大塚倉庫株式会社
東京本部オフィス
Otsuka Warehouse Co., Ltd.
すべてをつなぎ、物流業界をリードするオフィスphoto:Nacása & Partners
人の力とテクノロジーで
すべてを変える「TECH-BASE」
ITと物流を掛け合わせた新たな「コネクティッド物流」で、コスト削減や効率化、高品質化を推進している大塚倉庫株式会社。1961年に設立した大塚ホールディングスの完全子会社であり、大塚グループの物流を担当している。現在はグループ外企業からの受注も増え、外販比率は約60%。自社のトラックを1台も持たずに、配送パートナーであるドライバーと契約するなどの先進的な取り組みが、業界の内外からの大きな注目を集めている。
そんな同社が、東京・晴海にあり2020年東京オリンピック・パラリンピック選手村の隣地である自社倉庫を、複合ビルとしてリノベーション。CROSS DOCK HARUMIと名付けて、その一部に入居している。建て替えではなく、これまでの建物の価値を高める方向で、新たなオフィスの創造を行ったのである。1Fはイベントスペース、6Fはカフェ、その他のフロアは執務エリアで構成。同社の東京本部オフィスは2Fのワンフロアに入居している。以前は2Fは倉庫で窓があまりなかったので、壁をぶち抜いて新たに大きな窓を設けるなど、日差しに満ちた明るいオフィスが創造された。部門ごとのパーティションもなく、フラットでオープンな空間が広がっている。
新しいオフィスのコンセプトは、「TECH-BASE」。テクノロジーですべてを変える、という想いが込められている。それと同時に、倉庫らしさを活かしたデザインにすることで、極めてIT化が進む中でも、社員に対してコアビジネスの場が全国の倉庫であることを意識させた。まるで倉庫のようなオフィスエントランスに、倉庫の仕事をデモ体験できるスペースを設けたのは、顧客に紹介できるとともに、そうした社内的な理由もある。
オフィスはさまざまな人が訪れる場所であり、会社の良さを伝えるシンボルにしたい。そんな想いが反映された新たな場は、まさに唯一無二と言えるほどユニーク。スケルトン天井が先進的な雰囲気を演出する一方で、木の素材を活かした温かみの感じられるオフィスになっている。執務エリア内には「ログハウス」が設けられ、本格的なキッチンに一流シェフを招いて作った料理によって、顧客をもてなす機会も多い。役員と遠方の社員との「テレランチ」もここで行われている。そんな人間らしさのあるオフィスが、見学も含めて、多くの人を吸引しているのだ。常に何かを期待させる場所であるため、社外の人とオープンスペースで打ち合わせをする機会も格段に増えたという。外に向けて開かれた「TECH-BASE」は、来訪者にとってのベースでもあると言えそうだ。
一段高い「やぐら」のスペースから見た執務エリア。スケルトン天井によって、開放感のある空間となっている。柱の周りは黒板で覆い、自由に書き込みができる。
「やぐら」と呼ばれる階段状のスペースの上からはオフィスが一望でき、その奥には個人用ロッカーが用意されている。
壁をぶち抜いて窓にするなど、大規模なリノベーションが行われた。社内をセグウェイで移動する人の姿も見られる。
執務エリア内に設けられたガラス張りの会議室。
ステージを中心に心をつなぎ
全国にある拠点をつなぐ
2011年から同社では、社内外のすべての壁を取り除くという改革を続けている。個人で働くのではなく、組織で解決するしくみをつくり、コミュニケーションを活性化したい。その想いは新たなオフィスにも続いている。部門ごとにフリーアドレスを取り入れ、今までの働き方を一新。技術系、営業系、事務系など多くの職種が集う場では、以前よりもさらに交流の機会が増え、困った時にも多くの人に相談しやすい環境になったという。また、テレワーク制度も導入しているため、場所を問わずに働ける体制はさらに進化した。
執務エリアにおいてひと際目を惹くのは、ステージと呼ばれる場所。ここはプレゼンテーションの場であり、イベント会場にもなり、社外の人を講師として招いて勉強会やセミナーを開催することも多い。また、大型8面マルチモニタには全国26拠点のリアルタイムな模様が映し出され、日常的なコミュニケーションや会議、そして災害や猛暑などの緊急時の対応にも活用されている。また、作業の進捗状況をITによって「見える化」し、人的リソースの効果的な配分を行う仕組みを整備。通常は遠方にある倉庫も、この場所からリアルタイムに見学することができる。テクノロジーを使って、人と人との距離を縮めているため、距離の壁がない。まるですべての拠点が一つの部屋として働いているような環境であるとも言える。
元々、役員と社員との距離が近い社風があり、新たなオフィスでは交流の機会もますます増えた。そしてオフィス内だけではなく、各拠点をリアルタイムな映像で結ぶことによって、全社的な信頼の絆も強まっているという。
新しいオフィスは、自社の物流システムを業界全体に広げるための重要拠点である。それとともに、物流業界の問題解決に向けた戦略を、対外的にアピールするショールーム的な意味合いもある。自社のことだけを考えるのではなく、業界全体の明日に向けたソリューションを来訪者に公開している。多くの人の仕事を「つなぐ」、そして心を「つなぐ」姿勢は、これからも続いて行くのだろう。
6Fのカフェは、他フロアに入居完了した7月以降に本格オープンする予定。倉庫のイメージを残したコンテナのデザインが楽しい。
ラグジュアリーなソファスペースも設けられている。
「MEETING & GROUP PODS」と名付けられた部屋は、ランチやミーティングなどに活用されている。
自社倉庫をリノベーションした、CROSS DOCK HARUMI。CROSS DOCKとは、物流用語で多品種の商品が倉庫に送られた時、一時保管することなくすぐに配送できる拠点のこと。言わばハブのような機能を持つ。CROSS DOCK HARUMIには、たくさんの人のアイデアが集まり、新たなものを創り出す場所になるようにとの想いが込められている。
まるでホテルのようにお洒落で開放感のあるエントランス。人気ドラマのロケにも使われた。
広い屋上は、ヨガを行うなどイベントスペースとしても利用されている。
DATA
所在地 | 東京都中央区晴海4-7-4 CROSS DOCK HARUMI |
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オフィス対象面積 | 1,227㎡(2F) |
オフィス対象人員 | 130名 |
インテリア竣工 | 2018年5月 |
建築設計・デザイン | 奥村組 |
オフィス設計・デザイン 2F | オカムラ(佐々木 基) |