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2016.04.04  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

多岐にわたる活動を同時並行的に

──まずは現在の活動について教えてください。

ミヤザキケンスケ-近影1

最近いろんな仕事がどんどん増えていて、自分が一体何屋なのかますます曖昧になってきていますね。でもそれは意図的に狙ってやっている部分もあるんですよ。ちょうど今、パラレルキャリアに関する本を書いている最中ということもあって、どこまで同時並行的にいろいろな仕事ができるか、それによってどういう相乗効果が生まれるか。それが今の僕のテーマなんです。だから今はあえてこれまでやったことのない仕事を増やしているんです。仕事によって働き方はバラバラで、それがおもしろいんですよね。自分を実験台にしてどうやったらうまくできるんだろうと試している段階です。


──具体的には、現在どんな仕事をしているんですか?

大きくわけると、「6次元」というカフェの運営、金継ぎのワークショップ、執筆・編集業、出版プロデュースなどの本関連の3つの分野があって、その他に大学や専門学校で教えていたり、町づくりにも関わっています。以前はテレビ番組を作る仕事にも携わっていましたが、去年(2015年)の始めくらいからはやっていません。


──本当に幅広いですね。ではまず6次元の運営から教えてください。6次元とはどのようなカフェなのですか?

2008年末、東京の荻窪に開いたブックカフェです。現在は決まった定休日や営業時間を設けておらず、僕が店にいる時は、お客さんが来たらいつでも受け入れるという非常にフレキシブルなスタイルにしています。この辺は夜型の人が多いから、夜中の2時とか3時に来る人もいるのですが、そういう時でも開けることもあります。

6次元ではコーヒーを出すだけじゃなくて、イベントもやっているのですが、終わってもお客さんはなかなか帰らなくて夜中の1時くらいまでいるのは普通だし、話が盛り上がったら朝までいることもあります。特にオープン当初はみんな朝までいました。僕はそういうのが全然苦にならず、むしろおもしろいと感じるタイプなんですよね。そこから生まれた企画も多いですし。

6次元には世界中からお客さんが集まる。多国籍読書会にて

6次元には世界中からお客さんが集まる。多国籍読書会にて

実は最近、6次元は外国人向けの観光地のようになっていて、毎日多くの外国人のお客さんが来るんですよ。特に去年(2015年)の夏がすごくて毎日40、50人もの外国人が押し寄せていました。今でもお客さんの6割は外国人ですね。先日もポーランドの小説家がやって来てなんかやろうよというから、2日後にイベントをやったくらいです。

お客さんだけじゃなくて外国のメディアもたくさんやって来ます。先日もクロアチアのメディアやアルジャジーラ、タイの国営放送局が日本の文化を紹介するという企画で取材に来ました。英語で取材を受けてみると新しい発見があっておもしろいんですよ。だから極力断らないで、おもしろそうだと思った話は何でも受けるという姿勢ですね。そうしているとどんどん人脈が増えて、それが仕事に繋がるという好循環になっています。今は毎日いろんな外国人が扉を開けてやって来ることを楽しんでいます

※クロアチアの記者が来た時の記事 → http://breakfast.rs/rokujigen-puno-vise-od-samog-murakamija/

村上春樹に関する本を執筆しているナカムラさんの元には世界中からハルキストが集まる

ポーランドの翻訳家Anna Elliottと
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ポーランドの翻訳家Anna Elliottと

アルジャジーラの文学取材
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アルジャジーラの文学取材

イベントカフェとして

──イベントはどのくらいの頻度でどういう内容のものをやっているんですか?

ナカムラクニオ-近影5

2日か3日に1回、年間200回くらい開催しています。イベントには大きくわけて先方から頼まれて開催するものと自分で企画するものの2種類があります。半分以上は前者ですね。イベントの中には非公開のものもあります。だからいろんな人から6次元はいつ行っても開いてないって言われているんですが、外から見たら閉まってるように見えても、実は中ではほぼ毎日何かが行われているんです(笑)。


──イベントは6次元をオープンする時からやろうと思っていたんですか?

そうですね。それを6次元のコンセプトの1つにしました。2次元の平面的な紙やWebで展開されている内容を立体化することに興味があるんです。例えば本の出版イベントの場合、著者が2時間かけて解説してくれる体験は3次元ですよね。つまり2次元で書かれた文字を3次元化するその瞬間ってすごくおもしろいと思うんです。だからこの店を開く時、なるべく体験型のイベントを開催することを1つの決まりにしました。2次元のものを3次元化すると2×3で6次元になるので、店名を「6次元」にしたというわけです。こういう「6次元化する」、つまり、平面のものを立体化して現象化することが大事だと思っていて、今後のテーマになると思っています。

6次元では毎日のようにさまざまなイベントが開催されている。(写真はふなっしーのデビューイベント)

6次元では毎日のようにさまざまなイベントが開催されている。(写真はふなっしーのデビューイベント)

だから店をオープンしてすぐイベントを始めたんです。最初は読書会だったんですよ。店を貸し切って読書会をやらせてくださいというオファーが来たのでやってみると、その1日だけで、コーヒーの売り上げの1ヶ月分にもなったんです。読書会って意外と儲かることがわかって、それから読書会や朗読会を増やしていきました。それまで読書会が商売になるなんて考えたこともありませんでした。自分だけだったら間違いなく思いつかなかったので、お客さんにはとても感謝しているんです。これ以外にもお客さんからアイディアをもらって開催しているイベントは多いので、お客さんに支えられていると常々感じています。

開店以来、イベント開催の申し込みは途切れることがなく、世の中にはこんなにイベントをやりたい人が多いんだと驚きました。特に多いのが本の編集者です。新刊本が発売されるタイミングでプロモーションがしたいからイベントを企画してくださいという依頼が圧倒的に多いんです。

ナカムラクニオ

ナカムラクニオ
1971年東京都生まれ。ブックカフェ「6次元」店主。

高校時代から美術活動に取り組む。作品を横尾忠則氏に絶賛され、公募展に多数入賞、個展開催などアーティストとして頭角を現す。大学卒業後はテレビ制作会社に入社。「ASAYAN」「開運!なんでも鑑定団」、「地球街道」などを手掛ける。37歳の時に独立し、フリーランスに。NHKワールドTVなどで国内外の旅番組や日本の文化を海外に伝える国際番組を担当。2008年ブックカフェ「6次元」をオープン。その後オーナー業と平行してフリーのディレクターとして番組制作の仕事も請け負う。現在は「6次元」店主として年間200回を超えるイベントの企画、運営、執筆活動、出版プロデュース、大学講師、金継ぎ講師など、さまざまな仕事に取り組んでいる。執筆業では、+DESIGNINGで「デザインガール図鑑」、朝日小学生新聞で「世界の本屋さん」、DOT Placeで「世界の果ての本屋さん」、IGNITIONで「Exploring Murakami’s world」などを連載中。著作に『人が集まる「つなぎ場」のつくり方‐都市型茶室「6次元」の発想とは』(CCCメディアハウス)、『さんぽで感じる村上春樹』(ダイヤモンド社)などがある。

初出日:2016.04.04 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの