地域おこし協力隊とは
──そもそも「地域おこし協力隊」とはどういったものなのでしょう。
人口減少や高齢化などが進んでいる地域に赴任して、その地域を活性化させるための活動を行うのが地域おこし協力隊です。2009年に総務省によって制度化された取り組みで、まずは地方自治体が募集して、その地域を活性化したいという意欲を持った人材が応募、選考を経て任命されると、1年以上3年以下の期間で地方自治体から委嘱を受けて準公務員として、その地域に住み地域振興活動に従事します。活動内容は観光客誘致活動、農林水産業への従事、環境保全活動など、その地域によってさまざまです。この制度のもうひとつの狙いとしては定住・定着者を増やすということもあります。協力隊員の中には任期後もその地域に根を張り、住み続ける人も少なくありません。(※詳しくは「地域おこし協力隊」の公式Webサイト」を参照)
僕は2011年10月1日から2014年8月いっぱいまでの約3年間、長崎市の池島で地域おこし協力隊の隊員として活動していました。
──池島とはどんな島なのですか?
長崎県の西彼杵半島の西沖合約7キロに浮かぶ周囲4kmの小さな離島です。九州は昔から石炭掘削の盛んな地域で、高島、伊王島、端島(通称・軍艦島)といった炭鉱の島がいくつもありましたが、石油へのエネルギー転換や海外から輸入した方が安いということで、1970年代あたりから次々閉山となりました。その中で最後まで残っていたのが池島でしたが、それも2001年11月で閉山しました。それにともない、人口もどんどん減り続け、最盛期には8000人もいた人口が今では200人程度にまで減少しています。しかし、炭鉱設備や炭鉱アパートがまだきっちり残っている「島丸ごと産業遺産」とも言える日本でも数少ない場所です。また、トロッコに乗って本物の坑道も見学できます。
──池島でどんな活動をしていたのですか?
池島についての情報発信やPR活動、メディア誘致、歴史調査・アーカイブのデジタル化、島内ガイドなどをしていました。
フリーターからの出発
──個々の活動については後ほど詳しくおうかがいするとして、まずは地域おこし協力隊員として池島に赴任するまでの経緯を教えてください。
某大学の工学部を卒業後、何となく普通に就職する気にはなれず、アルバイトでコンビニの店長や、学生時代にDTPをかじっていた事もあり出力センターの店員をしていました。いわゆるフリーターというやつですね。25、6歳のとき、そろそろちゃんと働かないといけないなと思い、初めて正社員としてパソコンやコピー機などを扱う商社に入社しました。仕事は企業にそれらの商品を売り込む法人営業で、最初の頃こそ成績はよかったのですが、飛び込み営業やテレアポが段々つらくなって1年ほどでWebの制作会社に転職しました。そこではWebサイトのコーディングをする仕事を始めたのですが、その会社が1年ほどで倒産してしまい、当時僕がmixiで立ち上げていた「社会科見学に行こう!」というコミュニティに参加してくれていた人に誘われて、コンテンツ制作会社に入社。QuicktimeVRという現在のグーグル・ストリートビューのような全方位画像を撮影・制作していました。東京の風景をQuicktimeVRで保存する「Tokyo VR Project」というおもしろいことをやっている会社だったんですが、ブロードバンドもままならない当時、技術が画期的すぎたのか私が入って1年程度で会社が解散してしまいました(苦笑)。それで、しょうがないからフリーランスになったわけです。2005年、28歳くらいのときでした。
──20代で会社に属せず、フリーランスとして生きていくことに不安はなかったのですか? 当時の収入源は?
当時、ブログを立ち上げて訪れた工場や土木施設や研究所などの写真をアップしていたのですが、そのブログを見て写真を買いたいというメールがたまに来たり、出版社の編集者から撮影の依頼もポツポツきていました。大した収入にはなりませんが、実家暮らしだし取りあえずなんとかなるかなと。それくらいのザツな感じでフリーランスになったわけです(笑)。
──本格的に撮影を始めたのはいつごろですか?
「社会科見学に行こう!」を立ち上げた2004年くらいに初めてデジタル一眼レフカメラを購入しました。撮影は全くの自己流というか独学ですね。
小島健一(こじま けんいち)
1976年埼玉県生まれ。長崎大学大学院工学研究科インフラ長寿命化センター研究員/元地域おこし協力隊員(長崎市池島)/見学家/フォトグラファー/「社会科見学に行こう!」主宰
大学卒業後、コンビニでのアルバイト、商社、IT企業、Web制作会社などを経て、2004年からフリーランスとして社会科見学団体「社会科見学に行こう!」を主宰。先端科学研究所や土木工事現場、産業遺産や工場などの見学をコーディネートを行い、大人の社会科見学ブームの火付け役となる。同時に工場などを一般向けにテレビ、ラジオ、書籍、WEBなどで紹介。また、トークライブやサイエンスシートなどを通して、技術者や研究者などの専門家と専門外の人を結びつける活動も。写真家として活動するほかに執筆、イベントやロケーションのコーディネートなども手掛ける。2011年10月から長崎市の地域おこし協力隊の一人として長崎の離島「池島」へ赴任。2014年8月まで「産業遺産で地域再生」を目標に地域おこしに従事。池島の認知度向上、来島者大幅増加に貢献。2014年9月からは長崎大学大学院工学研究科インフラ長寿命化センターの研究員として勤務。テレビ、新聞、雑誌などのメディア出演・登場多数。著書に『社会科見学に行こう! 』、『ニッポン地下観光ガイド』、『見学に行ってきた。』などがある。
初出日:2014.10.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの