物流システムのコラム

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AGVとAMRの違いは? それぞれの導入メリットや注意点も紹介

2024.3.27

AGV・AMRは製造・物流業界をはじめとしたさまざまな業界で使用されています。作業者の代わりに荷物を自動で運ぶ台車タイプの搬送システムです。決められたルートの正確な走行や、現場の状況に合わせた柔軟なルート変更など、AGVとAMRでは得意分野が異なります。この記事では、AGVとAMRの違いやそれぞれのメリット、導入時の注意点などをご紹介します。

AGV(無人搬送車)とは

AGVは、Automatic Guided Vehicleの略で、無人搬送車と呼ばれることもあります。AGVは大小さまざまなサイズがあり、小さな部品からパレットなどの大きなものまで、荷物の大きさに合ったAGVを導入できます。AGVは、あらかじめ倉庫内の床に磁気テープを引いたり、ランドマークや高周波信号線を利用したりして走行ルートを指定し、ルートに沿って荷物を搬送します。

これまではフォークリフトなど人が運転する搬送車が利用されるケースが多かったものの、AGVは人の運転を必要とせずに荷物を搬送できるため、倉庫内を動き回る作業者の負担軽減や人件費の削減、作業者の人手不足の解消などさまざまな効果が期待できます。

 AGVが必要とされる背景

先述のとおり、これまでの倉庫や工場では人が運転するフォークリフトや人が押す台車など、搬送作業には人の手が必要でした。しかし、国土交通省の「令和4年度 宅配便・メール便取扱実績について」によると、宅配便取扱個数は増加傾向にあるのに対し、厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和5年11月分)について」では、運搬従事者の有効求人倍率は1.23倍と求職者数よりも求人数のほうが多いことがわかります。このようなEC需要の増加に対する物流業界の人手不足を解消するため、荷物の搬送に人の手を使わず自動化する動きが強まっています。

導入が進んでいる業界

AGVは、主に倉庫や工場で部品を生産ラインまで搬送したり、ピッキングした荷物を次工程へ搬送する場面で使われ、生産性の向上や搬送作業の効率化につながっています。

活用しやすい現場

AGVは、磁気テープやランドマーク、高周波信号線などを使用し、あらかじめ決められたルートを走行する搬送台車です。そのため、同じ区間を行き来する現場や、同一の荷物を効率的に搬送することが求められる現場などで活用しやすいです。AGVを利用する前には磁気テープなどの誘導体を用意する必要はあるものの、レイアウトの変更が少ない倉庫や飲食店、ホテルといった施設では、一度誘導体を設置すればそのまま使い続けることができるため、柔軟に走行ルートを変える必要のない現場で役立つでしょう。

AMR(自律走行搬送ロボット)とは

AMRは、Autonomous Mobile Robotの略で、自律走行搬送ロボット・自律移動ロボットと呼ばれることもあります。AMRにはSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)という技術が用いられており、「自分がどこにいるのか」「周りに何があるのか」といった自身の位置を把握しながら目的地までの地図を自動で生成することができます。そのため、ロボットが走行するためのルートを指定したり、ガイドラインを引いたりするといった作業を必要とせずに荷物を搬送できる点が強みであり、倉庫業務の効率化や人件費の削減などに貢献します。

なお、AMRには障害物の検知機能やブレーキ・減速といった制御機能も搭載されているため、倉庫内の作業者やロボット、棚の配置に合わせて安全な走行を実現します。

AMRが必要とされる背景

AMRは、AGVよりも導入コストが高額になる傾向があります。しかし最近では、月額料金を支払うサブスクリプション型のロボットを提供するビジネスも増えてきました。このようにロボットが身近で手の出しやすいものになったことにより、AMRを導入するハードルが下がり注目を集めるようになりました。AMRは「協働搬送ロボット」と呼ばれることもあり、人との協働を前提に作られたロボットです。

