がうまいと思うものしか出さないようにしてるということくらいですかね。

長年店をやっているうちに、自分の料理が段々シンプルになってるような気がします。店を始めたばかりの頃はヘンテコなものばかり作ってたんですよ。当時取材を受けた雑誌には「和食ではタブーとされるチーズを使ったり西洋の調味料を使ったり、たくみに使い分ける料理人」という書き方をされてます(笑)。そういうのが楽しくてすげえやってた時期があって。でもそういう奇抜なことは段々しなくなってシンプルになってきました。味もそんなにつけなくなってきたし。調味料もあまりこだわってません。


村田明彦-近影4

──それはどうしてなのでしょう?

いじくりすぎるのがおいしいとは思わなくなってきたんですよ。なだ万時代はメニューを考える時、若い料理人が刺激を受けてやる気が出るように知らない食材や調味料を使った料理にしてたんです。でもそれって、お客さんのことを考えてるんじゃなくて、結局誰かにほめられたいとか、若い子にいいかっこしたいがためにしてたんですよね、今思えば。

自分の店を始めたばかりの頃はそれをまだ引きずっていたので、和食では珍しい食材、調味料などを使ってたんです。でもやってくうちにそれが違うなと思うようになってきたんですね。今は野菜や魚の味もどんどんよくなってるから、そこまで手を加えなくてもいいのかなと思うようになってきて、極力シンプルに最低限の調理で素材の味を最大限引き出すという手法に変わっていったんです。とはいえたまに変わった料理もやらないと飽きが来るので、ちょっとアレンジを加えたりしてますけどね(笑)。

すべて感性でやってる

──日本料理といえば出汁が重要だと思うのですが、出汁はどういうものを使っているんですか?

うちはベースをアゴ(トビウオ)出汁にして、それにまぐろ節を入れた出汁やカツオと昆布の合わせ出汁など何種類か使ってます。これらの出汁を料理によって使い分けてます。出汁を取る元となる食材にもこだわっていて、いつも決まった産地のものを仕入れてます。

和食なので味は出汁で勝負するのは当然なのですが、結局は味ってバランスなんですよね。出汁が効いててうまいというのもあるかもしれないけど、すべてはバランスだと思います。そこが1番重要なんですが、自分の場合は全部感性でやっちゃってます(笑)。


──感性でやってるとはどういうことですか?

想像でやってるんですよ、全部。味のバランスもメニューを作るのも。考えなくても食材を見てたら勝手にいろんなイメージが湧いてくるんです。特殊能力があるんですかね(笑)。今まで料理人としてやってきた経験があるので、頭の中で組み立ててやっちゃってるって感じなんですよね。

その代わりいろんな料理の本や雑誌をすごく読みますよ。そういう情報が頭の中に入ってるので、自分オリジナルのつもりでも知らないうちにどこかの誰かの料理に似てるというパターンもあるかもしれないですね(笑)。

村田明彦-近影5

──いいアウトプットをするためには大量のインプットも大事ということですね。それは料理に限らず、クリエイティブな世界全般にいえることだと思います。勉強のためにいろんな飲食店に自分で食べに行ったりは?

それはほとんどしないんですよ。休みの日には焼肉食いてえなと思うだけで、料理の勉強をしに行こうかなんて思わない。おいしいと評判の店は何万円もするわけじゃないですか。他人の料理に何万円も払うくらいなら、そのお金で食材買ってきて自分で作った方がいいですよね(笑)。

仕入れ元との人間関係も大事

──仕入れも重要ですよね。

もちろん仕入れにもこだわってます。仕入れが命といっても過言ではないですからね。魚ならこの店、野菜ならこの店、というふうに食材の種類によって仕入れるお店が決まってます。その方が安心・安全ですからね。後は産直もやってます。いい食材ってそれだけ値も張るし、利益の幅も減るんですが、そこはあんまり気にしないですね。お客さんにリーズナブルでおいしいって喜んでもらいたいのが1番ですから。それと業者さんとの長い付き合いもあるので、少々高くても買っちゃいますね。コミュニケーションをしっかり取って、もちつもたれつでやっていくといい食材を安く売ってくれるんです。そういう関係を築くことも大事ですよね。


──河岸には毎日行ってるんですか?

2日に1回くらいですね。あと足りない部分は配達してもらってます。行くときは9時過ぎくらいですね。朝、仲買人から電話がかかってきて、ほしいものを伝えるとそろえてくれるので自分で見て回らなくても大丈夫なんです。仲買人は自分がどういう魚のどういう状態のものが好きかということを熟知しているので任せて安心、ほぼ受け取りに行くだけでOKなんです。でも河岸に行ったら2時間くらいいます。いろんな人と喋ってるんで(笑)。それもいい人間関係を作るために必要なんですよ。

村田明彦(むらた あきひこ)

村田明彦(むらた あきひこ)
1974年東京生まれ。料理人。「季旬 鈴なり」主人

幼少期から祖父が東京・門前仲町で営んでいたふぐ料理店で遊んでいたことから料理人を志す。千葉の商業学校卒業後、老舗日本料理店「なだ万」に入社。13年修業を積み、2005年「季旬 鈴なり」開店。2012年に初めてミシュランの1つ星を獲得。以降、2017年まで6年連続で獲得中。リーズナブルな値段で本格的な日本料理が食べられるとあって幅広い層から人気を博している。雑誌やWeb、テレビなど各種メディアでも活躍中。2015年にはミラノ万博に和食の料理人として参加。農林水産省「和食給食応援団」のメンバーとして和食文化の振興、「チームシェフ」の一員として地域活性化にも取り組んでいる。

初出日:2017.03.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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