物流システムのコラム

現在の日本では、EC需要の拡大の影響もあり、顧客ニーズや物流に対するサービスレベルが高まっています。
しかし、トラックドライバーの時間外労働の制限をはじめ、人の手で作業を行う際は作業時間に限りがあるため、短時間で多くの荷物を処理することが求められています。

このような課題を解決するために、倉庫内での荷物の搬送や保管、仕分けなどを自動化するシステムの導入が現在注目を集めています。

この記事では、倉庫作業を自動化させるメリットや主に使われるシステムの種類、システム導入時に失敗しないためのコツなどをご紹介します。

倉庫作業の自動化とは

倉庫作業の自動化とは、倉庫内で発生する荷物の保管、搬送、仕分け、ピッキング、梱包といった一連の作業を、ロボットやマテハンシステムによって自動化させることを指します。

大量かつ重量もある荷物を一度に運んだり処理したりできるようになるため、人の手で処理するよりもスピーディーかつ負担を抑えて進められます。

このように倉庫作業を自動化することによって、倉庫作業を効率よく進められるだけでなく、作業品質の安定化といった効果も期待できるため、最近では多くの企業で導入が進められています。

なぜ倉庫自動化が必要なのか

これまでの倉庫作業は、労働力に依存した労働集約型の運営が主流でした。しかし、近年ではこの運営形態に限界があるといわれています。その要因として、以下の問題が挙げられます ：

• 人件費の高騰 ： 最低賃金の上昇や人手不足により、労働コストが増加している。
• 生産性の頭打ち ： 人手による作業では、一定以上の効率向上が難しい。
• 競争力の低下 ： 技術革新が進む中、労働力に依存する体制では市場競争で不利になる。
    

さらに、2024年問題に伴い、トラックドライバーの労働時間が法的に制限されるようになりました。この影響で倉庫内の作業も見直しが必要となり、限られた時間で作業をすることが求められています。

こうした中で注目されているのが、労働集約型から資本集約型へのシフトです。資本集約型の運営では、人ではなく自動化設備が主要な仕事を担います。これにより、労働集約型の課題である人件費の高騰や生産性の頭打ちといった問題が大幅に改善されます。倉庫自動化は今後の物流業界にとって必要不可欠といえるでしょう。

倉庫作業を自動化するメリット

業務効率化につながる

倉庫作業を自動化させることによって、人の手で作業を行うよりも大幅な業務効率化が期待できます。人手の作業の場合は、作業者の能力による属人化が発生するため、生産性にばらつきが生じる可能性があります。

しかし、倉庫作業をシステムによって自動化することで、人が行う作業に比べて同じ時間当たりでも物量を多く、早く取り扱えるため、高い生産性を維持しながら効率よく作業を進められるようになります。

また、精密さやスピードが求められる作業、冷凍庫といった長時間人が作業することが厳しい環境下での作業などもスムーズに進められるため、あらゆる場面において業務効率化が期待できます。

人手不足に対応できる

倉庫の作業内容は、保管、搬送、仕分け、ピッキング、梱包など多くの工程が含まれています。これらの作業は出荷時間や配送スケジュールといった時間制限があるため、迅速かつ正確な対応が求められます。このような状況下で、労働力への依存が高い運営体制では、ますます人手不足が深刻化する可能性があります。

そこで、ロボットやマテハンシステムの導入による倉庫作業の自動化が注目されています。これにより、人の手で行っていた作業の一部を自動化することで、省人化を実現し、人手不足への対応が可能となります。

労働環境を改善できる

倉庫作業を自動化させることで、倉庫での労働環境の改善が期待できます。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査（2023年10月）」では、2023年10月時点で人手不足を感じている企業の割合が全業種では52.1％なのに対し、物流業では68.4％と上回っており、人手不足が特に課題です。

また、経済産業省・国土交通省・農林水産省の「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況（2022年9月）」においては、作業者の年齢構成が、全業種に対して道路貨物運送業では40歳以上の割合が大きいことから、高齢化も懸念されています。