決められたルートを走行するAGVとは異なり、ロボット自身が最適なルートを生成し、人や障害物を避けながら走行するため、人間のような柔軟な搬送が可能です。そのため、倉庫の人手不足や、作業者1人当たりの業務効率化といった課題にもアプローチします。

導入が進んでいる業界

AMRは、物流業界や製造業界で主に導入が進んでいます。製造業はほかの業界に比べロボットやマテハンシステムを活用した自動化が比較的進んでいたものの、搬送に関わる作業は人の手で行われるケースが多くありました。そのため、搬送作業をAMRで自動化することによるさらなる業務効率化が期待されています。

一方で、物流業界においては自動化が進んでいなかったものの、EC需要の増加により、倉庫内においても大量の商品の搬送が求められるようになりました。自動で最適なルートを生成するAMRは、各現場での運用フローにも柔軟に対応できることから、導入を検討する企業が増えています。

活用しやすい場面

AMRは、人の往来が多い現場や、作業エリアのレイアウトが頻繁に切り替わることが多い現場で役立ちます。AGVでは多くの場合、人が作業する場所とロボットが搬送する場所を分けて運用するケースが多い一方で、AMRは協働搬送ロボットのため、人が作業をする場所での搬送もスムーズに行えます。また、レイアウトの切り替え頻度が高い場合においても、新たに磁気テープを取り付ける作業などを必要としないため、作業者の負担を減らせます。

AGVとAMRの違い

走行方法

AGVは、先述のとおり磁気テープやランドマークといった誘導体を設置し、それらで指定した走行ルートに沿って移動します。そのため、決められたルートをスムーズに移動することはできるものの、指定外のルートを走行することはできないため、ルート上に障害物があった場合も避けられません。

AMRは現場のレイアウトに沿って最適なルートを自動で生成しながら臨機応変に走行するため、ルート上に人や障害物がある場合も避けることができます。決まったルートを繰り返し走行する場合にはAGVを、その場の状況に合わせた柔軟な搬送が求められる場合にはAMRを利用するのがおすすめです。

導入時に必要なもの

AGVでは、走行するルートを指定するために必要な磁気テープなどの誘導体の準備や、どのようなルートで走行させると効率よく搬送できるかといった走行ルートの設計を導入時に行います。広い倉庫や複雑なレイアウトの現場に設置する場合は、誘導体の設置に多くの時間を要すこともあるため、このような準備期間も加味した導入スケジュールを立てておくことが大切です。

AMRでは人との協働を実現するために、どこまでの作業の範囲を人の手で行うか、どのような作業をロボットで自動化するかといった作業内容をあらかじめ明確に分担しておくとよいでしょう。

運用方法

AGVは走行ルート上に障害物がある場合、走行が停止してしまうため、ルート上に障害物がないか、作業者が立ち入らないかなどを確かめながら運用します。また、誘導体が正常に機能しているかといった定期メンテナンスや、現場のレイアウトが変わった際に誘導体を設置し直すなどの作業が発生する場合があります。

AMRは基本となるマップデータを作成し、マップ上に進入禁止などの情報を登録しておくだけで自動で最適なルートを走行します。レイアウト変更時には、誘導体を設置し直す必要がないものの、導入時と同じようにマップデータを再構築する必要があるため、注意が必要です。

移動範囲

AGVはガイドラインのない範囲は走行できないため、走行ルートに幅を持たせるためには多くのガイドラインを引く必要があります。そのため、臨機応変にルートを変更できるAMRに比べて広いスペースが必要になる場合があります。しかし、AGVでは決まったルートを走行するため、広いスペースでも搬送時間に差が出ることなく素早く荷物を搬送できます。

AMRは現場の広さに関わらず柔軟にルートを変更しながら搬送できるものの、協働搬送ロボットのため、走行中に人や障害物を避けたりルートを変更しながら走行することが多く、AGVに比べて一定範囲内の走行時間を把握しづらくなる場合があります。

