スフィア
様々な体格に合わせて自然と身体にフィットするタスクシーティングSpher(スフィア)。オカムラ独自の技術により、座る人の体格に合わせて背もたれと座面が身体を包み込むように変形し、自然と身体にフィットします。包み込まれるような座り心地と環境配慮に注力した、これからの働く場のスタンダードになるシーティングです。
様々な体格に合わせて自然と身体にフィットするタスクシーティングSpher(スフィア)。オカムラ独自の技術により、座る人の体格に合わせて背もたれと座面が身体を包み込むように変形し、自然と身体にフィットします。包み込まれるような座り心地と環境配慮に注力した、これからの働く場のスタンダードになるシーティングです。
テレワークとオフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」や、仕事の内容に合わせて時間や場所を選んで働く「Activity Based Working(ABW)」など、多様な働き方が広がっている。オフィスでは、共用スペースの増加やフリーアドレスの導入により固定席が少なくなり、タスクシーティングはいつも決まった人が使用するものではなく、さまざまな人が使用するものに変化してきている。
タスクシーティングは大きく分けて、比較的短い時間の利用を想定し、体格に合わせた調整機能を「座面上下のみ」といったように機能を限定した「カジュアルライトシーティング」と、長時間利用を想定し座り心地をより高める調整機能をふんだんに取り入れた「フルスペックシーティング」に2極化している。しかし、ABWといった多様な働き方を取り入れたオフィスでも、日によっては終日ひとつの椅子に座り続けることは珍しくない。そのような使い方をする中で、「カジュアルライトシーティング」では調整機能が少ない故に、椅子と体格の相性によっては終日利用には適さない。一方で、座り心地が良い「フルスペックシーティング」を専用ではなくシェアするとなると、使用する度の調整に手間取ったり、毎回の調整自体がそもそも面倒になり折角の座り心地を高める機能を上手く活かせないまま座るという、残念な事態がしばしば起きていた。そこで煩わしい調整を限りなく無くし、それでいて誰に対しても適切に身体にフィットするシーティングが、現代の多様なワークスタイルを支えるためには必要だと考え、オカムラはSpherの開発に挑んだのであった。
上段:試作品の確認 下段左:FULL SPEC SEATINGの代表例 下段右:CASUAL LIGHT SEATINGの代表例
身体へのフィット感を高めるにあたり、そもそも近年における女性の社会進出や外国人ワーカーの増加により、ひと昔に比べ体格差が広がっているのではないか・・・そんな仮説の元、実際にどれだけの体格差があるのかを調べることにした。100名以上の成人男女の身長・体重・腰からお尻まわりの調査を行い、現代のワーカーに対しての理想的な背座のカーブを探し求めた。その結果、一般的なシーティングでは小柄な人の腰まわりへのフィット感が弱いことが判った。またクッション性ばかりが気にされがちな座も、体格によって好ましく感じるカーブが異なることが見えてきた。背座ともに「大は小を兼ねる」思考では、あらゆる人の身体に本当の意味でフィットはしない。つまり小から大まで自在に変化する「千姿万態」思考をベースに、操作不要で変形する内蔵シェル「3Dフィジカルフィットシェル」の試作を始めた。調整操作なしで形状を変形させ、かつサポート力を保つためには、全く新しい発想によるメカニズムを必要とし、試行錯誤の日々が続いた。
例えば「背座のシェルを一体にするか、別体にするか」を座り心地を考慮しながら何度も試作し決定していったが、フィット感を追求するあまり、強度が不足する等、かなりの時間を要してしまったのだ。何度ものトライアンドエラーを繰り返し、小柄でも大柄でも自然に身体を包み込むようにフィットする「3Dフィジカルフィットシェル」がついに誕生した。
上段:最終デザイン図でデザインへのこだわりを語る戸塚(写真右) 下段左:腰まわりの調整例 下段右:座り心地と体圧分散の確認
しかし、基幹であるシェルの構造が決まっても、新たな壁が立ちはだかった。シェルの動きを邪魔せずに、かつ見た目にも美しく生地を張ることが難しかったのだ。そこでシェルの動きを阻害しないようにクッションの厚みを調整し、外装にあたる生地は新たにオカムラオリジナルの布地Re:net(リネット) を開発することになった。Re:netは、伸縮性と強度を兼ね備え、内部のシェルの変形に合わせて伸び縮みし、日本の使用済み漁網を再利用したサステナブル素材でもある。意匠性も高く、昨今多く見られるリラックス感を感じさせるカジュアルなオフィスだけでなく、家庭で使用しても、インテリアに馴染む柔らかな佇まいを実現した。
肘かけに関しても、タブレットPCやスマートフォンを使って働くシーンが増えていることを踏まえ、デバイス使用時に快適な姿勢がとりやすく、腕や肘を柔らかく支えられるよう内向きにカーブをつけてパット部に丸みを帯びた「スムースフィッティングアーム」を、4方向(上下・左右・前後・角度)に可動しサポート力に優れた「4Dアジャストアーム」に加え新たにラインナップした。
Spherはこれからの働く場のスタンダードになっていくだろう。
上段:試作のシェルにウレタンをセットし、動きを確認する 下段左:スムースフィッティングアームの試作 下段右:様々な生地で張りぐるみ状態の確認
背座のシェル構造、椅子のメカ部が新規機構となり、今までの椅子開発の知見を活かしながら進めたものの、細かい仕様の決定に苦労しました。構造的にも正解がない中での開発となったため、何度も試作を確認し、一進一退を繰り返す進捗に挫折しそうになったこともありましたが、「この椅子を選んでおけば、間違いない!」と思える椅子ができたと思います。