ロボットやマテハンシステムを用いた倉庫作業の自動化によって、人の手で行う作業の割合を減らせるため、作業者1人当たりの負担を軽減し、労働環境を改善できるでしょう。

安定した作業品質を保てる

人の手で作業を行うことによって、仕分けミスや保管場所の間違いなどヒューマンエラーが発生します。また、作業者の体力や体調によって、パフォーマンスの質に差が生じることもあるでしょう。特に1人当たりの業務負荷が大きい場合は、疲労による集中力の低下からミスが増える可能性も高いです。

倉庫作業を自動化することによって、作業者の身体的負担によるパフォーマンスの低下やヒューマンエラーを防ぎ、安定した作業品質を保つことができます。

作業の安全性を高められる

倉庫内では、高い場所から荷物の積み込み・積み下ろしを行ったり、重量のある荷物や危険物を運んだりすることもあります。このとき、安全に気を配っていたとしても、けがや事故が生じる可能性はゼロではありません。

このような危険な作業をシステムで自動化させることによって、作業者のけがや事故などのリスクを抑えられるため、倉庫内で業務を行う際の安全性を高められます。なお、安全な環境で作業ができることで作業者への安心感にもつながり、従業員満足度の向上も期待できるでしょう。

倉庫作業を自動化するデメリット

倉庫のレイアウトや業務体制の見直しが必要になる

自動化設備、マテハンシステムを導入する場合、設置するためのスペースの確保や現在のレイアウトの見直し、業務フローや各作業者の担当業務の調整といった体制の再構築が必要になります。

そのため、現状の体制からどのような部分を変更する必要があるのか、変更にどれほどのリソースが必要になるのかなども加味し、運用・組織体制を再構築しながらも安定して倉庫作業を行えるよう導入を進めることが大切です。

システム導入費用やランニングコストがかかる

システムを導入することで多くの倉庫作業を自動化できるものの、システムの導入時にかかる初期費用や、メンテナンスなどにかかるランニングコストが必要になります。また、こうした導入コストやランニングコストが高額になることから、導入まで踏み切れない企業も少なくありません。

初期投資に対してどれだけの効果が得られるか、回収期間はどのぐらいか、導入目的に応じた効果を検証する必要があります。

システムの故障や災害時の業務停止リスクがある

システムに不具合が生じた場合や故障した場合、自然災害により被害を受けた場合などは、システムを利用できなくなり、業務をスケジュールどおり進行できなくなる恐れがあります。

特に倉庫内の大部分をシステムによって自動化していた場合は、業務を停止せざるを得ない場合があり、企業の売上にも影響を及ぼすでしょう。

そのため、システムを導入する際は万が一の事態に備えたマニュアルの整備や、作業フローの構築、システムを提供する企業のサポートやメンテナンス対応などあらかじめBCP対策を確認しておく必要があります。

倉庫作業の自動化で失敗しないためのコツ

自動化で何を実現したいか目的を明確にする

倉庫作業の自動化を成功させるためには、「自動化で何を実現したいのか」の目的を明確にすることが重要です。自動化はあくまで手段であり、目的が曖昧なまま進めてしまうと効果を十分に発揮できないリスクがあります。例えば、「人手不足を解消したい」「業務効率を上げたい」「コスト削減を図りたい」など、目的によって自動化のアプローチや導入する設備が大きく変わります。

そして「なぜ自動化するのか」をしっかり明確にすることで、プロジェクトの方向性が定まり、自動化の効果を最大限に引き出せるでしょう。

自動化を推進するにあたって業務を標準化する

自動化を成功させるためには、現場の業務の標準化が欠かせません。現状を数値化し、作業手順や内容を具体的に把握することで、導入する設備の仕様や能力を正確に設定できます。

例えば、ピッキング作業を自動化する場合、1時間当たりの生産性や作業パターンを明確にすることで、必要な機器を正しく選定できるでしょう。業務の標準化は、効率的な設備導入だけでなく、導入後の運用の安定性にもつながります。

ターゲット物量を設定する（繁忙期・閑散期）

物流業務では、繁忙期と閑散期の荷量差が大きいことが一般的です。そのため、自動化を進める際には、どの時期の物量に設備能力を合わせるかを慎重に検討する必要があります。

例えば、繁忙期のピーク量に合わせた設備を導入した場合、閑散期には過剰な投資となる可能性がありますが、平常時に合わせた設備設計を行い、繁忙期には設備をフル稼働させたり、人手を補完したりすることで、どの時期の物量にも柔軟に対応できる設計が可能です。こうしたターゲット物量は、企業の成長戦略も見据えながら、投資効果を最大化できるよう設定する必要があります。

試算（シミュレーション）を行う

自動化設備の導入の際は、コストの試算が重要です。例えば、5000万円の自動化設備を導入する場合、年間1000万円の人件費がかかっている作業であれば、5年で費用の回収ができ、6年目以降は利益を生むと考えられるでしょう。

また、ランニングコストも考慮する必要があります。定期的なメンテナンス費用や修繕費を見積もることで、長期的な運用計画を立てられます。試算を通じて、自動化が本当にコスト効果のある選択肢なのかを判断し、最適な投資計画を策定することが重要です。

運用コストの分析をする

自動化システムには、定期的なメンテナンス費用や、システム障害時の対応コストが発生し、ソフトウエアのアップデートや保守契約も運用コストに含まれます。そのため、自動化にかかる初期投資や償却期間、運用コストを分析し、どのぐらいの期間で投資回収できるか確認する必要があります。これにより、財務的なリスクを最小限に抑えることができるでしょう。

実施前後の変化を確かめる

システムの導入後は、事前に挙げていた課題がシステムでの自動化によって解決できたか、または効果が表れているかを必ず確かめましょう。思うような効果が得られなかった場合は、何がネックとなっているのか、改善策はあるかなどを探りながら、新たに仮説を立ててシステムを再度活用してみるとよいでしょう。

このようにこまめにシステムの利用効果を検証することで、現在のシステムを使い続けるべきなのか、別のシステムに入れ替えたほうがよいのかといった判断もすぐにできます。

専門家に相談する

「自社に合った製品がわからない」「自社に最も必要なシステムは何なのか知りたい」「倉庫作業の効率化についてアドバイスがほしい」といった場合は、専門家に相談するのもおすすめです。社内のみで決断するのではなく、プロ目線でのアドバイスを受けることで、より確実な課題解決が期待できるでしょう。

オカムラでは、お客様の現状の調査やコンサルティング、必要なシステムの設計、製造、施工、メンテナンス、最適化といった一連の工程を一貫して行うワンストップソリューションを提供しています。

また、オカムラでは実際に製品を見てから必要なシステムを検討したいという方に向けて、ショールームでの定例見学会を実施しています。定員に達し次第予約受け付けを終了するため、気になる方はぜひお申し込みください。

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オカムラ製品で倉庫作業を自動化させた事例

ここまで、倉庫作業を自動化するシステムの種類やシステム導入を失敗しないためのコツなどについてご紹介しました。最後に、自動化システムを導入し、社内の課題を解決した事例についてご紹介します。

製造業の事例

【住友重機械イオンテクノロジー株式会社】  ピッキング時間が3分の1に

住友重機械イオンテクノロジー株式会社様では、パソコンなどの電気製品に含まれる半導体を製造するための装置である「イオン注入装置」を開発・製造しています。これまでの作業は人の手で行っており、工程によっては自動化が難しい点が課題でした。

そこで、部品供給の工程に着目し、15,000種類の部品の入出庫作業を効率化させることを目的に、自動倉庫システムである「ロータリーラックH」を導入しました。

これにより、部品の保管面積を半分に縮小できただけでなく、作業者の手元に部品を供給するGTP（Goods To Person）の運用によって1品目当たりのピッキング時間を3分から1分へ短縮し、ピッキングのミスも減らせるようになりました。

