釜石鵜住居復興スタジアム
Kamaishi Unosumai Memorial Stadium
ラグビー文化を継承する復興のシンボル
被災木材を活用した
屋外スタジアム
2019年9月より、アジア初のラグビーワールドカップ2019™(以下、ラグビーW杯)が全国12都市で開催される。その1つである岩手県南東部の釜石市は、面積の8割強を森林が占める人口約3万5000人の港町だ。日本の近代製鉄発祥の地であり、国内初の洋式高炉「橋野鉄鉱山」は世界遺産に登録されている。戦後は東北有数の工業都市として発展した一方、ラグビーの聖地としても知られ、「北の鉄人」と呼ばれた新日鉄釜石ラグビー部(現、釜石シーウェイブスRFC)はまちの誇りである。
同市は2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた。震災後、市民からの声を受け、復興を象徴するイベントとして、また子どもたちに夢と希望を与えるため、ラグビーW杯開催都市に立候補。2015年、誘致に成功し、予選2試合の開催が決定した。会場となる「釜石鵜住居復興スタジアム」は今大会唯一の新設スタジアムで、2018年8月にオープン。屋外スタジアムには珍しくスタンド席の約8割に木製シートを採用している。実はこの木材、2017年に市内の尾崎半島で発生した林野火災の被災スギ約800本を活用したものだ。シートは座りやすく、また水はけを良くするために3°の傾斜がつけられ、製造しやすく、後々のパーツ交換にも配慮したシンプルなデザイン。釜石地方森林組合と地元企業が連携して伐採・加工を行い、被災木材はラグビーW杯開催時用の仮設席や公衆トイレなどにも用いられている。
2019年3月には、震災で不通となっていたJR山田線が三陸鉄道リアス線として開通、鵜住居駅も営業を再開した。間もなく、海と山に囲まれたこの木のスタジアムから、復興が進む現在のまちの姿が世界に向けて発信される。
2018年8月のオープニングイベントでは、釜石シーウェイブスRFCによるメモリアルマッチのほか、学生チームの記念試合や、歌手によるパフォーマンスなど様々なプログラムが行われ、約6500人が真新しいスタジアムを埋めつくした。サポーターがスタンドで大漁旗を振る、港町・釜石独特の応援スタイルも健在。往時を知らない子どもたちも釜石のラグビー文化に触れることができる1日となった。(提供:釜石市)
DATA
所在地 | 岩手県釜石市鵜住居町第18地割5-1 |
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敷地面積 | 約9万㎡ |
開場 | 2018年8月19日 |
客席数 | 6000席(ラグビーW杯開催時1万6000席) |
設計 | 梓設計 |
施工 | 大成建設・新光建設特定共同企業体 |