用途の柔軟性

AGVは、現場によってそれぞれの業務内容に適したシステムで設計されており、各業務に特化して導入されています。そのため、同一の現場においても、「現在はAの作業を行っているAGVに、まったく別のBの作業を行わせる」といった役割の転換が難しいケースもあります。

AMRはAGVよりも導入コストがかかる傾向があるものの、多岐にわたるタスクに対応できるよう設計されており、工程間搬送や組み立てに必要な部品・材料の補充など、現場でのあらゆる場面で活用しやすい点が強みといえます。

学習能力

AGVは指定されたルートを素早く走行し、業務効率化を目的として作られた搬送台車です。対してAMRは人間との協働を目的に作られたロボットのため、人間に近い存在となるよう機械学習機能によって最適な走行ルートを分析できます。

そのため、AGVのほうが柔軟性が低いと感じる場合もあるものの、誘導体によるガイドラインに沿った走行のため、AMRと比べると搬送の精度が比較的高い傾向があります。また、最近ではAIを搭載したAGVも開発されており、人や障害物を避けた走行の判断など、その場の状況に沿った臨機応変な対応が期待されています。

【AGVとAMRの違い・まとめ】

  AGV AMR
走行方法

・誘導走行

・障害物があった際はルート変更できず停止する

・自律走行

・障害物があった際はルート自動でルートを変更可能

導入時に必要なもの

・磁気テープなどの誘導体

・走行ルートの設計

人の手で行う作業とロボットが行う作業の明確化
運用方法

・走行ルート上に障害物がないかの確認

・誘導体の定期的なメンテナンス

・マップデータの作成

・レイアウト変更時のマップデータの再構築

移動範囲

・誘導体に沿って移動

・ガイドラインを引いた範囲でのみ移動可能

・自動算出したルートを移動

・現場の広さを問わず移動可能

用途の柔軟性

・各業務に特化した設計

・役割の転換が難しい

・協働作業空間に導入しづらい

・多岐にわたるタスクに対応

・現場のあらゆる場面で活用しやすい

・協働作業空間に導入しやすい

学習能力

・柔軟性は低いものの搬送の精度が高い

・AIを搭載したAGVも開発されている

機械学習機能によって最適な走行ルートを分析する

AGVを導入するメリット

人手不足への対策

物流業界では人手不足だけでなく、高齢化が進む現場も見受けられます。長期目線で倉庫や工場といった作業現場の運営を継続することを考慮した場合、若手など長く働き続けられる労働力が必要になります。

このとき、AGVを導入することで省人化が可能となり、作業者をほかの人の手で行わなければならない業務へ携わらせることができます。このように、AGVを導入することによって人手不足への対策が行えるようになり、各現場における適切な人員配置も期待できます。

ヒューマンエラーの防止

人の手で搬送作業を行った場合、荷物の取り間違いや置き場所の認識間違いなどのヒューマンエラーが発生します。このようなヒューマンエラーは、対策を徹底しても完全にゼロにはできないうえに、作業者によってもミスの発生率が変化します。

そこで、AGVで搬送作業を自動化させることによって、定められた走行ルートに沿った搬送を正確に行えるようになり、ヒューマンエラーを最小限に抑えることができます。AGVは同一の作業を繰り返すことを得意としているため、作業者によるパフォーマンスの差などが生じることなく速やかに荷物を搬送します。

作業者の業務負担や接触事故の軽減

人の手による作業では、倉庫や工場が広いと1日に長距離の移動を繰り返したり、重い荷物の積み下ろしや搬送を行ったりすることで、肉体的な負担が大きくなる場合があります。また、移動回数が増えることで倉庫内での人の往来も激しくなるため、作業者同士や、フォークリフトといった機械との接触事故が起こる確率も高まります。

