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2017.01.17  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

朝市にも参加

──畠山さんは朝市にも主催者側として参加しているということですが、朝市とはどのようなものなのですか?

畠山晶-近影1

朝市準備中の畠山さん

毎月第2土曜日の8時から10時まで、真名瀬漁港の近くで開催している朝市で、私含め6~7名の漁師が自分たちが獲った魚介類を自分たちで販売しています。2013年12月から有志が集まって始めました。


──なぜ朝市をやろうと?

先程もお話しましたが、葉山には市場がありません(※前編参照)。魚の産地名は水揚げされた市場のある場所になります。つまり、たとえ葉山で獲れた魚でも逗子市場に卸された魚は逗子産になるし、横須賀の市場の場合は横須賀産になっちゃうんです。

さらに葉山には魚屋さんもないんですよ。昔は近所に住んでる漁師から直接買えていたのですが、漁師もどんどん減っているので葉山に住んでる人が葉山の魚を買える場所が全くないんですね。

しかも今葉山に住んでる人の約半分は他の土地から移住してきた人たちなので、葉山でタコやイセエビが獲れることを知らない人がすごく多いんです。それって地元民からすればすごく残念で。

だからやっぱり、地元で獲れた旬のものを地元の人に味わってもらいたいと、漁師になってからずっと思っていました。今一緒に朝市をやっているメンバーもみんな同じ思いを持っていたので、じゃあ一緒に朝市をやりましょうと2013年12月から始めたわけです。


──それは地元の人たちにとってもうれしいですよね。

畠山晶-近影2

前日の仕込みなどの準備は大変ですが、新鮮な魚やイセエビが安く買えると喜んでくれる人も増えているような気がするので私としてもうれしいですね。特に夏場は大勢のお客さんで盛り上がっているんですよ。

また、私は葉山生まれの葉山育ちなので、地域を盛り上げたいという思いも強く、その一環として朝市を始めたというのもあるんです。

葉山は観光地というかプチリゾート地というイメージが強いですが、元々は漁村で昔から住んでいる人が多い地域では人と人との繋がりが強く、昔ながらのご近所付き合いが色濃く残っているんです。ここが葉山の一番好きな点で、収入は少ないけど葉山で漁師をやり続けたいという理由もここにあるんです。私は人生において一番豊かで大事なことは、地域の人と濃く、強く繋がれることだと思うんですね。だからこの大好きな葉山の町を何とかみんなで盛り上げたい、人と人とを繋げたいと思っているんです。

畠山 晶(はたけやま あきら)

畠山 晶(はたけやま あきら)
1985年神奈川県出身。漁師(葉山町漁業協同組合正組合員)

神奈川県立三崎水産高等学校(現・神奈川県立海洋科学高等学校)を卒業後、ダイビングショップのスタッフ、母校の教員、結婚式の司会業などを経て2011年、葉山のベテラン漁師・矢嶋四郎氏に弟子入りし見習い漁師に。2013年、 葉山町漁業協同組合の準会員、2015年、葉山町漁業協同組合の正会員として認められ、葉山漁協で初にして唯一の女性漁師に。年間を通して海に出て、刺し網漁、ワカメ漁、潜り漁などを行っている。2013年12月から漁師仲間に呼びかけて、自分たちで獲った魚介類を販売する朝市を真名瀬港で開始。好評を博している。

初出日:2017.01.17 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの