正木 郁太郎 - futureplaceインタビュー

I N T E R V I E W photo & portrait: Nacása & Partners ダイバーシティなどをはじめ、社会心理学という独自の観点から 組織文化をめぐる諸問題を対象に研究を行っている正木郁太郎さん。 オカムラの、ワークインライフに関連したテーマを調査・分析・発信する研究会である 「 Work in Life Labo. 」にも研究アドバイザーとして参加されている。 これからの働き方改革の方向性や重要なポイントなどについてお話をうかがった。 一人ひとりの役割を明確にすると、働きやすさにつながる 正木 郁太郎 東京大学大学院 人文社会系研究科 研究員 (→次ページに続く) 重要なプラットフォームに なり得る社会心理学 正木先生が取り組まれている学問分野 のご紹介からお願いします。 私のバックグラウンドからお話しすると、元々 は東大の社会心理学の研究室にいました。 指導教員の先生は、日本人とアメリカ人の 考え方の違いやそれが生まれる原因など、 社会の中での文化や行動、価値観の違い などを研究されていました。そうした中で、私 自身の興味の対象は「組織」にあって、大き な会社と小さな会社、または業種の違いなど によって考え方や行動が違うのはなぜだろう と考えていました。ですから、経営学や産業・ 組織心理学とはちょっと毛色が違うんです。 なるほど。どちらかと言うと、心理学に近 い学問だったのですか。 そうですね。でも、個人で完結する心理学で はなく、どのように人が集団を作るか、その 後になぜ揉めるかなど、平たく言うと社会現 実際に、働き方の異なる人たちが一緒 にいるメリットってあるのでしょうか。 メリットがあるかどうかは、研究上はだいたい 結論が出ていて、「よく分からない」というも のなんです(笑)。例えば、人によって効く薬 と副作用を起こす薬があるように、ダイバー シティにもプラスとマイナスがあります。日本 での研究はまだ少ないのですが、アメリカに おいては性別や民族の違いによる研究事 例がありますが、混ざるといいことがあるとい うケースも、悪いことがあるというケースもあ ります。今は、じゃあどういうケースだとプラ スやマイナスになるのかという、次のステッ プへのアプローチが行われています。例えば 「こういう特徴のチームだと、ここはプラス になる」ということが分かれば、その特徴を 強めることによって働きやすい環境にでき る。ただいろんな人を混ぜるのではなく、どう いう特徴と組み合わせるかが課題ですね。 なるほど。その特徴はどういうものにする と、働きやすさが生まれてくるのでしょう。 ある程度、「一人ひとりの役割を明確化す る」ということがあります。あなたはこういうこ とをやる、私はこういうことをやると、はっきり させる必要がある。どうしてもいろんな人が 混ざると、阿吽の呼吸で合わせづらくなりま す。そのために、なんとなく対面するよりも、 しっかりと文章化して、分かりやすくコミュ ニケーションを取る必要があるんです。日 本の上手くいっている会社の人がよく言う のは、「言わずに伝わる時代は、もう終わっ た」。とにかく話すことが大切で、「いい感じ にアレをやっておいて」では通じないんです (笑)。今までの日本では同じようなバックグ ラウンドの人が多かったので、なんとなくでも 通用してきたのかもしれません。でも中途入 社や、海外の人も増えてきた今となっては、 それでは伝わらない。ですから、 10 を伝える ためには、 100 や 200 を伝えておく。仕事もコ ミュニケーションもはっきりさせて、伝わらな いことを前提に、そこをどう乗り越えて働くか に発想転換することが重要なポイントだと 思います。そのために大切なのが、言語化 と、仕事の役割分担ですね。誰が見ても分 かるように、チームの組織図を作っておくの もいいと思います。 とても分かりやすいお話ですね。 ダイバーシティという言葉をつかうと難しく聞 こえてしまいますが、いろんな個性の人が一 緒に働き、かつチームとして成果を出す、と いうだけの話なんです。結局は、「違う人た ちがどう仲良くやるか」ということなんですよ ね。例えば地方に、ずっと家族経営でやっ ていて、地元の人たちを積極的に雇用して いる会社があって、数百年続いている。あ えてダイバーシティという言葉は使わないけ れど、多様な人が自然に暮らす、そんなダイ バーシティの好例があってもおかしくないと 思っています。ダイバーシティは流行りもの のキーワードではあるけれど、もっと本質に目 を向けると、いろんなところに重なってくると 思います。 個人の自由と 組織としての統合の両立が大事 もう一つ昨今のキーワードで、イノベー ションについてうかがいます。イノベー ションを起こしやすい組織とは? 上手くバランスが取れている組織かもしれ ませんね。ダイバーシティという観点だと、あ る程度それぞれの人の個性を活かしつつ、 その人たちを一つのチームとしてまとめる。 そこの、個人の自由と組織としての統合が 両立できている会社はイノベーションを起こ しやすいと思います。個人の自由だけ重視 象について人の心理・行動という観点から 読み解いていました。それは、どんなフィール ドに対しても適応できるアプローチだと思 います。企業組織から、学校教育、政治、 マーケティングなど、だいたい人が関わって いる分野にとっては重要なプラットフォーム になり得ると思いますね。ただし、コンクリー トをどう硬くするかという話には関係ないで すけどね(笑)。 そうした中で、現在の興味の対象が、ダ イバーシティなどの分野になるのですね。 いろんな人が混ざるとどうなるかというのが ダイバーシティのキーコンセプトです。男性 と女性、日本人と外国人、または価値観の 違う人同士でも、すべて多様だよねという 話になります。今から 2 ~ 3 年前は女性活 躍推進ということが言われ始めていました し、性別に着眼した研究も行いました。ただ し、その研究が 10 年後もずっと続くとは限ら ず、別の属性や価値観の多様さが論点に なるかもしれません。私は、いろいろな所で 多くの人が解決したいと望んでいることに、 できるだけ短いスパンで取り組んでいきた いと考えています。 違う人たちが仲良くやる それがダイバーシティ best practice for work place VOL.30 | APRIL 2019 IKUTARO MASAKI

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