決まった走行ルートをたどるAGVを導入することで、作業者の搬送業務における負担や接触事故のリスクも軽減できます。

AMRを導入するメリット

人との協働を実現する

AMRは、人と作業スペースを共有して搬送することができます。先述のとおり、AGVやそのほかのロボット、マテハンシステムでは人の立ち入らないエリアを別途用意し、作業スペースを分けるケースも多くありました。しかし、AMRは臨機応変に走行ルートを調整し、人や障害物を避けながら安全に荷物を搬送できるため、人の往来が多い現場でも業務が滞ることなく進行できます。そのため、作業者がロボットのいるエリアまで移動して荷物を受け取るといった作業工数も削減でき、より効率的な倉庫業務を実現します。

ルートの考案や設定が不要

先述のとおり、AMRにはSLAM技術が用いられています。SLAM技術によって自身の位置や周辺の状況をロボットが把握できるようになり、AMRが自身で走行ルートを決め、人や障害物を避けた搬送を可能にします。

AGVやそのほかのロボットやマテハンシステムではあらかじめ作業オペレーションや走行ルートを人の手で設計したり、その内容を設定したりすることが多かったものの、AMRは自ら最適な走行ルートや移動方法を考案できるため、導入時の事前準備にかかる手間が軽減できます。

現場の環境の変化に対応しやすい

現場によっては、頻繁に倉庫のレイアウトを変更したり、人の配置が変わりやすかったりすることもあるでしょう。このとき、一般的なロボットやマテハンシステムを使用する場合、新しいレイアウトや人員配置に合わせて作業オペレーションや走行ルートを設定し直す必要があり、管理者の負担になることがあります。

また、このときAGVでは磁気テープなどの誘導体を設置する必要がありますが、AMRは管理システムに登録したマップデータを変更するだけで、再度AMR自身が最適な走行ルートを自動生成するため、レイアウトの変化にも柔軟に対応できます。

AGV・AMRを導入する際の注意点

AGVの注意点

AGVでは、導入前に現場のレイアウトをAGV用に変更したり、通行できるスペースを確保したりする必要があります。人や障害物が走行ルートをふさぐ場合は走行が停止してしまうため、遮るものがないよう通路の整備やレイアウトの調整を行うことが求められます。

なお、走行ルートが変わる場合は、状況に合わせて最適なルートを調整することができないため、都度人の手で誘導体を配置し直す必要があります。

AMRの注意点

AMRを導入する際は、導入先の環境と費用対効果を明確にすることが大切です。先述のとおり、AMRはAGVよりも初期費用が高額になるケースが多いです。そのため、同じルートを走行する搬送作業を自動化させたい場合などは、走行ルートを柔軟に調整できるAMRよりも、AGVを選ぶほうが機能を持て余すことなく活用できます。

また、初期費用に加えて本体のメンテナンスといったランニングコストも必要となるため、導入にかかる費用対効果が見込めるかも加味したうえで検討することをおすすめします。

オカムラのAMR

ORV

ORVはカゴ車の搬送を行うAMRです。牽引方式ではなく、カゴ車と一体となって運ぶ片持ち方式の搬送方法が特長で、狭い通路での移動もスムーズに行えます。また、カゴ車と一体となったままバックでの走行も可能なため、トラックバース前の出荷待機列や、狭い空間での荷物の整列もORVで完結します。AMRであるORVは、磁気テープを設置するといった床工事をせずに導入できるため、将来的に拡大や移設を検討している倉庫での利用にもおすすめです。

自律移動ロボット「ORV(オーアールブイ)」

まとめ

この記事では、AGVとAMRの違いやそれぞれのメリット、導入時の注意点などをご紹介しました。搬送業務を自動化することで、人件費の削減や作業者1人当たりにかかる負担の軽減、業務効率化などのさまざまなメリットが期待できますが、システムを導入する際の初期費用やランニングコスト、事前に必要な準備などが多岐にわたり、導入までに時間を要する場合があるため注意が必要です。将来的に作業エリアを拡大するのか、同一の荷物を繰り返し搬送する作業が多いか、など自社の状況や今後の運用方針に沿って、最適な搬送システムを選ぶことをおすすめします。

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