事例の詳細については、こちらのページをご覧ください。
住友重機械イオンテクノロジー株式会社 愛媛事業所様の事例

【東亜ディーケーケー株式会社】  ピッキング作業時間を25％削減

東亜ディーケーケー株式会社様では、水・大気・ガス・医療の4つの分野を軸に、計測機器メーカーとして製造・販売を行っています。

製品のライフサイクルが長いために補用品・消耗品の供給が長期間となることや、ラインナップの膨大化によって生産性の向上が求められる中、ピッキング作業時の倉庫内での移動距離が長く作業効率に影響を及ぼしている点や、倉庫と工場間での長距離輸送における運転手不足・輸送時間の短縮が必要である点などが課題として挙げられていました。

そこで、保管スペースの最大化を図るため「オートストア」を導入し、建屋の床の一部を掘ることで天井高はそのままに、床下の保管スペースを確保するレイアウトへ変更しました。レイアウトの変更により保管面積を約40％削減し、ピッキングの作業時間も約25％削減できました。

事例の詳細については、こちらのページをご覧ください。
東亜ディーケーケー株式会社 埼玉事業所 狭山インテグレーションセンター様の事例

流通業の事例

【ティーツーケー株式会社】保管スペースを3分の1に縮小し作業能力は3倍に

ティーツーケー株式会社様では、主にEC、通販事業者の発送業務や在庫・受注管理代行をしており、現在は古着などを中心に取り扱っています。

従来の倉庫作業はすべて人の手で行われており、保管場所が不足した際も作業者が倉庫内を歩き回って空いているスペースを探していたため、入出庫のリードタイムでは1日半～2日ほどかかっていました。

そこで自動倉庫システムの「オートストア」を導入し、これまで約900坪使用していた保管スペースを250坪に縮小しました。また、導入前に約30名の作業者で行っていた入出庫作業も、導入後は10人以下で作業を進められるようになっただけでなく、作業能力が3倍になり、業務効率化を実現しています。

事例の詳細については、こちらのページをご覧ください。
ティーツーケー株式会社様の事例

【物産ロジスティクスソリューションズ株式会社】  保管量の最大化と業務効率化を実現

物産ロジスティクスソリューションズ株式会社（現：三井物産流通グループ株式会社）様は、コンビニエンスストアを中心に物流事業を幅広く展開しており、全国の物流拠点から一括で仕入れを行い、店舗へタイムリーに届けるワンストップの物流サービスが特長です。

埼玉第二センターでは、基幹センターとしてより高度な物流サービスの実現を図り、保管量の最大化・入出庫作業の効率化の両立を目的に、パレット保管システムである「サイビスター」を導入しました。

その結果、保管量は約1.5倍に増加し、ラックの同一ロケーションから入出庫を連続して行えることから、作業効率化も実現しました。

事例の詳細については、こちらのページをご覧ください。
物産ロジスティクスソリューションズ株式会社 埼玉第二センター様の事例

まとめ

この記事では、倉庫作業を自動化させるメリットや主に使われるシステムの種類、システム導入時に失敗しないためのコツなどをご紹介しました。

倉庫作業の自動化を成功させるためには、「自動化で何を実現したいのか」という目的を明確にすることが何よりも重要です。自動化はあくまで課題解決の手段であり、自社の課題をしっかりと整理し、「なぜ自動化するのか」を明確にすることで、プロジェクトの方向性が定まり、自動化の効果を最大限に引き出すことができます。

また、自動化設備の導入は初期コストがかかるものの、これは「持続的な成長を支えるための投資」として考えられるため、人件費削減や生産性向上といった効果を通じて、初期投資を回収した後は、長期的な企業運営の効率化と競争力の向上につながります。単なる費用ではなく、事業の安定と拡大を実現するための重要な手段として捉えることが、倉庫自動化のプロジェクトを成功に導くポイントです。

オカムラでは、「倉庫作業を自動化させたいけれど、何から着手すればよいかわからない」といった方に向けて、コンサルティングから最適なシステムの導入、アフターサポートまで一貫して行っているため、ぜひお気軽にご相談ください。

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