トヨタ紡織株式会社
猿投開発センター2号館
7Fクリエイティブエリア
TOYOTA BOSHOKU CORPORATION
さまざまな交流を育む「上質な時空間」のオフィスphoto:Nacása & Partners(無人写真2点を除く)
エリアの中央に広大な
ファンクションスペースを創造
トヨタグループの源流企業であり、シート、内外装、ユニット部品の3つの事業領域でモビリティーライフを提案しているトヨタ紡織株式会社。1918年創業で、創業100周年の節目を迎えたばかりである。豊田市にある猿投開発センターは、激動の時代を生き残るために2007年の建設構想時から、将来的なさまざまな用途での利用を想定。2号館7Fの未実装エリアをクリエイティブエリアとして起動させることに決定し、2017年10月に具体的なプロジェクトを立ち上げた。そして2018年10月、開発とデザインの部門を集約した新たなオフィスがスタートした。
このクリエイティブエリアは、未来のモビリティー社会への挑戦として、次の100年に向けて何をすべきかを、社員自らが考える場。交流しながら、新たな価値を創り出す場である。そこでエリアの中央には、コミュニケーションとユーティリティの空間である、広大なファンクションスペースを創出した。円形の「ワグネット」は、まさに大きな輪のマグネット空間。キッチンやライブラリー、サイネージなどによりワーカーを引きつけ、部門を超えた人や情報の交流を促進する。レビュースペース「アリーナ」は30名以上を収容でき、3画面モニタを使いながらさまざまなプレゼンテーションやセミナーなどが行われている。そして3つのテイストの異なる「ラウンジ」は、ワーカーの感性を刺激しながらアイデアの生まれる場となっている。
同社は「QUALITY OF TIME AND SPACE 〜すべてのモビリティーへ“上質な時空間”を提供」を、ありたい姿として定めている。新しいオフィスでは、この“上質な時空間”を働く人自らが体感することができる。
新しい働き方に何が必要かを
場の創造とともに考え続けた
クリエイティブエリアは、部門間の区切りのないオープンなワンフロアオフィス。車室空間開発部、空間システム開発部、要素技術開発部、デザイン部の4つの部門割をあいまいにして、自然に混ざり合う形のゾーニングとした。先行開発を行う部門と、デザインの部門が交流することによって、縦のつながり、横のつながりを強化できる。そして、つながりをさらに加速するために、多様なデスクを選んで働けるフリーアドレスを採用。これまで体制の変化に伴う移転も多かったため、組織変更にも柔軟に対応できるシームレスなレイアウトとした。
技術管理部の杉山守さんは、この場と働き方について「クリエイティブエリア構想は、2016年下旬からありました。当時は、今のような働き方改革という言葉も知らなかった時代です。プロジェクトが進むにつれて、次第に私たちの働き方改革と重なり、『新しい働き方には、何が必要か?』を考え続けた成果が、このオフィスになったと思います。また、新たな場が生まれたことで、他の部門の人たちにも『こういう働き方があるんだ』と気づいてもらえた部分も大きいですね。この場を訪れて、従来とは違った働き方のメリットを体感している人も多いと感じます」と語る。また、要素技術開発部の赤池文敏さんは「私たち自身がシートの開発をしていることもあり、さまざまな種類の椅子を購入して、感性を刺激するようにしました。また、座圧を測定して座り心地を確かめるなどのこだわりも強く持ち、妥協せずに創り上げたので、特注も多かったです。でも、きっと私たちにしか創造できないオフィスができました」と胸を張った。
さまざまなこだわりを盛り込んだ場は、まさにクリエイティブの本質を体現しているようだ。次の100年へ、エンジンは加速している。
「カボビー」と呼ばれている、カボチャ色をした打ち合わせコーナー。他に紫色の「ナスビー」もある。
3Dプリンターでプロトタイプを創造しながら迅速に検証・検討を行える「クリエイティブラボ」というルームも、同一フロア内に用意されている。
自動運転実装モデルやシートサンプルなどをファンクションスペースに展示して、情報共有を図ることも多い。
猿投開発センター2号館。この建物は2010年に誕生した。
DATA
所在地 | 愛知県豊田市亀首町金山88 |
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オフィス対象面積 | 2,830㎡ |
オフィス対象人員 | 180名 |
インテリア竣工 | 2018年10月 |
オフィス設計・デザイン | オカムラ(山田 智博) |